一瞬で良い変化を起こす10秒・30秒・3分カウンセリング

一瞬で良い変化を起こす10秒・30秒・3分カウンセリング―すべての教師とスクールカウンセラーのために(ほんの森出版)
半田一郎

子どもたちと関わることが多い職業で使える工夫が満載の一冊で読みやすかったです。

これらの技術は、子どもたちだけでなく、大人相手にも使えると思います。

10秒、30秒、3分と、それぞれで工夫できるレベルが段階的に分かれていて、すぐに実践できるようになっていたのがよかったです。

・不適切な行動を減らすより、適切な行動を増やす

・どんな気持ちになったか本人の言葉で感情を言語化する

・事実関係に対してではなく、子どもの心の動きに対して支援を行う

・出来事、認知、感情を分けて考える

・カウンセリングは、共に眺める、共に考えるというのが基本姿勢

など、勉強になる考え方が多かったです。

また、なんて声をかけてよいか分からない時に

・どんなことが起きたら少しは楽しい?

・そのあとはどうしたの?

・もし声をかけるなら、どんなことを言いたい?

・どうやってその状況を切り抜けたの?

といった具体的な質問の仕方も参考になりました。

単に問題を解決して終わりという関わり方ではなく、

「子どもが問題状況に自分で対処していくことを支援する」

という子どもの成長を支援する関わり方になっているのが素晴らしかったです。

ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。

ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。 (ポプラ社)
幡野広志

本書は、著者が34歳の時に多発性骨髄腫と宣告されるまでと、宣告された後にどんなことを考えて、何をどうやって選んだのか、について丁寧に描かれていました。

がん患者の多くは「もっとこうすればよかった」と後悔すると言いますが、著者は後悔しても自責に苦しむだけで何も変わらないという考えをもっており、それが達観しているように見られると言います。

後悔してもしょうがないと分かっていても、なかなかこの心境にはなれないと思いました。

すごく同意したのは

「がんに限らず、重い病気や障害の全てにおいて、身内の病を『わたしの不幸』にいちゃいけない、つまり『娘(息子)がこんな病気になったわたし、かわいそう』はぜったい間違っている」

という言葉。

これはとてもデリケートな問題で、多くの身内が自分の不幸と捉えてしまうと思いますが、患者にとって一番の苦しみは

「家族の重荷になっていること」

という言葉を忘れないようにしたいと思いました。

また、緩和ケアの看護師さんが「こころの痛み」を取り除いてくれたという話が印象的でした。

一度として「がんばって」とは言わずに、患者さんの話に耳を傾けて寄り添う緩和ケアの看護師。

医学的なひとつの正解にこだわらず、「患者ごとの正解」を探そうとしてくれる、医師とはちがう専門性をもった患者のパートナーがいたことが心強く感じられたとおっしゃっていました。

病気に苦しむ人、家族との関係に苦しむ人、医療従事者など、多くの方に読んでいただきたい一冊でした。

十字架のカルテ

十字架のカルテ(小学館)
知念実希人

著者の知念実希人さんは医師でありながら、小説家でもあります。

「心神喪失者の行為は罰しない、心神耗弱者の行為はその刑を減刑する」

誰もが聞いたことがある刑法三十九条ですが、実際にその鑑定を行っている精神鑑定医を主人公とした医療小説はとても興味深く楽しめました。

精神疾患の鑑定には、専門の施設に入院させて二ヶ月くらい時間をかけて行う「本鑑定」と、30分程度の面接で鑑定を行う「簡易鑑定」があり、殺人などの重大事件以外は簡易鑑定がメインであることも初めて知ったことです。

また、犯罪行為を行った精神疾患患者の触法精神障害者が無罪になったあと、精神科病院に措置入院となり、医療に丸投げとなって司法は関知しないことなども知らなかったので勉強になりました。

本書は、減刑や無罪を勝ち取るために演技をする犯罪者をいかに見破るかを中心としたミステリ短編集となっています。

病歴と状況の矛盾や、雰囲気、言動などから慎重に判断していく展開は読み応えがあり、どの事件も一筋縄ではいかず最後まで引き込まれました。

病院というヘンテコな場所が教えてくれたコト。2

病院というヘンテコな場所が教えてくれたコト。2 看護師4年目、もう辞めたい…編 (いろは出版)
仲本りさ

「病院というヘンテコな場所が教えてくれたコト」シリーズの第二弾です。

参考:「病院というヘンテコな場所が教えてくれたコト」シリーズの第一弾
https://nishigahara4-harikyu.com/blog/hentekohospital/

前作は、「死をどう乗り越えるか」がテーマでしたが、今回は「もう辞めたい」と思うような現実に直面する展開が描かれています。

患者さんのためを思ってやっている処置でも、場合によっては痛がられたり、ムッとされたりして嫌がられ、悪魔みたいな存在になってしまうという現実。

それに対して、一人の看護師としてどう向き合って受け入れていくのかが、分かりやすいイラストとともに丁寧に描かれていました。

「しんどいけどもうちょっと頑張ってみよう」という前向きな気持ちが感じられる終わり方で読後感もよかったです。

以下に印象に残った言葉を抜粋しました。

・医療者は病気になった人の治療のためだけにいるんじゃなくて、その人の人生を大切にするためにいるってことを忘れないようにしたい

・悩み続けて行き着いたのは、失っていくことや解決されない苦しさを抱いたまま、「ただ今日を一緒に居る」とうこと。それだけのことにかけがえのない価値を見出す感受性をもつという姿勢が大切。

本書の執筆期間中に広がった新型コロナウイルスについても、

「仕事だから仕方なく」

「コロナ患者さんに対応するスタッフになんて声をかけたらよいのだろう」

といった本音が描かれていたのもよかったと思います。

苦しみながら考え続ける看護師さんを応援したくなる一冊でした。

うつ病九段

うつ病九段 (文藝春秋)
先崎学

プロ棋士 先崎学九段がうつ病で入院することになり、どん底から立ち直っていくまでの過程を読みやすくコミックで描いた一冊です。

先崎九段は、私が好きな漫画「三月のライオン」で将棋コラムを書かれているので、名前だけは知っていました。

藤井聡太棋士がデビューから29連勝で世間を騒がせている一方で、先崎九段がうつ病で苦しみもがいていたことは知りませんでした。

精神科医の兄のすすめで入院することになっても、将棋の対局のことが頭から離れない。

それでも、将棋を指すことはとてもできず、無力感に苛まれていく様子が赤裸々に描かれていました。

うつ病回復期の患者がリハビリを兼ねて、体験記を書くというのは珍しくて、当事者の体験だけに具体的な内容でした。

「みんな待っています」というシンプルな一言が最も嬉しかったというのも当事者ならではの意見で勉強になりました。

その後、うつ病の状態がどうなったのか、どうやって折り合いをつけているのか、続きがあればまた読んでみたいです。