神様がくれたピンクの靴

神様がくれたピンクの靴(あさ出版)
佐藤和夫

足が変形した高齢者のためのあゆみシューズを作った徳武産業の物語。

あゆみシューズを作った想いが伝わってきて思わず熱くなった。もちろん最初からうまくいったのではありません。

靴底が高い在庫の1300足を全て廃棄処分にしたり、靴底がはがれるというクレームに対して全商品を回収したり、といった対応は素晴らしかったと思います。

稲盛和夫氏(京セラ創業者)の

「経営者が決断するときは、損か得かで決めてはいけません。正しいか、正しくないかを軸にして決めるのです。損得の経営は、目先は儲けが出ても、いずれ破滅します。正しい経営をする企業だけが生き残っていくのです」

という言葉を胸に刻んだ誠心誠意の対応はなかなかできるものではないと思います。

お客様から寄せられたサンキューレターの内容も実感がこもっていてよかったです。

どれだけ価値のある商品をつくったかはこの手紙の内容をみればよく分かります。
お客様のために履き心地のよい靴を作るという使命感が伝わってきました。

他にも、以前に時間的猶予を設けて取引を打ち切った取引先に発注を依頼することで恩返しをしたり、片方販売や左右サイズ違い販売を特許として独占せずもにいいことを世の中に広めるという、損得ではなく善悪の判断をしたり、本当に世の中の役に立つことを考えている会社だと思います。

こんな素晴らしい企業があることは日本の誇りだと思いました。

一瞬で子どもの心をつかむ15人の教師

  • 一瞬で子どもの心をつかむ15人の教師(ごま書房新社)
    中野敏治

    本書に紹介されている先生は皆、「勉強ができる子」ではなく、「人を育てる」という想いが強く、そのためにどうやって子どもと接していくのか日々研鑽している素晴らしい先生ばかりでした。

    これらの先生方に共通しているのは即行動、ご縁を大切にする、仕事以外にも学びの場をもって活動しているということ。
    謙虚で偉ぶらず、常に学び続けていく姿勢は立派だと思いました。

    以下に印象に残った言葉を抜粋。

    ・専門学校にとってのお客様は親?学生?本当のお客様は、その学生を送り出す先にある社会です。ウエジョビ(上田情報ビジネス専門学校)を出て、その社会の人々が喜んでくれる。そのような学生を育てていかなければ未来はない。

    ・教育は漢方薬のように、じっくりとじっくりと効果が出るもんだ。また、教育は盆栽に似ている。枝を急に曲げると折れてしまう。そっとゆっくりと枝の進むべき方向を針金で支えながらサポートしていくことは、教師と生徒の関係に似ている。

    ・教師は常に子どもたちから学び、成長していく。教師の成長は子どもの成長につながっていく。大切なのは子どもの目線で物事を見るということ。子どもの目線で見ることで、新たな気づきが生まれ、今まで自分の目線では気づかなかったことにも気づくようになっていく。

買いものは投票なんだ

買いものは投票なんだ(フォレスト出版)
藤原ひろのぶ

子どもたちの未来をよくする方法、地球のためになる考え方が分かりやすいイラストと共に解説された良書です。

お金や儲け、便利さや、効率を重視した結果、大切なものを見失っていろんなものを犠牲にして、たくさんのものを壊してきたことに改めて気づいた一冊でした。

温かみがあるイラストで親しみやすく、子どもと一緒に読める内容になっていたのもよかったと思います。

昔はたくさん作れなくても、手間ひまかけて、手作りで時間をかけてつくったからこそ、人と人とのつながりがそこにありました。

今は、いつでもどこでも何でも手に入るようになったけれど、多くのものを犠牲にして、何かを失ってしまったのだと思います。

そんな何かを見つけなおすきっかけになる一冊でした。

鎌倉資本主義

鎌倉資本主義 (プレジデント社)
柳澤大輔

地産地消や、職住近接など、よいことや楽なことがGDPには反映されないことに疑問をもち、GDP以外の幸せ度を定量化できるモノサシを持とうとして辿り着いたのが地域を中心とした新しい資本主義の形である鎌倉資本主義。

これは、以下の3つの資本で構成されたものである、という著者の考え方は斬新でおもしろいと思いました。

何をするか-地域経済資本(財源や生産性)
誰とするか-地域社会資本(人のつながり)
どこでするか-地域環境資本(自然や文化)

楽しく、おもしろく働くことを重視していて、「何をするか」よりも、「誰とするか」にこだわった経営というのも珍しくて独創性がありました。

カマコンを通じて、自分の住んでいる地域の課題をジブンゴト化しておもしろくする、というのも地域住民や企業を巻き込んだうまいやり方だと思います。

東京一極集中ではなく、地方独自の取り組みの1つのよい例だと思いました。

カマコンには参加していない鎌倉に住んでいる人たちが、この取り組みをどのように感じているのかを聞いてみたいと思いました。自分たちの楽しいがみんなにちゃんと届いているのか、若い人の斬新な発想に、年配の方がどう適応しているのか興味があります。

また、カヤックのHPにある「退職者インタビュー」というのも、退職をネガティブではなくてアクティブに考えようという取り組みでよいと思いました。

神田橋條治の精神科診察室

神田橋條治の精神科診察室 (IAP出版)
神田橋條治、白柳直子

患者さんの情報提供力を育成しているのが外来診療のいちばんの根幹と考える神田橋先生の診察技術の意図を、整体師の白柳さんが細かく聞きながら丁寧に解説した良書です。

まず診察室に入った際の立ち居振る舞いを観察、感覚していくことで、診断のあたりをつけ、それに合わせて適切な質問をしていきます。

患者さんに直接質問をするのではなく、質問に対する対処のありようから判断材料を集めていく、という考え方は大変勉強になりました。

また、直接問いただすのではなく、「いろいろあるのね」という忖度を投げてみて、それに対してどの程度、応対が合っているかに注目し、治療を混乱させないようにする配慮は素晴らしかったです。

「面接は社交ダンスと同じ」という解釈は独特で素晴らしいと思いました。

マニュアル通りに質問するのではなく、相手の体重がこう移ったのを感覚したから自分はこう動くという感覚。

これを意識していやっているようではまだダメで、もう身についてしまって無意識に出るというレベルまでいくのは相当難しいと思います。

臨床の役に立つヒントが満載の一冊でした。