字を見るという話

今回は会社の人事部で採用を担当している患者さんのKさんから聴いた話で、私の仕事でも重要だと思ったことを書きます。

新たな人材を採用する場合、まず応募者に履歴書と職務経歴書を提出していただくそうです。

その際、履歴書と職務経歴書をPCで作成するか、手書きで作成するか。

 

 

会社としてはどちらでもよいことにしているようですが、最近はほとんどがPCだそうです。

PCの方が、使いまわしができますし、応募者としては楽です。

Kさんは

「個人的には応募者がどんな字を書くかを見れば、人柄や性格がなんとなく分かる」

と手書きの方がいいとおっしゃっていますが、手書きは少ないそうです。

また、書類を送る際、郵送であれば住所や名前を記入するので、そこに書かれている字を見ることができますが、送るのもメールだと応募者の字を見る機会が全くないともおっしゃっていました。

確かに最近は字を書く機会が減っていると思います。

 

 

近年では医療業界でも、「Web問診」という言葉が出てきています。

「Web問診」は、紙の問診票ではなく、タブレットやスマートフォンなどの端末を用いて、オンライン上で問診を行う医療ITサービスの1つです。

引用サイト:Medios Web問診とは?メリット・デメリットなど、導入に際して気になることを解説!
https://medios.guide/column/webmonshin

メリットとして待ち時間短縮、正確性の向上、データ管理の効率化などがあげられています。

「Web問診」は患者さんが字を書くことはなく、タブレットやスマートフォンで入力する形になっています。

 

 

では、鍼灸マッサージの問診表はどうか。

私は手書きだからこそ読み取れる情報もあると考えています。

例えば、

・枠からはみ出していないか?

・丁寧に書かれているか?

・殴り書きのような感じか?

・角張った字か?

・震えているような字か?

・細かくぎっしり書かれているか?

など、字を見るだけで神経質な感じか、あまり話をしたくないのか、字を書くのが大変な状態なのか、大変な病気を抱えているかもしれない、といったことが推測できることがあります。

 

 

10年以上前の話ですが、以前に勤務していた治療院で実際に経験したケースで、問診表の枠から大きくはみ出して名前や電話番号を書いている方がいらっしゃいました。

主訴は「お尻の痛み」でしたが、いやなことがあって薬を飲み過ぎて倒れてぶつけたということでした。

他にぶつけたところはないか?と確認したら、分からないとのことで今はお尻が痛いようでした。

字がうまく書けないことから、小脳失調を疑うテストをしたらうまくできませんでした。

もしかしたら頭をぶつけていて、脳疾患の可能性もあると思って施術は行わずに救急車を呼びました。

これは極端なケースですが、問診表に書いてもらった字が枠から大きくはみ出していたからこそ、注意することができたと考えています。

病院であれば重篤な疾患でもその場で対応できるかもしれませんが、鍼灸マッサージ院では対応ができないので、重篤な疾患かどうか判断する材料は一つでもあった方が助かります。

ということで、今回は字を見るという話を書きました。

字を書く機会が減っているからこそ、字から得られる情報を大切にしたいです。

 

あん摩マッサージ指圧師の資格について

前回の「①無資格者の施術について」の続きで、

ブログ:無資格者の施術について
https://nishigahara4-harikyu.com/blog/treatment-unlicensed-persons

今回は「②あん摩マッサージ指圧師の資格について」についてです。

※ ここでいう無資格とはあん摩マッサージ指圧の資格がないことを指しています。
 マッサージを業とできる国家資格は「あん摩マッサージ指圧師」、「医師」のみです。

「あん摩マッサージ指圧師」の資格を取得するためには、文部科学大臣または厚生労働大臣の指定する学校・養成施設で三年以上勉強して国家試験に合格する必要があります。

「あん摩マッサージ指圧師」の詳細は以下のサイトに詳しく記載されているのでここでは省略します。

参考サイト:東洋鍼灸専門学校
あん摩マッサージ指圧師になるには?
https://www.toyoshinkyu.ac.jp/info/9828/

 

 

ここでは、実際に「あん摩マッサージ指圧師」の資格を取って仕事をしてきた中で、無資格者に比べて有利な点は何かを考えてみます。


・医師の同意があれば医療保険が使える

脳梗塞による麻痺や加齢による筋肉の萎縮による痛みなどのケースにおいて、医師の同意があれば医療保険を使って施術を行うことができます。

上記のような疾患は、症状が改善、緩和するのにある程度の回数が必要ですので、医療保険が使えた方が患者さんも利用しやすいと思います。

 


・施術の領収証が医療費控除の対象となる

「あん摩マッサージ指圧師」による施術は、病院や歯科、薬局にかかった場合と同じように医療費控除の対象となります。

医療費が多くかかっている場合には、医療費控除を行うことで一部の所得控除を受けることができます。

参考サイト:国税庁
医療費控除の対象となる医療費
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1122.htm

 

 


・明らかにあん摩マッサージ指圧の対象でない病気や症状の切り分けがある程度できる

例えばベッドから落ちて腰を痛めた高齢の患者さんが来院した場合、あん摩マッサージ指圧の施術を行うか。

または、強い頭痛・吐き気がある患者さんが来院した場合、吐き気や嘔吐があるか確認したり、発熱の有無を確認したりできるか。

前者は圧迫骨折の疑いが濃厚、後者は髄膜炎の疑いが濃厚で、医療機関に紹介すべき症状です。

もちろん筋肉の緊張による腰痛だと思ったら実は癌がありました、というような見つけるのが難しいケースもたくさんありますが、これは医療機関に紹介すべきという病名や症状は三年間の中で勉強しますので、無資格者よりも施術すべきかの切り分けができます。

このような視点は患者さんにとって何が一番よいかを考えるうで、とても大切なことだと思います。

 


・店の名前や看板、パンプレットにあん摩、マッサージ、指圧という言葉を使用できる

開業する際、あん摩マッサージ指圧師の国家資格をもっていると、お店の名前や看板に「あん摩」、「マッサージ」、「指圧」という名称を使うことができます。

そのため、患者さんが見た時に、何をするところなのかが明確で分かりやすいと思います。

国家資格がないところだと、「リラクゼーション」、「もみほぐし」、「整体」といった資格ではない名称で、何をするのか分かりにくくなります。

 


・資格者限定の勉強会、講習会に参加することができる

どの仕事もそうだと思いますが、国家資格を取って終わりではなくそこからがスタートです。

国家資格を取ったあと、色々な勉強会に参加したり、同業者と施術し合ったりしながら、知識、技術を深めていきます。

あん摩マッサージ指圧師の国家資格をもっていると、資格者限定の勉強会、講習会に参加することができるのは大きなメリットです。

 

 

・病院やクリニックなどの医療施設で働くことができる

病院に勤務している医療従事者で、国家資格を保有していない人はいません。

医師はもちろん、看護師や理学療法士、作業療法士、放射線技師、臨床検査技師など、多くの医療系国家資格があります。

国家資格を持っていることは、ある程度の知識、技術があることの証明になり、あん摩マッサージ指圧師の資格があるから病院やクリニックに勤務することができます。

 


・介護施設で機能訓練指導員として働くことができる

機能訓練指導員は日常生活を営むのに必要な機能の減退を防止するための訓練を担う職種で、通所介護(デイサービス)において、専従で1人以上の配置が必要です。

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師のうち、いずれかの有資格者であることが求められているため、あん摩マッサージ指圧師の資格を保有していれば、介護施設で機能訓練指導員として働くことができます。

引用サイト:Rehab Cloud
デイサービス(通所介護)の人員基準とは|配置要件や最低人数などを解説
https://rehab.cloud/mag/3494/

 

 

以上、2回に分けて「無資格者の施術」と「あん摩マッサージ指圧師の資格」について書きました。

本ブログを読んで、

・施術者なら、無資格で施術するのではなく「あん摩マッサージ指圧師」の資格を取得しよう

・施術を受ける患者さんなら、「あん摩マッサージ指圧師」の資格を持っている施術者の方が安心である

と考えていただくきっかけになれば嬉しいです。

無資格者の施術について

先日いらした患者さん(以下Aさん)から

「友人がリラクゼーションの仕事を始めるみたいで、受けに来てと言われたのですが、大丈夫でしょうか?」

という話を伺いました。

その施設では2週間くらい練習?したら、お客様の施術ができるようです。

「あん摩マッサージ指圧師」の国家資格を取得するには、専門の養成機関に3年間通って国家試験に合格する必要があります。

国家資格を取得したうえで、さらに勉強会に参加したり、同業者同士で練習したり、本を読んだりして研鑽を積んで患者さんの施術を行っています。

以上のような話をAさんにお伝えしたところ、

「やはり人の体に触れるのに、2週間程度で施術ができるのはおかしいですよね」

とおっしゃっていました。

 

 

そこで、以下のテーマについて二回に分けて書いていきます。

①無資格施術について
②あん摩マッサージ指圧師の資格について

今回は「①無資格施術」についてです。

※ ここでいう無資格とはあん摩マッサージ指圧の資格がないことを指しています。
 マッサージを業とできる国家資格は「あん摩マッサージ指圧師」、「医師」のみです。

近年、無資格者の施術による健康被害が増加しています。

◆消費者庁のサイト

法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に
https://ksmk.jp/uploads/579977d086d7bfefcbdf718fc7893aea965f9393.pdf

◆厚生労働省のサイト

無資格者によるあん摩マッサージ指圧業等の防止について
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/061115-1.html

あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師と無資格者との判別について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118517.html


今回の無資格問題ですが、他の業種ではどうなのかを考えてみたいと思います。


例えば調理師。

調理師資格がなくても料理を作ることはできますし、それを家族や友人に提供することもできます。

では、仕事で料理を作る場合はどうか。

きちんとお金をいただいて行う以上、食材の管理や調理場の衛生管理なども欠かせません。

どの食材をどう保存すればよりおいしくなるのか、食中毒を起こさないために保存期間はどのくらいなのかなどの知識が必要です。

調理師免許がなくても、食品衛生責任者の資格を取れば飲食店は開業できますが、ホテルや給食センター、介護施設などでは、調理師資格が必須となっているところが多いようです。

万が一、食中毒などを起こしたら大変な問題になるからです。

参考サイト:株式会社BMLフード・サイエンス 
食道などの厨房を有する飲食業における衛生管理の基礎知識
https://www.bfss.co.jp/media/column/a18

 

 


例えば理容師(美容師)。

理容師資格がなくても、自分の子供の髪を切ったことがある人は多いと思います。

では、資格がなくてそれを仕事にできるか。

理容師法で「理容師の免許を持たないものは理容を業として行うことはできない」と定められているので、仕事でして行うことはできません。(違反すると逮捕されます)

ハサミや剃刀を扱う以上、資格をとるのは当然です。

街の床屋さんで「理容師の資格を持ってないけどやっています」なんて人はいないと思います。

参考サイト:TipsNote 
美容業の開業にはどんな資格・許可が必要?
https://tips-note.com/startup-2020-08-21/

 


例えばクリーニング師。

クリーニング師の資格がなくても、きれいに洗濯してアイロンをかけることはできると思います。

しかし、クリーニング店を開業するためには、クリーニング師を一人以上置くことが法律で義務付けられています。

また、クリーニング業者は、クリーニング業法、 水質汚濁防止法や建築基準法、消防法など業務に関わる法令等のみならず、企業を取り巻く多数の法令や企業倫理を守り、健全な事業活動をすることが求められているそうです。(以下のサイトから引用)

参考サイト:KYOWA CLEANING
国家資格であるクリーニング師とは
https://down-cleaning.jp/news/cleaningmaster/

 


例えば保育士。

保育士の資格がなくても、子どもを育てたことがある人なら、子どもを預かって面倒を見ることはできると思います。

では、なぜ保育士は国家試験なのか。

「保育士は小さな命を預かる大事な職業として、子どもたちを安全に遊ばせ、保護者が安心して子どもを任せられる環境づくりに務めています。それゆえに、保育士は責任ある職業として国家試験を行い、十分な知識を身に付けていることを証明することが必要なのです」(以下のサイトから引用)

参考サイト:たのまな
保育士は何故国家試験なのか
https://www.tanomana.com/smp/freepage_detail.php?cid=0&fid=205#:~:text=%E4%BF%9D%E8%82%B2%E5%A3%AB%E3%81%AF%E5%B0%8F%E3%81%95%E3%81%AA%E5%91%BD,%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%AA%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

保育士も待機児童の増加で無資格問題が取り上げられたことがある業種なので、マッサージと似たような問題があるかもしれません。

 


いくつか他の業種を例に国家資格について書きましたが、あん摩マッサージ指圧師はどうか。

あん摩マッサージ指圧師の資格がなくても、家族や友人が疲れているときに体をもんだり、さすったりしてあげることはできます。

では、資格がなくても仕事にできるか。

家族や友人にちょっとやる分には資格はいらないと思いますが、やはり仕事として行うには事故を起こさないよう知識や技術は必要ですし、あん摩マッサージ指圧を行ってはいけない症状や状態の見極めなども必要です。

そのため、他の業種同様、それを仕事として行う場合には国家資格がある方が望ましいと思うのです。

 

 

さて、今回はマッサージの無資格問題について、他の業種を例にあげながら考えてみました。一見、資格がなくてもできそうですが、仕事として継続して行う場合には、多くの業種で国家資格を必要としています。

施術をする人だけでなく、施術を受ける患者さんにも、仕事としてのマッサージの在り方について考えていただくきっかけになれば幸いです。

 

続きのブログはこちらからご覧下さい。

ブログ:あん摩マッサージ指圧師の資格について
https://nishigahara4-harikyu.com/blog/qualifications-anma-massage-shiatsu-therapists

初めての鍼灸で付き添いの方の見学

今回は、初めて鍼灸やマッサージを受ける場合に安心感を得るために行っている「付き添いの方の見学」について書きます。

初めて鍼灸やマッサージを受ける患者さんは、

・どんなことをするのだろう

・痛くないのかな、熱くないのかな

・鍼や灸をする前に説明してくれるのか

・突然服をめくられたりしないだろうか

など、不安に思っていることも多いと思います。

 

 

当院では、患者さんに付き添いの方がいる場合、一緒にお話しを聴いていただいたり、施術室に入って見学していただくことが可能です。

特に、小・中学生、高校生の患者さんの場合、初めての際には必ず保護者の方も一緒にいらっしゃるようお願いしています。

小・中学生、高校生以外にも、ご夫婦や友人同士など、付き添いの方と一緒にいらっしゃることもあります。

その場合も、付き添いの方に

「施術室に一緒に入りますか?待合室でお待ちいただきますか?」

と伺って、患者さんと相談して決めていただくようにしています。

 

 

私は鍼灸マッサージで施術効果を高める前提として、

「患者さんの安心感」

というのがとても大事だと考えています。

例えば、病院で手術を受ける場合や介護を受ける場合、不動産や車など大きなお金が動くような場合には付き添いの方がいると相談もできますし、とても安心だと思います。

そのため、付き添いの方に一緒に施術室に入っていただくことで、付き添いの方にも施術の説明や施術そのものを見ていただくようにし、患者さんの安心感を高めるようにしています。

施術をしながら、患者さんが

「鍼、全然痛くないよ」

「お灸が温かくて気持ちいい」

などと、付き添いの方に声をかけることで、患者さんおよび付き添いの方の安心感が高まります。

もちろんそれが施術にもよい効果を及ぼします。

時には、付き添いの方が「今度私も受けてみようかな」と思っていただけたら幸いです(笑)

ということで、一人でいらっしゃるのが不安な方は、ぜひお付き添いの方と一緒にご来院下さい。

 

 

施術中の電話応対の出来事

先日、定期的にいらして下さる40代の女性患者さん(以下Aさん)に言われた言葉が嬉しかったので紹介いたします。

Aさんの施術中、当院の電話が鳴りました。

この時間帯は妻や受付スタッフがおらず私一人でしたので、

「ちょっと失礼します」

とお断りして私が電話に出ました。

「はい、西ヶ原四丁目治療院です」

予約の電話だったので、予約を取ってすぐに施術に戻りました。

 

 

「失礼いたしました」

とAさんにお伝えしたら、

『先生は電話でも声が明るくて元気だから安心しますね。
私が電話で予約した時も、今電話して大丈夫かな、と思いながら電話したのですが、
明るい感じだったので、安心して話すことができました』

というお言葉を頂戴いたしました。

施術を中断してしまったにも関わらず、本当にありがたいことです。

施術中に電話が鳴ると、焦ってしまったり、ちょっとイライラしてしまったりしがちですが、それはこちらの勝手な都合です。

 

 

電話して下さった患者さんには何の関係もないことなので、焦る気持ちを抑えながらできるだけ元気に明るく応対するように意識しています。

特に初めてお電話をする患者さんは、不安な気持ちで電話をしていることもありますので、こちらの焦りやイライラが伝わると、「この治療院で大丈夫かな?」と思われてしまうかもしれません。

それと同時に、施術を中断してお待たせしている患者さんにも私の電話応対が聴かれているということも意識しなければいけません。

私がイライラして電話で話していると、それが施術を受けている患者さんを不安にさせ、その後の施術にも影響してしまう可能性があるからです。

Aさんのちょっとした一言から電話応対の大切さを改めて実感した出来事でした。