お客を捨てる勇気

お客を捨てる勇気
中谷嘉孝 著

本書は、一人でヘアサロンを経営している男性が主人公で、顧客ニーズに無理して応えるのではなく、自店の強みを大事にして、自分の想いをもとにした「旗」を掲げ、その旗に集まってくれるお客だけを大切にすることで安定した経営を行いながら幸せになることを目的とした内容になっています。

 

 

この本で語られていることは、小さなお店を営むものにとっての真理であると思いました。

「大好きな人たちに囲まれて、幸せな時間を過ごしながら、きちんと儲かる状態」

まさにこれが目指すところなのですが、やはり目先の売上や利益にとらわれて、今すぐできるかとか、安くできるかだけを考えるお客に振り回されてしまいます。

 

 

「お客様を、業を通じて人生という貴重な時間をともに共有する同志としてとらえてみる」という考え方はとても共感できました。

価格設定についても、高単価にして他にはない自分だけの旗を掲げることで、お店はいつだって真剣勝負を求められるし、お客様にも自分の選択は正しかったと思ってもらえます。

この境地まで行くことができれば、本当に理想の店舗経営ができると思います。

また、本書に描かれている、新規客優待割引がおかしいというのも同感です。

初めてのお客様よりも、永く通ってくれているお客様こそ大事にすべきというのはもっともだと思いました。

 

 

タイトルの「お客を捨てる」という言葉はちょっときつめの言葉ですが、

『安さや手軽さだけに拘るお客様よりも、少し高くてもお店を大切に想って来て下さるお客様と自分の志しを大事にしよう』

という考え方が小さなお店の場合にはとても大切だと思います。

 

 

働きながら発達障害と上手に付き合う方法

リワーク専門の心療内科の先生に「働きながら発達障害と上手に付き合う方法」を聞いてみました
亀廣 聡 , 夏川 立也 著

 

最近、大人の発達障害という言葉をよく耳にするようになりました。

本書では、IT企業勤務の発達障害の男性とその妻、薬品会社で障害者雇用をすすめる人事部長、酒造メーカー営業の発達障害の女性という4人の視点から発達障害との付き合い方が語られていきます。

 

 

発達障害をASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠陥、多動性障害)、LD(学習障害)の3つに分けて考えて、自分の個性の現れ方を分析するとともに、発達障害が原因で職場になじめず適応障害を発症したり夫婦関係がうまくいかなかったりする二次障害についての対処と予防方法もまとめられていました。

本書の最期に紹介されている「“出口泉水”(酒造メーカー営業の発達障害の女性)のトリセツ」はよくまとまっていて、当事者の方にはとてもよいと思います。

発達障害については多少の知識はありましたが、知らないこともたくさんあったので勉強になりました。

 

 

発達障害の症状としてメンタル不調があるのかと思っていましたが、発達障害の生きづらさが二次障害としてメンタル不調を引き起こしており、調子のコントロールは本人が工夫ししながら対応しつつ、二次障害は周囲の理解や環境調整が大事であることがよく分かりました。

また、認知処理様式として全体を理解してから細部を理解する同時処理と、細部から全体を把握する継次(けいじ)処理の二つがあり、発達障害の人はどちらかに極端に偏っているということは知らなかったです。

継次処理に偏っていると、おおまかなゴールだけを伝えても、何をしてよいか分からないというのも一つの特性だと理解できました。

 

 

薬だけに頼るのではなく、自分の特性を理解して自分のトリセツを作って周囲の人と協力しながら社会生活を営んでいくのが本来あるべき姿なのだと思います。

しかし、正直ここまで見てくれる精神科クリニックはなかなかないし、家族はともかく職場での協力を求めたり環境調整をするのも大変だと思うので、まずは本人が自分の特性を知って工夫したり、職場でも相談しやすい人にだけ話してみたり、できることから少しずつ始めて、少しでも発達障害の人の生きづらさが減っていくといいなと思いました。

 

 

#本書に興味がある方は、同じ著者が書いた以下の書籍もおすすめです。
『復職後再発率ゼロの心療内科の先生に「薬に頼らず、うつを治す方法」を聞いてみました』
https://nishigahara4-harikyu.com/blog/notdependmedicine-curedepression

傘のさし方がわからない

傘のさし方がわからない
岸田 奈美 著


本書は一万円選書のいわた書店(2回目当選)に選んで頂いた一冊です。

軽快な文章で、実際に経験した出来事をおもしろおかしく書くとともに、大事なところは言葉を選んでしっかりと伝えているのがよかったです。

 

 

著者の言葉には、相手を傷つけず、それでも言いたいことをしっかり伝えるという心遣いが感じられました。


私が印象に残った内容を以下に抜粋しました。

 

・困っている人を見つけて、自分がなにかできると思ったら、できるだけ迷わず声をかける。でも、期待をしない。自分が救いになるという高慢さをすてる。救えるのは自分だけ。声をかけたいから、かける。いらないとはねのけられたり、疎遠になったりしても、がっかりしない。ましてや、怒らない。いまはまだ、そのときではなく、その形ではないだけだ。扉のかぎを外し、入ってくるか、違う扉を見つけられるかを祈って待つ。

 

 

・「嫉妬は身を滅ぼす」という言葉があるように、大きくなりすぎた嫉妬の火は、火災を起こして焼きつくしてしまう。だからといって、火を使うことを止めてしまうのはもっとおろかなことだ。寒い冬には凍えてしまう。大切なのは、火を整えること。自分の向上に必要なだけの火を調整する力。火がちゃんと燃えていることに、自分で気づかなければいけない。これ以上燃えたら大変だ、という基準も知っておく。新しい挑戦をするために、意思と節度をもって、上手に火を燃やしていく。向上するために、ほどよい嫉妬という火を、ほどよく利用する。

 

 

・豊かさってなんだろう。わたしは大切な誰かに出会う度に、材質の異なる「芯」を、一本ずつ手渡されている。
「健康であること」、「お金があること」、「時間があること」、「未来があること」、「やりたいことをやる」とこんなふうに、出会う人たちから、芯を一本ずつもらってきた。今のわたしが、豊かさの芯として選び取ったのは「好きなことをして、好きな人と、好きに生きる」だ。

 

 

・障害者差別といえば、障害者がお店を追い出されたり、会社で働けなかったり、そういうとんでもなくおそろしいイメージが浮かぶかもしれない。いまはたぶん格段にへったけれど、残念ながら、差別は姿かたちをジワジワ変えて、いまもわたしのすぐそばにいる。世の雑踏に紛れるほどの変身を遂げた差別のことを、わたしは「思いこみ」と呼んでいる。

 

 

不便益という発想

不便益という発想~ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも 行き詰まりを感じているなら、 不便をとり入れてみてはどうですか?

川上浩司  著

 

「不便益」という、不便であるからこそ得られる効用に着目した書籍です。

旅の不便がいい思い出になったり、AT車ではなくMT車を運転したり、おやつを上限300円と決めることで一生懸命選ぶ、といった不便益の効用が丁寧に解説されていました。

 

 

また、バリアーフリーと逆の発想で、身体能力を低下させないようあえてちょっとした段差や階段を配置した「バリアアリー」を実践しているデイサービスセンターの話や、片方の足がわずかでも動けば自分でペダルをこぐことができるCOGYというペダル付き車いすの話もおもしろかったです。

#COGYというペダル付き車いすについては、当院の過去のブログでも書いています。
「自分で動ける希望を生み出す魔法の車いすの秘密」
https://nishigahara4-harikyu.com/blog/secret-magic-wheelchai/

 

本書は便利なものを否定しているわけではなく、便利なものが次々と開発されることで、人間が自ら手をかけ時間をかけ頭を絞ることを社会が許さなくなっている風潮がある、という著者の意見には共感できました。

 

 

実際に人が自らの手で習熟し、主体性をもってやることで、スキルがあがって自己肯定感ができる、ということがやりがいにも繋がってくるという考え方も分かりやすかったです。

・洗濯は洗濯機のスタートボタンを押す

・掃除はルンバが勝手にやってくれる

・食べ物を食べたかったら電子レンジに入れてスイッチを押す

・調べものはインターネットで文字を入力する

 

 

様々な日常の行為が楽にできるようになっているからこそ、あえて不便にすることで得られるものもあることに気付かされた一冊でした。

 

死ぬまで、働く。

死ぬまで、働く。
池田 きぬ 著

 

戦前から看護婦、保健婦として活躍、その後も婦長など責任者の立場を中心に看護師を続け、88歳からは責任者ではなく一人の現場担当としてサービス付き高齢者住宅「いちしの里」に勤務、97歳の今も現役で働き続ける池田きぬさんの話です。

 

看護師として80年働き続けてきて、97歳の今なお現役看護師として働いている池田さんの言葉は励みになりました。

 

 

サービス付き高齢者住宅で週2回、仕事をすることが生活のよいメリハリになっているという池田さん。

年をとっても、若い人たちと協力しながらしっかりと自分のできる仕事をし、苦手なことは周囲に助けてもらいながらも働き続ける。

若い人だけでなく、ご年配でも元気な方が職場にいることで、どこかのんびりした空気になり、職場は和気あいあいとしているという穏やかな雰囲気が伝わってきました。

 

 

ITスキル、車を使っての送迎、体力仕事などは若い人にやってもらい、その分、人がいない時に率先して働いたり、同世代の入居者さんの話を聴いたり、若い人の相談に乗ったりと、うまく仕事をしていけるのは、池田さんの謙虚な人柄があるからだと思います。

仕事以外でも、

・今日やることをメモする

・野菜と花の世話、草引きをほぼ毎日やる

・新聞を読む

・苦手な料理も楽しみながら時々新しいレシピに挑戦

など、毎日自分の健康や世間の動きを把握することも怠らない姿勢は素晴らしいと思いました。

 

 

仕事は疲れるけれど、うちに帰ったときの「健康で動けた」という充実感は何物にも変えられないという池田さん。

働くことで得られる自分の役割や充実感が、元気で長生きするために必要なことなのだと本書を読んで改めて思いました。