神田橋條治_プラセボエフェクト

「神田橋條治 医学部講義(創元社)」からのご紹介です。

神田橋先生が本書で説明していたプラセボエフェクトの話が印象に残りました。

プラセボは、治療者と患者の絆によって発動されるようです。


この先生に任せてみようかなという信頼感が治療に役立つのですが、その際に「共に」というのがポイントだそうです。
治療者に任せるのではなく、患者さんと共に治療していく。

 

 

患者さんと目の位置を合わせる、患者さんの手を患部に誘導するといった、安心、委ねるという雰囲気を作って信頼を高めながら、患者さんにも治療に参加してもらう。

○○という薬にはこんな副作用があると言われているけど、あるかどうかよく見ていて下さい。
この薬の増減をここからここの間で、自分でやってみて結果を教えてください。

治療者が一方的に薬を処方して飲んでもらうのではなく、患者さんにもその経過や結果に関与してもらって「共に」治療していく。
その関係がプラセボ効果につながっていくのだと思いました。

 


神田橋條治 医学部講義

誰もやらないのなら医者の私がやります

誰もやらないのなら医者の私がやります(平成出版)
島田潔、鈴木陽一、藤井秀樹

 

介護保険制度がなく、在宅医療が普及していなかった時代に、個人の家を回ることから始めて在宅医療に貢献してきた医師の物語。

多くの在宅医療業者が老人ホームなどの施設を相手にする中、著者の診療所は老人ホームからの依頼は断り、困っている一般家庭に向けて在宅医療を提供する方針を掲げていたというのは、採算は二の次で本当に地域の住人の役に立ちたいと考えているのだと思います。

それでも地域医療のことを考えて最終的に老人ホームからの依頼も受けるようになりましたが、老人ホームに入っている患者さんは経済的には恵まれているけれど、家族には恵まれなかった人たちだという気づきは、一般家庭を多く見てきた著者たちだからいえることだと思いました。

 

 

以下に私が印象に残ったこと、共感できたことを抜粋します。

・病診連携あっての在宅医療という考えから、対象地域を広げないというのも、地域に即した在宅医療の形であり共感できました。

・病院の勤務医と違い、患者さんの生活が見えるということを生かして、家族背景や生活に即したアドバイスができることは在宅医療の大きなメリットだと思います。

・介護保険の功罪として、学校のようにデイサービスや訪問看護のスケジュールが入って忙しい高齢者が増えています。人間は満たされると感謝をしなくなり窮屈に感じるものなので、サービスはちょっと足りないくらいがちょうどよいというのは納得できました。

 


誰もやらないのなら 医者の私がやります ~板橋区役所前診療所の物語~

神田橋條治_積極的医療ではなく保護的医療

「神田橋條治 医学部講義(創元社)」からのご紹介です。

神田橋先生が本書で説明していた自然治癒力の話が印象に残りました。

ある治療を行って症状が改善されているときに、それを増量するとかえって悪くなることがある。


こういった場合、


「今、自然治癒力を保護している環境としての医療がまあまあうまくいっているから、このままで様子をみましょう」


というのが大事で、積極的ではなく保護的医療となる。

 

 

鍼灸マッサージでも同じことが言えると思いました。

現在の治療がうまくいっていると、もう少し刺激を強くした方がさらによい効果が出るのではないかと考えてしまいます。
ちょうどよい刺激だからこそ、自然治癒力が促進されて少しずつうまくいっているのに、それを待てない。

様子をみること、積極的ではなく保護的に治療を行うことの大切さを改めて実感しました。

 


神田橋條治 医学部講義

神田橋條治_病ではなく病人を治す

「神田橋條治 医学部講義(創元社)」からのご紹介です。

神田橋先生は「病ではなく病人を治す」のが医療だとおっしゃっています。

現代の医療は、症状を消したり、検査値の数値を改善することが目的となっています。
確かさを追求するあまり、客観性と数値、統計を重視した結果、「医学栄えて医療亡ぶ」状態になっていると危惧しています。

 

 

単に、症状評価尺度で調べたら○○病だから、○○薬を出すとなると、それは科学になってしまう。

医療には、うんと曖昧な領域がたくさんあって、科学で網をかけられない因子が多くある。
一人ひとりの人間に医学という科学を参考にしながら医療が行われるべきという神田橋先生の意見に感銘を受けました。

 


神田橋條治 医学部講義

神田橋條治_自助とは

「神田橋條治 医学部講義(創元社)」からのご紹介です。

神田橋先生が本書で説明していた自助の話が印象に残りました。

自助とは、こうしてほしい、こうしたい、という欲求に対して、自分自身でやれるようにすること

サポート側は、いかに体を動かさず頭を働かせるかの工夫が必要であるとおっしゃっています。

どういうことか。

 

 

例えば、患者さんの体を起こす場合、サポート側がひっぱって起こすのではなく、患者さんにこちらの手を掴んで起きてもらう。

何でもやってあげるのがサポート側の仕事ではなく、いかにサポート側の労力を少なくして、患者さん自身にやってもらうかを考える。


これが本当の自助ということを実感しました。

 


神田橋條治 医学部講義