新版 今日が人生最後の日だと思って生きなさい

新版 今日が人生最後の日だと思って生きなさい
小澤 竹俊 (著)


身近な人が病気で苦しんでいたり、自分自身が生きることに悩んでいる人におすすめしたい一冊でした。

「死」というのものを意識しながら生活し続けるのは難しい。

それは死が日常ではなく、非日常だから。

それでもできるだけ悔いがないように生きるためには、日常と非日常の両方の大切さを知り、使い分けていく必要があるという考え方は共感できました。

 

 

非日常の出来事が起こると、食事がとれること、布団でぐっすり眠れること、大事な人といつでも会えること、そんな当たり前の日常がいかにかえがえのないものであるかがよく分かると思います。

また、最後はどうするか「自分で選ぶことができる自由」というのもとても大切だと思いました。

自分で外出したり、仕事を選んだり、誰のお世話になるか考えたり、日々の選択の積み重ねが人生をつくっていて、それは死ぬ直前まで変わらないことが、自分の尊厳を持ち続ける手段だと考えています。

 

 

以下に印象に残った言葉を抜粋。

・苦しみは希望と現実のギャップから生まれる。それでも苦しみを抱えながら穏やかに生きるにはどうすればいいかを考えるとき、自分にとっての大切な存在や支えになってくれる存在に気づける

・本当に大事なのは、「患者さんの問題をすべて解決すること」ではなく、無力な自分を受け入れ、医者としてではなく一人の人間として「患者さんに関わり続けること」、「無力でも患者さんの言葉をきちんと聴き、共に苦しみを味わおうとすること」

・亡くなった人も、ずっとそばで見守ってくれていて、この世を去ったあとも自分の存在や思い、言葉は人の心の中に生き続ける

 

 


新版 今日が人生最後の日だと思って生きなさい

健康保険が使えますか

先日、新規の患者さんから

「腰痛があるのですが、そちらでマッサージを受ける場合、健康保険は使えますか?」

という問い合わせの電話がありました。

 

 

『かかりつけの医師の同意書があれば健康保険が使えますが、筋肉の麻痺や関節が動かないなどの症状がある方でないと、同意書を書いていただくのは難しいかもしれません」

と回答しました。

そのあと、

「私は西ヶ原に住んでいるのですが、どこに行けば健康保険で施術が受けられますか?」

と聞かれました。

そこで、

『腰痛でしたら、整形外科のクリニックに行くと健康保険が使えます。
クリニックによっては医師の診察と薬の処方だけのところと、リハビリ室があってマッサージ師や理学療法士による施術が受けられるところがあります。西ヶ原でリハビリ室がある整形外科は、〇〇整形外科、△△整形外科です』

と回答しました。

「ご丁寧に教えて下さり、ありがとうございました」

とお礼を言われました。

医療系の仕事をしていると、どこで、どんな時に健康保険が使えるのかという知識もある程度もっていますが、今まで病院や治療院をほとんど受診したことがない場合には、健康保険のことを知る機会がないのかもしれません。

 

 

そこで、痛みや体の不調がある場合に、健康保険が使えるところを簡単にまとめてみました。

①病院、クリニック
(入院施設が20床以上ある医療機関を「病院」、19床以下を「診療所(クリニック)」という名称が定められています)

受診する科に関わらず、病院、クリニックでは健康保険が使えます。

初めての体の不調や急な痛みの場合、まずは病院、クリニックを選ぶのが無難かもしれません。

ただし、予防接種や人間ドックなど、健康保険の対象外となる診療もありますのでご注意下さい。

参考サイト:SCSK健康保険組合 健康保険で受けられる診療と受けられない診療
https://www.kenpo.gr.jp/scsk-kenpo/contents/01shikumi/kyufu/uke/index.html

 

 

②整骨院、接骨院
(整骨院と接骨院は、名称が異なるだけで施術内容に大きな違いはありません。どちらも柔道整復師が施術を行う施設です)

急性の外傷性の捻挫、打撲、脱臼、骨折の施術の場合には健康保険が使えます。

慢性症状に関しては健康保険が使えませんのでご注意下さい。

ちなみに、上記の新規の患者さんからの質問の回答で「整骨院」と回答しなかったのは慢性の腰痛の場合には健康保険が使えないからです。

病院、クリニックであれば、急性、慢性に関わらず、健康保険が使えます。

参考サイト:全国健康保険協会 柔道整復師(整骨院・接骨院)のかかり方
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3070/r141/

 

 

③はり・きゅう院・あん摩マッサージ指圧院

かかりつけの医師の同意書があれば、健康保険での施術が受けられます。

普段、病院やクリニックにかかっていなくて、かかりつけの医師がいない場合には利用するのは難しいです。

・健康保険の取り扱いについて
https://nishigahara4-harikyu.com/hoken.html

 


初めて受診して健康保険が使えるのは①、②で、③は医師の同意書を受領してからでないと健康保険での施術は受けられません。

なお、①、②で健康保険の施術を受ける場合、同じ疾患を治療中の場合、重複して健康保険を使うことはできません。

(例)A整形外科で腰痛を治療中の状態で、B整骨院にかかって腰痛治療を行うことは不可

以下のサイトにも、分かりやすくまとまっていますので、興味がある方はご確認下さい。

参考サイト:広報おびひろ 国民健康保険が使える施術と使えない施術
https://www.city.obihiro.hokkaido.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/995/1609koho-p03.pdf

 

今回は、健康保険が使えるところの情報を簡単にまとめてみました。

現在は色々な情報が出回っているので、もし分からなければ事前に受診する機関に確認した方がよいと思います。

 

医者にかからない幸福

医者にかからない幸福
木村 盛世 (著)


日本の医療の問題点、つまり過剰に医療機関を受診したり、健診(健康診断)や検診(がん検診など)にかかりすぎていることを、欧米諸国の医療と比較しながら説明していたので、説得力がありました。

健診や検診を受けた患者や、抗がん剤を使った患者が長生きするというエビデンスはなく、毎年健診を行うのは日本だけの習慣であるという事実も、もっと多くの人に知ってもらいたい内容でした。

 

 

また、イギリスやスウェーデンという皆保険の国でも、家で治せる風邪やインフルエンザではよほど重症でない限り病院で診てもらえず、本当に医療を必要としている人を将来にわたって診療しつつ、税金を有効に使う、という考え方は日本でも見習うべきところが多いと思います。

「人口がどんどん減っているのに、病気の患者だけ診ていたら、売上は先細り。元気に暮らしている人の中から、病気を掘り起こして、なんとか患者を増やさなければ」(本書の84ページの内容を抜粋)

これがまさに問題の本質で、そのために必ずしも必要でない検査を行う病院が多いのだと思いました。

そんな過剰医療と、心配性の国民性がマッチングして国民医療費が増え続けているというのは分かりやすい説明でした。

 

 

ではどうするか。

本書では、手術の必要性や延命効果もはっきりしていないものは「そのままにする」という選択肢もすすめています。自分で自分の生き方や受けたい医療を選択できるようにする、というやり方も必要だと思います。

また、「病気が見つからないうちはわざわざ見つけない」ことが幸福につながると述べていました。

 

 

一方、疑問点もありました。

本書の97ページに書かれている「日本は45年以上も、世界で1、2を争う長寿国の座を守ってきた」とありますが、日本はなぜ長寿国となり得たのか。そこに医療機関の貢献はないのか。栄養や衛生状態、医学の進歩は他の先進国も同じで、その中でなぜ日本は長寿なのか。

食事の問題なのか、飲酒や喫煙の問題なのか、生活習慣の問題なのか。今の医療の悪い部分だけでなく、良い部分、うまくいっている部分の理由も知りたかったです。

また、本書では認知症のことには触れられていませんでしたが、過剰医療で薬を多く服用することや、多くの検査で不安を煽ることが認知症とも関係するのかなど、そのあたりも欧米諸国との比較をしてほしかったです。

これから若年人口減少と超高齢化がますます進み、医師の数も減少していく中、過剰医療に関して考えさせられる一冊でした。

 


医者にかからない幸福

19番目のカルテ 徳重晃の問診(10)

19番目のカルテ 徳重晃の問診【10】(ゼノンコミックス)
富士屋カツヒト 、 川下剛史

なんでも治せるお医者さんを目指して奮闘する医師の物語の第十巻です。

第十巻では、

・病気は医者が必ず治せるという過度な期待をもつ腰痛患者

・リハビリに行かなくなりパーキンソン病が悪化してきた高齢女性

・胃がんが告知され余命宣告された29歳の女性

の話が掲載されていました。

今回は「病気は医者が必ず治せるという過度な期待をもつ腰痛患者」が印象に残りました。

 

 

これは、なかなか治らない腰痛患者さんの話です。

他の病院で椎間板ヘルニアと診断されますが、痛み止めでは痛みが改善せず、大きい病院なら治ると思って総合診療医のいる魚虎病院を受診します。

総合診療医の滝野先生が診察している間も、他の病院に対する文句が止まりません。

「痛み止めとリハビリで様子を見ましょう」と冷たくあしらわれたと言い、悪い口コミをネットに書き込む患者さんのようです。

 

 

デスクワークなのに、腰が痛くて長く座っていられないのでなんとかしてくれ!と強く訴えます。

痛みで神経が過敏になり、筋肉が緊張して血行不良になってそれが痛みになっていくという痛みの悪循環が起きていると考え、神経ブロック注射を提案する滝野先生。

注射を打つために麻酔科医の先生を連れてきたら、今度は注射をしないと言い出し、また大変という話でした。

最近は、とにかく早く治してほしいと言ったり、医師の態度が気に入らないとすぐに病院を変えたりする患者さんが多く、医師の先生も本当に大変だと思います。そして患者さんもしっかり話を聴いてもらえずにつらい思いをしています。

 

 

当院にはり・きゅう・マッサージを受けにいらっしゃる患者さんの中にも、腰痛で病院に行って

・レントゲンをとっても異常がなく、湿布と痛み止めを処方されただけだった

・痛み止めを飲んでとにかく安静にしているように言われたが、よくならない

とおっしゃる患者さんが来院されることも多いです。

そのときに私は2つのことを意識しています。

・できるだけ病院の悪口を言わない

→病院の医師の大変さも分かるので、患者さんに共感しながらもできるだけ悪いことは言わないようにしています。近年は病院を利用される患者さんが多く、一人ひとりに時間をとって話を聴くことが難しいのかもしれません。

・患者さんのつらい思いをきちんと聴く

→慢性の痛みになると、簡単には解決できません。腰痛が出ている原因も様々で長時間のデスクワークや運転、育児、介護など、色々なケースが考えられます。
 そのため、まずはしっかり患者さんの話を聴く、そして今できていることを認めつつ、できそうなことを提案していく。そんな考え方で患者さんに向き合っています。

はり・きゅう・マッサージの仕事は、忙しくて一人ひとりしっかり話を聴くことができない医師と、つらい思いを聴いてもらえない患者さんの間に入って、うまく調整できる立ち位置にいるのかなと考えています。病院で痛み止めの薬を処方してもらいながら、はり・きゅう・マッサージを受けている患者さんも多くいらっしゃいます。

もちろん患者さんの状態によって、はり・きゅう・マッサージではなく病院でしっかり診てもらうべき症状だと思った場合には、その旨を患者さんに説明して病院の受診をすすめます。

 

 

さて、19番目のカルテ第十巻の前述の「病気は医者が必ず治せるという過度な期待をもつ腰痛患者」はその後どうなったか。

どうやら神経ブロック注射を受けて腰痛が落ち着いたようです。(1回でよくなったのか、複数回受けたのかは分かりませんでしたが)

本書では、治療以外のセルフケアや日常生活で気を付けることの話は出ていませんでした。

私なら、はり・きゅう・マッサージ以外にも

・デスクワークが長いということなので、座り方の確認やクッションを使う提案

・日頃の運動習慣や歩く頻度の確認

・仕事の合間にできる簡単なストレッチの紹介

なども行って、少しでも患者さんの腰痛が楽になるような働きかけをしていきます。

 


19番目のカルテ 徳重晃の問診 10巻【特典イラスト付き】 (ゼノンコミックス)

伴走者は落ち着けない

伴走者は落ち着けない―精神科医斎藤学と治っても通いたい患者たち―
インベカヲリ★ (著)


私はさいとうクリニックや斉藤先生のことを知りませんでしたが、通常の精神科のように診察して薬を処方して、必要ならカウンセリングをして、というやり方ではなく、さいとうミーティングなるものを開催し、人前で自分のことを話す、他の人の話を聴く、というやり方を中心として治療を行っていることが驚きでしたし、すごいと思いました。

本書は、斉藤先生の患者さんたちの了解を得て、患者さんの症状や経過、斉藤先生との関わり方などを聞いてまとめたものです。その中から、斉藤先生の元に通い続ける患者さんたちの想いや斉藤先生が目指していることを考察していました。

斉藤先生は、アルコール依存、薬物乱用、摂食障害、窃盗癖、ギャンブル依存、性倒錯者などの依存症について、「依存症は個人の病気というよりも、家族の中を走る病気」と理解し、家族に目を向けるようになったようです。

 

 

ある患者はこう言っています。

「話を聞いていると、結構みんな真剣に悩んでいるんですよね。その中で、自分にも当てはまる問題って当然出てくるわけなんです。例えば、人のお世話が止められなくていつも苦しいとか。あっ、これは自分にも当てはまるなって気づくと、その瞬間に回復へ向かう。話を聞いている過程でそのことに気がついて、言語化できるようになり、自分の課題として向き合えるようになるんです。それに直接指摘されるとムッとすることも、他人の物語なら共感して聞けます」

これこそが「さいとうミーティング」の目的だと思いますし、ミーティングを通して「治してもらっている」のではなく、「自分で気づいて治っていく」のだと思いました。

また、患者さんの話を聞くとき、上の空で煙草を吸っていたり、パソコンでAmazonのサイトを見ていたりしていたらしいのですが、それも「そのままの自分を見せる」ことを意識しているようでした。

 

 

斉藤先生のことを、患者さんたちは狛犬、銅鑼、鏡と、様々な例えを用いて表現しています。

ある患者は斉藤先生のことを以下のように言っていました。

「自分だけでは自分は分からなくて、相手がいて自分が分かる。先生は、とってもクリアな鏡。でも何よりも、先生の生きてる姿が患者には一番影響があるんじゃないかな?あんなにいい加減で、わがままで、自分勝手で、それでも生きていていいんだって思わせてくれるところ。先生から受け取った大きなことって、言うことが変わってもいいんだなって思えたこと。人は一貫して同じことを言わなきゃダメだって思っていたけど、その時々によって違ってもいいんだってことを教えてもらった気がする」

斉藤先生の治療は必ず、「どうしたいの?」と聞くそうです。

これは「青写真を描く」ことで、先生が勝手につくる未来ではなく、五年後でも半年後でもそのときにどんな自分になっていたいのか?を空想させることで、本人の願望に従うことを大切にしています。

 

 

斉藤先生は期間を決めない仕事をしていて、このように話しています。

「私がやっている仕事は、フロイトがやった仕事以降のことを引き受けている。その人がどうやって今後の生活をしていくかまでを考えることが、私の仕事と思っているわけです。言ってみれば一生。その人が嫌になるまで、お付き合いするのが私です。お付き合いであって、治療はしていません。治しているのは患者さんが自分で治しているんです」

患者さんの人生の伴走者として、患者さんに寄り添い続ける斉藤先生の壮絶な生き様が垣間見れる一冊でした。

 


伴走者は落ち着けない  ─精神科医斎藤学と治っても通いたい患者たち─