てんびんの詩 商とはなんだ 商人とはなんだ

てんびんの詩 商とはなんだ 商人とはなんだ(まあきゅりい・ぶっくす)
竹本幸之祐

今から30年以上も前に出版された書籍ですが、商いの本質をついた良書でした。

商家の後継者である13歳の少年が、商人とは何かを、自ら鍋蓋を売り歩く経験から学んでいく商いの物語です。

食うだけで一生が終わる百姓に比べて、才覚と努力で発展する商人。

自分の都合やもみ手、泣き落としで商いを行うのではなく、人の役に立つこと、買う人のことを考えることを身をもって学びながら、商人のありようを模索していく話は心に響きました。

挫折や不安、絶望、恥ずかしさなどの葛藤を乗り越えて初めて分かることがあることを実体験で学ぶことに意味があると思います。

本書の後半部分は、様々な商人の相談や意見を求められた、著者の商いに関する考え方が書かれていますが、これも非常に勉強になりました。

保障のない商人の最大の安堵は、真剣にお客に対応した満足感であり、「またきっと来て頂ける」という明日への期待であり、そんな日々の積み重ねで今日がある。

私もサービス業の一員として、お客様への提案や価値創造、合理的な説得力をもち、いつでも新しい提案や恒常的な楽しさをもちながら、いい競争をしていくことで進歩していくという市場原理を忘れずにいたいと思います。

真経営学読本

真経営学読本(きんざい)
福島正伸

働く人すべてに読んでほしい、幸せになる働き方がつまった珠玉の一冊です。

著者の体験を主として、働くことの要点が、分かりやすい言葉で丁寧にまとめられています。

たんに生活のために働くのではなく、人を笑顔にしたり、社会貢献のために働く。

そのために必要な考え方や人とのかかわり方、人材育成のために必要な依存や責任、見本、支援、信頼といった考え方も丁寧に解説されていたのもよかったです。

「仕事とは、人とのかかわりの中で、どれだけ笑顔を増やし、幸せな人を増やしていくかという事業であり、自分が感謝され、必要とされることにつながっていく。
利益を得るために仕事をするのではなく、人を幸せにするために仕事をする。人を幸せにする仕事は、必ず結果として、利益を得ることができる。利益は求めるものではなく、自分が人や社会からどれだけ必要とされたかの感謝値に過ぎない。」

働く意義は上記の言葉に集約されていると思います。

コロナウイルスによって様々な産業が大きな打撃を受けている中、改めて働く意義を考えるきっかけになりました。

薬に頼らず、うつを治す方法

復職後再発率ゼロの心療内科の先生に「薬に頼らず、うつを治す方法」を聞いてみました(日本実業出版社)
亀廣聡,夏川立也

うつ病に関しては、様々な書籍が出版されていますが、その中でも本書は分かりやすくて、対処方法も具体的で読んでいて勉強になりました。

「うつ病ってなに?」というところから、うつ病にも色々な種類があってそれによって処方薬が異なるべきであること、なぜうつ病が広がっていったのかという経緯まで分かりやすく解説されています。

対処法でも、意欲、気分、行動をコントロールする方法として、マインドフルネスや自律訓練法、睡眠、食事、運動、自己肯定感を高める練習などが、簡潔に説明されており、すぐに実践できるようになっていました。

必ずしもこれらを全てやる必要はないと思いますが、できるものから少しずつやっていくだけでも、ちょっとした変化は期待できそうだと感じました。

以下に、特に印象に残った内容を抜粋します。

・記憶力のおかげで家にかえってまで仕事のストレスを感じ、想像力のおかげで明日も同じことが起こるかもしれないと勝手に想像する。目の前には何もないのに、記憶や想像の産物にストレスを感じるってきっと人間だけで、過去や未来について勝手に考えを巡らせてストレス反応を慢性化させていく。

・ストレッサーというストレスの外的要因を変えることは難しいが、認知と行動を変えることは訓練でできるから、積極行動、代替思考、否認、回避などのストレス対策を使い分けて少しずつ対応していく。

・自分を客観的に見る方法として、「1年前の自分ならどう思うだろう」、「5年後の自分ならどう思うだろう」と考えたり、「もし自分が大切にしている人が同じ状況なら、なんてアドバイスする?」など、自分から離れた立場で考えてみることも大切。

ただし、これらの方法はとても時間がかかります。

しっかりと時間をかけることで、自分を見つめなおし、認知と行動を変えて、うつ病の再発を防ぐ有効な手段の一つだと思いました。

ひきこもりを家から出す方法

ひきこもりを家から出す方法(集英社)
猫田 佐文

中学時代から引きこもって10年が経過した影山俊治。

自分の部屋から出られないひきこもりの彼を救い出すための試行錯誤の物語です。

本当は社会と関わりを持ちたい、でもどうしてよいか分からないし、人の話を聴いても劣等感を抱いてしまう。

誰かに変な目で見られないか、気持ち悪いと思われないか、誰かと一緒にいてもいいのか、様々な不安を本当に小さな触れ合いの積み重ねで変化のきっかけを与えていく。

そして、何かができて達成感を得る、誰かに認められて承認欲求が満たされる、そんなことを繰り返して少しずつ自信を持てるようになっていく。

そんなプロセスが丁寧に描かれていて読み応えがありました。

本書はひきこもりをテーマにしていますが、痛みや体の不調でも応用できる考え方だと思いました。

患者さんのお話を丁寧に聴いて不安やイライラする気持ちに寄り添っていく。
その結果、少しずつ不安が減少していく。

痛みが起きていてもできることはないか、以前と比べて体を動かせる範囲が大きくなっていることを実感して頂く。
その結果、少しずつ良くなっていると実感し、さらにやってみようという気になっていく。

こんなふうに不安な気持ちに寄り添いながらも、できていることに気付くお手伝いをする。
そんな治療ができたらいいなと思います。

なんで僕に聞くんだろう。

なんで僕に聞くんだろう。(幻冬舎)
幡野広志

2017年に多発性骨髄腫を発病し治る見込みがない著者が、真摯に、誠実に、人生相談に応える実話で、心に響きました。

「悩み相談で一番大切なことは、相手の答えを探ることだ。答えは悩む言葉のなかに隠されていて、悩み相談は相手を分析する作業だ。男性がやりがちな「問題解決」だけでも、女性がやりがちな「共感」だけでも足りないのだ。この二つがうまくミックスされたものが悩み相談に必要だとおもっている。」

著者のこの言葉は悩み相談の本質を突いていると思いますが、これがどれほど難しいことか。

「言葉で人の歩みを止めることも、背中を押すこともできるならば、できる限りぼくは背中を押す人でありたい。」

この言葉に象徴されるように、相談者に共感しつつも時に厳しく、時に鋭く問題の本質に迫る著者の言葉は、じーんと胸に響くものが多かったです。

なにかに悩んだとき、立ち止まったときに、背中を軽く押して「君ならきっと大丈夫だよ」と笑顔で言われたら、どんなに心強いか。

何度も読み返したい一冊でした。

以下に、特に印象に残った言葉を抜粋しました。

・ガン患者さんに安易に声をかけるのはリスクの高いことです。声をかけるのではなく、ガン患者さんの声に耳を傾けることが正解なんです。なぜなら患者さんは話を聞いてほしいからです。そして否定せずに、できる範囲でやりたいことの手伝いをしてあげてください。否定されるって本当につらいのよ、やりたいことや生きがいを奪われるぐらいなら死にたいもん。

・対応力だとか共感力だとかコミュニケーション能力だとか、いろいろありますけど、ぼくは問題解決能力が大人になるうえで必要な力のひとつだとおもっています。こぼれないコップを使えば失敗することもなくて簡単なんだけど、どんなに注意しても失敗やトラブルって絶対に起きるので、大切なのは解決する能力です。

・子どもが選ぶべきことを親が選んでしまうと、子どもが大人に成長したときに自分で選ぶことも自分で考える力も培われず、失敗を恐れて行動しない、好きなことや自分がやりたいこともわからなくなってしまう大人になります。失敗をさせないことが、子どもの人生を壊す行為だとぼくはおもいます。子供のためをおもってのことかもしれないけど、とても優しい虐待です。