カウンセリングを語る
河合 隼雄 (著)
本書の原版が刊行されたのは1985年で約40年前であり、現代ではカウンセリングの手法や考え方も大きな変化があると思いますが、本書に書かれているのは、カウンセリングの基本であり、普遍的なものであり、とても勉強になる内容でした。
「カウンセリングは植物を育てるのに似ている」という考え方は、河合先生の基本的なスタンスだと思います。
・木というのは十分な太陽と水と肥料と、そういうものが全部そろって自分で育ってくる。動物だとしつける、教えることをしなければならない。そうではなく、「育てる」ことに重点を置く。植物の種は条件さえ整えば自分からずっと育ってくる力も持っている。人間も同じで、種は持っているが、その子に十分な水と太陽と空気と栄養を与えなかったのではないかと考え、それを自分の力で出していく土に我々がなる
この考え方はとても共感できましたし、常に意識したいです。
・少しでも人の役に立ちたいという気持ちが前面に出すぎると決してよいことは起こらない。人間の心はそれほど単純でもわかりやすいものでもなく、他人の役に立つと思ってすることがかえって有害であることも多い
これも本当によくあることで、良かれと思って色々言葉かけをしたり、助けようとしてしまいます。
・カウンセリングはひたすら時を待つ商売
カウンセラーの仕事は何もしないことに全力をあげる人。自殺するかもしれない人を家まで送るよりも、自分で帰らせて何もせず待っている方がエネルギーがいる。この考え方も本当に勇気と胆力、クライアントを信じる力が必要であり奥深いです。
・カウンセラーはなぜ質問したくなるのか
自分の今までの考え、人生観、その中に早く位置づけたいから。下手な人ほど自分の考えで、生きたクライアントを殺して標本みたいに頭の中に入れてしまう。自分の意見や考えを押し付けず、ただ黙って聞く、受け入れることがいかに大変で難しいか。本書の中で繰り返し戒めていました。
また、安易に「こうしたらいい」ということは言わず、当事者が考え抜くこと、その人のことをどう考えるのかを大切にしていて、この問題が人生のどんな節目に来ているのかを一緒に考えていく姿勢も素晴らしいと思います。
ほかにも勉強になることはたくさんあり、行き詰った時や困難にぶち当たったときに読み直したい一冊でした。
カウンセリングを語る (角川ソフィア文庫)