「お手玉をする」とうつ、パニック障害が治る

「お手玉をする」とうつ、パニック障害が治る
中原 和彦 (著)


うつ病やパニック障害、不安障害や摂食障害など、様々な精神疾患に効果があるというお手玉療法が、具体的な解説とともに丁寧に説明されていました。

著者の中原先生は患者さんに「うつ病です」と告げることはほとんどないと言います。

それは、うつ病と言われると必要以上に深刻な病気だとショックを与えて治療の妨げになるからで、「脳が疲れているようですね」という簡単な言葉で伝えるという配慮はとても好感が持てました。

 

 

脳の3つの構造の説明も分かりやすく、それぞれに対応した対処法もよく考えられていて実践しやすいものだと思います。

【脳の構造】

植物脳:呼吸や睡眠、自律神経の調節を行う脳幹部

動物脳:食欲や性欲、快感など本能的な情動を司る大脳辺縁系

人間脳:創造力や理性、思想、運動、言語など人間を人間たらしめている大脳新皮質

【対処法】

植物脳に対しては、深い呼吸をしてリラックスでき、さらに呼吸を視覚化できるティッシュペーパー呼吸法

動物脳に対しては、イスに座って一定のリズムで行う膝の上下運動

人間脳に対しては、左右の手をリズミカルに動かすお手玉

特に「お手玉」に関しては、集中してやらないとうまくできないので、「今、ここ」という瞬間に向き合うことができるのがうつ病にとってすごくよいのだそうです。

 

 

さらに、「元の自分」に戻るのではなく、自分の臆病な気持ちや弱い部分と向き合って「新しい自分」になることで、うつ症状の再発を防ぐという考え方も納得できました。

劣等感、完璧主義、人と比べたがる、見栄を張る、周りの目を気にする、自分をさらけ出すことができないなどが、多くの患者さんに共通する特徴とのことです。

患者さんは病気を医師に治してもらうのではなく、心の癖に気付き、それを自分で修正していく姿勢が求められます。

ぜひ試してみたいと思える内容だったので、私も患者さんにすすめたいと思いました。

 


「お手玉をする」とうつ、パニック障害が治る (ビタミン文庫)

19番目のカルテ 徳重晃の問診(13)

19番目のカルテ 徳重晃の問診【13】(ゼノンコミックス)
富士屋カツヒト 、 川下剛史


なんでも治せるお医者さんを目指して奮闘する医師の物語の第十三巻です。

今回はパニック障害疑いの高校生と大人の発達障害が描かれていました。

 

 

サッカー部の17歳の男子高校生は試合中、突然の動悸で倒れてしまいます。

元々あがり症のため、周囲からはパニック障害を心配され、精神科を受診することになります。

様々な検査をした結果、精神科医からはパニック障害の可能性は低いと言われ、総合診療医の徳重先生にバトンが渡されます。

動悸と同時にあがり症も治したいという高校生に対して、徳重先生は語りかけます。

「心と身体は繋がっているが、正しく自分自身の心と身体の繋がり方や形を分かっているかというと、自信を持って言い切れない」

「君はまだ若くて自分を見つめる時間がたくさんある。君も僕もみんなこの「身体」という乗り物を操って生きている。今よりももっと正しく乗る方法が分かるはずだよ」

やった方がよさそうなことを色々試しながら、自分の身体をコントロールしようと頑張る姿が描かれていました。

 

 

プログラマーの男性はコードを美しくかくことや自分のこだわりに熱中して、仕事の優先順位の判断が付けられず、たびたび周囲に迷惑をかけてしまい、何度もクレームを受けてしまいます。

本人は真面目に仕事をしているつもりでも、周囲からは空気が読めない、融通がきかなすぎると言われ、うまく適応できない状況です。

いわゆる「大人の発達障害」を扱ったケースですが、徳重先生と精神科の天白先生が連携して対応していく展開になりました。

自分では社会のバグと思い続けて改善の努力をしてきたけれど、どうにもならなかったと悩む患者さん。

徳重先生と天白先生は、それはバグではなく、仕様であると伝えます。

仕様 = 特性は取り除くことはできませんが、生きにくい社会を歩きやすくするための地図をつくることで対処できることを教えてもらい、患者さんは前向きに仕事を続けていこうという気持ちになっていきます。

 

 

不安や恐怖を感じる大きな原因は何か?

それは「知らない」から。

正しい知識や対処法を知ることで対応できるようになったり、うまく折り合いがつけられるようになる。

そんなことを教えてくれる内容でした。

#本書のオマケとして、ドラマ化された現場を漫画家、編集者、監修医師で見学する場面が描かれていました。

 


19番目のカルテ 徳重晃の問診 13巻【特典イラスト付き】 (ゼノンコミックス)

マル障という医療費助成制度を知らなかった患者さん

今回は医療費助成制度の話です。

2026年3月から、脳出血で半身不随となった40代の患者さん(以下Sさん)の訪問施術を行っています。

初回は自費施術でしたが、主治医の先生に同意書を書いていただけたので、2回目以降は医療保険を使って3割負担で施術をしています。

施術をしながら色々お話をする中で、障害者手帳を持っているとのことでしたので、

「もしかしたら、マル障という医療費助成制度が使えるかもしれません。そうすると現在3割となっている自己負担の割合が少なくなりますよ。私の方でSさんが対象になるか区役所に確認してみましょうか?」

とお伝えました。

私は過去に、透析の患者さんと小児麻痺の患者さんに対してマル障制度を使ったことがあるので、この制度のことを知っていました。

参考サイト:心身障害者医療費助成制度(マル障)
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/seikatsu/josei/marusyo

 

 


ただ、所得制限などもあるため、障害者手帳を持っているからといって対象になるかは分からないので確認が必要です。

早速、区役所に電話で確認したところ、以下のような回答でした。

「Sさんはおそらくマル障の対象になりますが、申請がされていないのです。もし可能でしたら、Sさんご本人から区役所の障害区福祉課に連絡を下さるよう、伝えていただけませんか?」

すぐにSさんに連絡して、区役所の障害区福祉課に電話するよう伝えました。

その結果、申請をすればマル障の対象になることが分かりました。

マル障の対象となったことにより、Sさんの医療費の自己負担は3割→1割となりました。

Sさんは脳出血になって約1年半が経過しています。

その間、病院の医療ソーシャルワーカー、区役所職員、ケアマネージャーなど、様々な医療・福祉の専門職の方と接していましたが、誰からもマル障制度のことを聞いたことはないとおっしゃっていました。

最初に申請していれば、医療費の支払いが少なくて済んだのです。

なかには、10年以上マル障制度のことを知らないで医療費を多く支払い続けてきた方もいるようです。

参考サイト:障害者手帳 医療費受給者証が届きました 2,000万円超換算!?
https://ameblo.jp/wamahofuki/entry-12925401964.html

 

 

ちなみに、他にもSさんが利用できそうな以下の助成金や支援制度がありましたのでお伝えしたところ、Sさんは知らずに利用していませんでした。

 

・心身障害者福祉手当
https://www.city.toshima.lg.jp/443/kenko/shogai/teate/013079.html

・高次脳機能障害相談・支援事業
https://www.city.toshima.lg.jp/175/2208231349.html

 

さらに、障害年金受給、NHK受信料免除、タクシーチケット配布など、他にもあるかもしれません。

医療・福祉の専門職や役所の障害福祉担当の方でも、職員の経験年数や知識に差があったり、得意分野があったりして、教えてもらえないという不運なこともあると思います。

そこで、Sさんには区役所に行って、

「私はマル障制度や心身障害者福祉手当のことを教えてもらっていませんでした。
 だから、他に私が使えそうな助成金や支援制度を教えて下さい。
 と確認しに行った方がいいですよ」

とお伝えしました。

もちろんインターネットで検索すれば様々な情報が出てきますが、どれが自身の対象になる制度なのか、一つ一つ確認していくのはとても大変ですし、見落としもあるかもしれませんので、役所に確認するのが間違いないと思います。

誰もが年をとって体が不自由になったり、若くても事故や病気で障害を負ってしまうことはあります。

日本にはとても充実した助成金や支援制度があるため、もし大変な病気や障害を負ってしまった方がいらしたら、お住まいの役所に行って、

「私が使えそうな助成金や支援制度を教えて下さい」

と確認することをおすすめします。

 

ココロとカラダの痛みのための邪道な心理療法養成講座

ココロとカラダの痛みのための邪道な心理療法養成講座
粳間 剛 (著), 仙道 ますみ (イラスト)

 

最新の文献から痛みや認知機能の異常が起きるシステムを、マンガを交えながらわかりやすく解説した良書です。

私も鍼灸マッサージで痛み治療を行っていますが、そのヒントになる考え方が多く掲載されていて、とても勉強になりました。

痛みがストレスのセンサーになっていて、痛みを避ける行動を取ることの重要性がよく分かります。

ただ、「痛みの原因はストレス」というと患者さんは精神的なものと扱われたと思ってしまうので、ストレスが病気を悪化させるということを上手に伝える必要があると思いました。

 

 

治療効果を改善の方向へ上乗せするプラセボ反応が起きやすくなる以下の4つの条件は分かりやすかったです。

①自分が受ける治療・支援への期待
②医療者や支援者との良好な信頼関係(思いやりを感じる)
③病気を自分でコントロールできるという自信
④治療・支援を受けて良かったという経験(条件反射)

患者が医師の診察を受けたあとに回復するかどうかは、初診の際に医師がよく話を聞いてくれたと患者が感じるかどうかによることが明らかにされているという話も興味深かったです。

また、ストレス誘発鎮痛について、distraction(痛みから注意をそらす)が慢性疼痛の鎮痛効果に繋がるという説明も分かりやすかったです。

ほとんどの病気はストレスが大きく影響していて、注意・関心を痛み→ストレスに方向付けるのが大事です。

 

 

気にしないようにすると余計に気になるというカリギュラ効果の話も役に立ちました。

痛みを気にしないようにするには痛み以外の感覚に目を向ける必要があること。

五感に属さない内臓の感覚(内受容感覚)があり、空腹感、窒息感、残尿感、ドキドキ感、痛みなどをあらわしており、五感+内受容感覚を使ったレーズンや呼吸のエクササイズなどのマインドフルネスの訓練も参考になりました。

頭の中に注意が向いていると痛みのことを意識しやすくなってしまいます。

そのため、頭の外に注意を向ける、つまり五感+内受容感覚に注意を向けることで、外向きの注意になり、痛みから気をそらせる対象に気づきやすくなる。

では、distractionが起きやすくなるためにはどうするか。

視覚とカラダを動かしつつ、声出しをすることで言語のワーキングメモリが認知的多忙になりやすく、痛みに向けられる注意が減少する。

こうしたことを患者さんに上手に伝えていくのに本書はとても役に立つと思いました。

 

 


ココロとカラダの痛みのための邪道な心理療法養成講座

痛いところから見えるもの

痛いところから見えるもの
頭木 弘樹 (著)


本書は「どうしたら痛みが楽になるのか」ではなく、「痛みを抱えている人はどんな気持ちでいるのか」または「痛みを抱えているとどんな状況になるのか」といったことを描いていて、今までにない本でした。

そもそもどう痛いのか、どう苦しいのかを伝えることさえ簡単なことではありません。

痛みは主観的な経験であり、自分の経験から推測するしかないからこそ、そばにいる家族でもその痛みを分かってあげることは難しいのです。

 

 

著者が自身の経験を描いている中で、すべての食品は「痛いか・痛くないか」で分類されていった、お粥さえ食べられず、水も痛くて飲めないという話はあまりにも過酷で、経験した人にしか分からないと思います。

また、手術時の痛みの話を当時の入院患者で顔見知りのおじさんにしたら急にぽろぽろと涙をこぼし始めた話も印象的でした。

そのおじさんが痛みを理解してくれたからといって何の意味もないのですが、孤独を感じたときに自分の痛みを本当に分かってくれる人がいる、というのは心の支えになるというのは事実だと思います。

 

 

自分の痛みの経験を元に他人の痛みを理解しようとするのは、感受性が異なる相手の痛みを過小評価して否定してしまうことにつながってしまいます。

しかも、痛みというのは激痛の最中は痛すぎて痛みの説明ができず、痛みが落ち着くと、どんな痛みだったのかという痛みの実体が思い出せないことが多く、人に伝えるのは本当に難しいものです。

ほかにも、短時間の疑似体験はかえって理解を浅くする場合もあるというのは興味深かったです。

視力や聴力を低下させる疑似体験装具を装着して高齢者の大変さを理解したつもりになっても、それはたった1日だけの体験であり、その状態でずっと人生を送ることとは全く違います。それにも関わらず、体験して「わかったつもりになる」と当事者の訴えを軽く考えてしまうというのは、ありがちだと思いました。

 

 

さらに、病気のコントロール感の話も勉強になりました。

何を食べたら体調を崩すのか、何をしなかったらよい調子でいられるか、自分の身体に起こることをずっと見張っているというのはとても大変なことだと思います。

前は大丈夫だったのものが次はダメだったり、法則がなかなか見つからなかったり病状のコントロールができないことで、人生そのもののコントロールも失っていきます。

痛みをコントロールできなくてつらい状態を、リストカットという自分で切ることでコントロールできる痛みに変えるという考え方は参考になりました。

「痛み」という事象について、多面的な論点から考察しており、非常に考えさせられる内容でした。

痛みで困っている人だけでなく、その家族や友人が読むことで相手の痛みを理解するのは簡単ではないことが分かると思います。

 


痛いところから見えるもの (文春e-book)