地域包括ケア連絡会に参加しました(2024年)

先日、滝野川圏域の高齢者あんしんセンターが主催する「地域包括ケア連絡会」に参加しました。
(私の治療院も滝野川圏域にあります)

この取り組みは、圏域における高齢者に関わりの深い機関とのネットワークづくりを目的として毎年開催されているそうです。

参加者は、介護事業者、民生委員、シニアクラブ、自治会、地域の自主グループ、薬局や治療院の店舗など、何かしらの形で地域で活動し、高齢者と関わることが多い方々でした。

 

 

2024年度のテーマは

「社会的孤立の予防~ひとりひとりが地域で輝くために…」

です。

社会的孤立とは、

・家族やコミュニティとほとんど接触がない
・本人の感情とは関係なく他者とのつながりがない

状態のことを指しています。

似たような言葉で「孤独」という言葉がありますが、これは「ひとりぼっちと感じる心の問題」であり、「孤立」とはまた異なる意味のようです。

警察庁の調べでは、2024年1月~6月に警察が取り扱った死体の中で自宅で発見された一人暮らしの方は全国で37227人で、その8割が65歳以上の高齢者とのことでした。

孤立・孤独には、人との関わり、社会参加の有無、不安や悩みの相談相手の有無が大きく関係しています。

そのため、孤立している高齢者に気付き、つながり、見守るための仕組みづくりが必要だという話がありました。

 

 

その後、具体的な事例として

・一人暮らしの高齢男性が自宅で倒れているのを、地域住民の相談がきっかけで救急搬送につながった事例

・定年退職後やることがなく食べて、飲んで、寝てを繰り返していた方が自治会の活動に参加することになった事例

が紹介されました。

本事例について、どう感じたか、地域でどんなことができるかをグループで話し合う時間があり、意見交換をしました。

私のグループには民生委員の方、地域住民の方、体操教室を行っている自主グループの方がいて、高齢者あんしんセンターの方が司会をしてくれました。

 

 

普段あまり接することがない方々がどんな取り組みをしているのか、どうやって地域の高齢者と関わっているのかを知ることができたのはよかったです。

自分自身が今後どんなことをしていくべきか考えるきっかけになりました。

#本連絡会で渡された冊子に

「40歳を超えたあなたはプレシニア、プレシニアのためのライフスタイルチェック」(東京都健康長寿センター研究所、社会参加とヘルシーエイジング研究チーム監修

というサイトが紹介されていました。

プレシニアのためのライフスタイルチェック
https://presenior.jp/

これは食事や病気、運動、喫煙習慣、気分、各制度の認知度などの質問に答えることで、「病気の予防・管理」、「生活習慣」、「社会とのつながり」、「家計・生活」、「知識習得・活用」の5つの側面からリスクを判定し、それぞれの課題に応じたアドバイスを提供するサイトのようです。

私もプレシニア世代なので(笑)、、、やってみました。わりとよい結果で概ね低リスクでした。

慢性疼痛診療研修会に参加しました

先日、横浜市立大学主催の「慢性疼痛診療研修会」に参加しました。

これは、慢性的な痛みを訴える患者さんに対して、どうアプローチしていくか、どんなことを考えて治療を行っていくのか、ということを学んでいくものでした。

 

 

慢性疼痛に対しては、たんに痛いところに目を向けるだけでなく、運動や薬、食事、認知機能、心理面の影響など、様々な視点で考えていく必要があります。

今回の研修会で講師の先生がおっしゃっていた、

「慢性痛の治療目標は痛みを軽減することが第一目標ではなく、QOL(生活の質)、ADL(日常生活動作)の向上である」

という考え方は、とても共感できました。

具体的に何に困っていて、それは痛みがあるからできないのかを考えるという視点は、患者さんと話をするうえでも役に立つと思いました。

 

 

慢性疼痛に対して、薬剤性の認知症の話もあがっていました。

これは先日私がブログでも紹介した内容で、実際に臨床を行っている医師の間でも問題になっているようで、薬剤の管理や最低限の処方にすることが大事だという話を改めて実感しました。

参考ブログ:「薬剤性軽度認知障害について」 
https://nishigahara4-harikyu.com/blog/drug-induced-mild-cognitive-impairment/

また、ある医師の先生がおっしゃっていた言葉が印象に残りました。

「様々な問題を抱えた患者さん(今回の症例)に対して、医師ができることは限られている。
多職種のスタッフの介入が大事で、医師としては薬で悪さをしないようにすることを心掛けている」

医師に関わらず、一つの職種でできることは限られていると思います。

自分には何ができるのか、できないことに対してどう多職種と連携していくのか、改めて考えるきっかけになりました。

 

 

健康寿命と予防医療の講座を受講しました

2024年7月17日に文京シビックホールで

「健康寿命と予防医療 ~人生100年時代をどう生きるか~」

という講座を受講しましたので、今回はその話を紹介いたします。

講師は、小石川整形外科院長の丸山剛先生です。

2021年7月に小石川整形外科を開院され、今年2024年で3周年を迎えたそうです。

話は以下の2つのテーマに分かれていました。

①骨粗鬆症

②変形性膝関節症

順番に紹介していきます。

 

 

①骨粗鬆症

まず、骨粗鬆症になるとなぜ良くないのか、という話がありました。

「歩くと腰が痛い」 → 「外出が減る」 → 「下肢の筋力が低下」

という悪循環が繰り返され、その結果、転倒や寝たきりが増加し、健康寿命を縮めるという話でした。

健康寿命とはWHO(世界保健機関)が2000年に発表した言葉で、日常的に介護を必要とせずに自立した生活ができる生存期間のことを指しています。

日本では現在、健康寿命が73.1歳、平均寿命が84.3歳です。

男性は健康寿命が72.6歳、平均寿命が81.5歳(健康寿命と平均寿命の差は8.9年)

女性は健康寿命が75.5歳、平均寿命が86.9歳(健康寿命と平均寿命の差は11.4年)

 


要支援、要介護になる原因として、

1.運動器疾患(転倒、骨折、関節痛など)

2.認知症

3.脳血管疾患

4.衰弱

という順番が紹介されており、50代の日本人女性の3人に1人は一生のうちで脊椎圧迫骨折になるというデータが紹介されていました。

また、脊椎が後彎すると、円背という背中が丸まった状態になり、その状態が長くなると消化器症状も出やすくなるという話もありました。

骨粗鬆症の判定方法としてはDXA(デクサ)法という方法が一番正確で、YAM値(若年成人比較)の70%以下で骨粗鬆症と判定されます。

 

 

では、治療はどうするか。

運動、食事、日光浴が基本で、それ以外に薬物療法、リハビリ、環境整備があげられていました。

運動はきつくない範囲で、

・有酸素運動は1回30分程度、1日5000歩くらい歩く

・筋トレは週2回体操を中心に行う

のがよいという話でした。

 

 

②変形性膝関節症

変形性膝関節症は膝の中でクッションの役割をしている軟骨が擦り減って関節炎が起こる疾患です。

日本人では約2500万人の患者がいて、そのうち女性が3分の2弱で、40代後半から徐々に発症するというデータが紹介されていました。

では軟骨が変形するとなぜ痛いのか。

以下の順番で痛みが悪化していくそうです。

・筋肉、靭帯の伸張痛:軟骨が擦り減った状態で使いすぎると関節周囲の組織の負担が増加し痛みが出る

・急性炎症:軟骨が剥がれて滑膜という関節液をつくる部分を刺激して痛みが出る(膝に水が溜まる状態)

・慢性炎症:急性炎症が慢性化

・軟骨下骨の磨耗:軟骨がなくなって、骨同士が接触して歩くこともままならない状態となる

軟骨には神経がないため、軟骨そのものでは痛みを感じないそうです。

 

 

では治療はどうするか。

保存療法として、薬、注射、装具、食事、運動、リハビリがあります。

手術は関節鏡手術、骨切り手術、人工関節置換手術があります。

まずは保存療法を行いながら様子を見て、症状が悪化したり痛みが強くなる場合には手術も検討します。

また、現在では新しい治療として、保存療法と手術の間で行う「再生療法(PRP療法)」という方法もあるそうです。

これはスポーツ整形学の分野で行われている、血液中に含まれる血小板を利用して損傷した組織の再生を行う方法で、ドジャースの大谷選手も利用したことで注目されたそうです。

参考サイト:再生医療相談室 再生医療トッピクス
https://www.rm-promot.com/topics/topics03.html

小石川整形外科では、「PFC-FD療法」という再生医療を行っており、約600の症例があるそうです。

7~8割の患者さんで症状が70%~80%程度改善、10%~20%が全回復しているものの、1割の患者さんで全く効果が出ていないという結果とのことでした。

再生医療は手術の必要がなく日常生活の制限がないこと、自身の血液を使うことから副作用が少ないというメリットがありますが、保険外治療となるため1回の注射で約30万円と高額であるというデメリットもあります。

 

 

最後に2つの話のまとめとして、

・健康寿命を上げるには健康意識を高めて予防に力を入れること

・特に運動(1日30分程度)、食事(野菜、肉をバランス良く)、日光浴(1日5分以上)が重要

であるという話でした。

今回の話の中で、再生医療の話はきちんと聞いたことがなかったので勉強になりました。

医療費が高額のため、まだ普及しにくいかもしれませんが、症例を積み重ねていくことで取り扱う医療機関が増えて価格が抑えられるといいなと思いました。

 

VR認知症体験会を受講しました

2024年6月5日に

「VR認知症体験会」

という講座を受講しましたので、今回はその話を紹介いたします。

講師は、株式会社シルバーウッドの大野彩子 氏です。

今回受講した「VR認知症体験会」というのは、VR(バーチャル・リアリティー)を活用して、認知症の方々が見ている世界を疑似的に体験するというものです。

「VR認知症」は認知症の当事者監修のもと、シルバーウッド社が開発した認知症の方の状態を疑似体験できるシステムです。認知症の正しい理解と共感が進むきっかけになることを目的として制作しているそうです。

参考:株式会社シルバーウッド VR Angle Shift
https://angleshift.jp/

 

 

認知症とは簡単に言うと

「認知機能の低下によって日常生活に支障が出ている状態」

のことで、原因となる疾患が70種以上あると言われています。

年齢別にみると、

60代後半では1.5%
70代前半では3.6%
70代後半では10.4%
80代前半では22.4%
80代後半では44.3%
90代では64.2%

となっており、年齢が高くなるほど認知症の方の割合が増えているというデータが紹介されていました。

長生きをするとどうしても認知症になりやすく、そのため「認知症になっても大丈夫」という社会にしていくことが大切だという話があり、共感できました。

 

 

講座ではVRとヘッドホンを装着し、認知症の人が体験しているであろう世界を3パターン、疑似体験しました。(VRで映像を見て酔ってしまった方もいたので、VRが合わない方もいるかもしれません)

①私をどうするのですか?

認知症の方が車から降りる際の様子を紹介したものでした。
「視空間失認」という、距離感が掴みにくくなる症状の方がどんな風に見えているのかを、立った状態で体験しました。

②レビー小体型認知症 幻視編

レビー小体型認知症の特徴の一つで、実際にないものが見える「幻視」という症状があります。
VRでは、仲間の家を訪ねた際に、幻視症状がある方がどんなふうに見えているのかを体験しました。

③ここはどこですか?

電車の中で寝てしまい、今どこにいるのか、そもそもどこに行こうとしていたのか分からなくなってしまったという設定でした。
「見当識障害」という、時間や場所、人物を認識・理解する能力が低下した状態の方の混乱した様子を体験しました。

 


講座には約50人が参加しており、4人ずつがロの字になって座り、VR体験後に意見交換をする時間が設けられました。

実際に体験してどう感じたか、自分が認知症当事者の立場だったらどうしてほしかったか、などを話し合いました。

また、VRを体験したあと、実際にVRを監修した認知症患者さんの映像が出てきて、どんな気持ちになったのか、どうしてほしかったかを率直に語っていたのも勉強になりました。

いくつか印象に残った内容を紹介します。

・介助者の立場では、ただ車から降りるだけなので、「大丈夫ですよ~」と声をかけていたが、視空間失認の方には高いビルから降りるように感じられ、足がすくんで動けない。介助者は時間がなかったり、他にも介助が必要な方がいたりと、早く行きたいと焦ってしまいがち。そんなときでも、まずは「どうしましたか?」と声をかけ、今どんな気持ちで、何を不安に思っているのかを聴くというのは、とても大切だと思う

・幻視が見える方に対して、「そんなのいないよ」、「気のせいだよ」と安易に否定するのではなく、「何が見えるの?」と聴いて一緒に楽しんだり、温かい気持ちでいてほしい。認知症患者さんに対する周囲の関わり方によって、不安やストレスで症状が悪化したり、安心感や楽しさで症状が軽減したりすることもある


私も仕事柄、認知機能が低下している患者さんと接する機会がありますので、患者さんに安心感を与えられる対応を心掛けたいと思いました。

 

アンガーマネジメント講座を受講しました

2024年3月19日に

「男性のためのアンガーマネジメント」

という講座を受講しましたので、今回はその話を紹介いたします。

 

 

講師は、日本アンガーマネジメント協会認定アンガーマネジメントコンサルタントでキャリアコンサルタントの江野本由香 氏です。

まず、アンガーマネジメントとは、「怒りの感情で後悔しないことを目指す」取り組みのことです。

勘違いされがちなのですが、怒らないようにすることではなく、怒る必要のある時には上手に怒り、そうでない時には怒らないようにすることなのです。

アンガーマネジメントは、1970年代に米国で生まれた心理トレーニングで、差別の多い社会の中で怒りをコントロールして犯罪を減らすことを目的にして発展したという説が有力という話でした。

 

 

以下の2つの考え方を基本としているそうです。

・解決志向アプローチ
→怒りの原因を追究するのではなく、どうしたら怒りを減らせるかを考える

・物事の捉え方
→多様なものの見方をどう考えるか

さて、私たちを怒らせるものは何なのか。

人なのか、モノなのか、出来事なのか。

その正体は、「○○はこうあるべき」という価値観や願望です。

それが裏切られた時に怒りの感情が生まれるという話は印象に残りました。

 

 

講座の中で「最近怒ったことやイライラしたことを書く」というワークがあり、「出来事」と「こうあるべき」を書きました。

私は

・仕事中にパソコンがフリーズして、使えないことが何度も続いた
→重いソフトを起動していない時にはパソコンはスムーズに動くべき

・中華料理屋さんで先に来て並んでいたのに、店員さんの勘違いで順番を飛ばされたこと
→予約制でなければ並んでいる順番に案内すべき

・予約をしていた患者さんが連絡なしでキャンセルになった
→キャンセルになるのは仕方ないが、せめて連絡はすべき

といったことをあげました。

価値観や願望は育ってきた環境や知識、経験、時代背景が大きく影響しています。

そのため、ある出来事に対する意味づけや感情が人によって異なります。

その結果、正解は人によって違うし、時代とともに変化するため、「○○であるべき」というものの扱いが難しい、という説明は分かりやすかったです。

 

 

ではどうするか。

アンガーマネジメントには、衝動、思考、行動という3つのコントロールがあります。

①衝動のコントロール

カッとなってから理性が働くまで4~5秒かかるため、とりあえず6秒間は反射的に何かを言ったり、やったりするのを耐えて何もしないという方法です。6秒間待つために、落ち着く言葉(大丈夫、まあいいかなど)を唱えたり、目の前の物に意識を向けて怒りから意識をそらす、深呼吸をする、といった方法も有効です。

②思考のコントロール

出来事を、「1.許せるゾーン」、「2.まぁ許せるゾーン」、「3.許せないゾーン」の三重のゾーンに分けて考える方法です。人によって許せる、許せないの定義が異なるため、「2.まぁ許せるゾーン」を広げていくことを考えていきます。また、自分が許せないことを家族や友達など身近な相手に伝えておくことで、トラブルを減らすことにも繋がります。

③行動のコントロール

出来事や人を、自分で「変えられる」、「変えられない」に分類します。

例えば、会社のいやな上司や電車の遅延、といった状況は自分では変えることができないので、変えられないという事実を受け止めつつ、現実的な選択肢を探していきます。

さらにその中で、重要かそうでないかも考え、重要でない場合には放っておいたり、関わらないでいるという対応をとることもできます。

 

 

怒りをうまくコントロールすることで、怒りの感情で後悔しなくなり、大事なもの・大事なことを失わなくなり、人間関係の悩みが少なくなるという効果が期待できます。

どんな対応をするかは、「自分と周囲の人にとって長期的に見て、健康的で幸せであるためにどうすべきか」を考えるとよい、ということでした。