どの手法でやるかではなく何ができるかを考える

前回のブログで紹介した「匠の技法に学ぶ実践・家族面接」。

家族療法の専門家の3人が同一事例を異なる手法でカウンセリングを行う内容だったのですが、

「どの手法が優れている」

というわけではなく、

「どの手法を用いてもクライアントを変化させるきっかけを与えることができる」

と示していたのは興味深かったです。

私は、これは鍼灸マッサージでも同じことが言えると考えています。

鍼灸にもマッサージにも様々な流派や考え方があります。

中にはお互いを批判し合っている流派もあったりするそうです(笑)

経絡治療
現代鍼灸
中医学
〇〇一本鍼治療
〇〇太極療法
〇〇式マッサージ
〇〇指圧

どれが優れているわけでもなく、どの手法もある程度の効果を出しているからこそ、今も残っているのだと思います。

私は、大事なのは「患者さんのために何ができるかを考えること」だと思っています。

異なる流派のやり方でも、

・こんな見方はやったことがないけれど、〇〇さんにやってみるとよいかもしれない

・これは患者さんに少ない負担の施術だから取り入れてみよう

・普段この場所は見ないけど、〇〇疾患のときには有用だから、試してみよう

というように、勉強になったり有用な考え方もあると思います。

私自身、流派にこだわりは全くありません。

様々な勉強会や本で学んだことを自分なりにアレンジして、患者さんに合った治療方法を模索していくやり方をしています。

これからも、患者さんのために何ができるかを常に考えていきたいと思います。

どの手法を用いてもクライアントを変化させるきっかけを与えることができる

匠の技法に学ぶ実践・家族面接(日本評論社)
東 豊 , 水谷 久康, 若島 孔文 , 長谷川 啓三

家族療法の専門家の3人が同一事例を構造的アプローチ、ソリューションフォーカストアプローチ、MRIアプローチとそれぞれの得意な手法でカウンセリングを行い、さらにあとから合同ディスカッションを行うことで、どんな展開を想定していたのか、どんな意図でその質問をしたのか、を余すことなく語った一冊です。

本書は非常に楽しめました。

どの手法が優れているというわけではなく、

「どの手法を用いてもクライアントを変化させるきっかけを与えることができる」

と示していたのは興味深かったです。

ディスカッションの場面も、他のセラピストが専門家の視点での疑問点を投げかけているところが新鮮でした。

特に、なぜその質問をしたのか、その後にどんな展開を期待していのか、といった話は、通常のカウンセリングではなかなか聞くことができないので、勉強になりました。

また、面接の記録映像を日本評論社のHPから見ることができるのもありがたかったです。

文章で読んだあと、改めて映像を見ることで、間の取り方やノンバーバルコミュニケーションを学ぶことができました。

専門家の先生方は大変だと思いますが、また本書のような同一事例を異なる手法でアプローチする取り組みを読んでみたいです。

今回の

「どの手法を用いてもクライアントを変化させるきっかけを与えることができる」

という話は鍼灸マッサージでも同じだと思うので、次回はそのことを書きます。

型稽古の意味

野口 晴胤 著「平均化訓練」からのご紹介です。

本書の中で描かれている「型稽古の意味」という話が印象に残りました。

武術や茶道、華道などを覚える場合、まずは形を学ぶということで型稽古から始まります。

しかしながら、実際の武術では相手がどう動くのか分からないため、型通りに稽古しても意味がないのでは?と考えてしまいます。

本書では、型稽古の意味は、無意識の運動の癖に気付き、それをそぎ落とすための訓練であると述べています。

つまり、実戦においては、動きに隙がなく全身の筋肉がひとまとまりに連動して動くことが必要で、そのための体を作りあげることが型稽古の目的ということです。

これは、武術だけでなく、野球やテニスの素振り、ボクサーのシャドーボクシング、ピアノの練習など、様々な分野に言えることだと思います。

鍼灸マッサージの手技も同じで、いかに全身を連動させて無意識に癖をなくして動かすか。

大雑把な動きではなく、小さな動きをコツコツと繰り返す中で学んできました。

ただ、これは奥が深く、そう簡単に身に付くものではないので、やり続ける必要があると思います。

本書を読んで、改めて「型稽古の意味」が分かりました。

渡辺明前棋聖の観察力

先日、将棋の第91期棋聖戦5番勝負が行われ、挑戦者の藤井聡太七段が、タイトルを保持していた渡辺明前棋聖を破って、史上最年少タイトル記録を更新しました。

今回取り上げるのは、敗れた渡辺明前棋聖のブログの言葉です。

#2020/7/17 棋聖戦第4局のブログの一部を抜粋
 https://blog.goo.ne.jp/kishi-akira

「番勝負(※)をやると、手付き、仕草、息遣いなどで相手が形勢をどう判断しているか、なんとなく分かるようになりますが、自信ありという感じで△86桂を指されて、そこでこっちも手が止まったので、この将棋は負けたなと覚悟しました」

※ 番勝負とは、主として、囲碁の棋戦や将棋の棋戦などにおいて、同じ2名の対局者が複数回の対局を行い、勝数が多い方を優勝者等とする仕組みを指す言葉である。(Wikipediaから抜粋)

この中の「手付き、仕草、息遣いなどで相手が形勢をどう判断しているか、なんとなく分かるようになる」という言葉が印象的でした。

対局中、将棋の戦略や変化の仕方を考えているだけでなく、相手の手付き、仕草、息遣いなど、相手がどんなふうに考えて将棋を指しているのかを含めて観察しているというところが共感できました。

はり・きゅう・マッサージの施術においても、施術前には必ず患者さんの状態を観察しますが、私は施術中も患者さんの状態の変化を観察するようにしています。

体の動かし方、呼吸の深さ、緊張具合、話し方、声の張りなどを観察しながら、患者さんがどんなふうに変化しているのか、できる限りの情報を得ようと考えているのです。

それで、なんとなく、

・患者さんの緊張がゆるんで声に張りが出てきたからうまく施術できたかな

・話し方が緊張したままだったから、施術がうまくいかなかったかも

・呼吸が深くなってきたから、腰の緊張がゆるんで動かしやすくなったと思う

といったことを判断しています。

ただ、正直に言って精度はまだまだです(笑)

自分ではうまく施術できたと思っても、全然変化していなかったり、逆にうまく施術できなかったなと思ったときでも、すごく改善できていたりといったこともあります。

このあたりの精度を着実に上げていければ、施術中でも、「これは効果が少なそうだったから次はこれをやってみよう」というように、臨機応変にやり方を変えていくことができ、施術後の効果に繋がっていくと考えています。

長年様々なタイトルを保持し続け現役最強と言われている渡辺明前棋聖のブログを読んで、改めて対局中(施術中)の観察が重要であることを実感しました。

平均化訓練_偏り運動を平均化する

平均化訓練(春秋社)
野口 晴胤

私たちが体を動かすとき、習慣やクセで無意識に筋肉が動きますが、その中には働きすぎる筋肉とほとんど働かない筋肉があり、偏った使い方をしており、それを本書では偏り運動と読んでいます。

偏り運動は自分がいつの間にか学習した、弱い筋肉や動かしにくい場所を避ける楽な動き方で、各自の癖や習慣として定着しています。

それに気が付いて、働いていない筋肉を意識的に使うことで、働いていない部分は力が入り、過剰に働いている部分は緩んでいき、偏り運動が平均化していくという発想は説得力がありました。

とはいえ、自分の中の使っていない筋肉に気が付き、それをどうやって使っていくのか、実際にやってみないと分かりません。

そこで、後日、平均化訓練の講座に参加して体験してみようと思います。

講座の感想は改めてブログで報告させていただきます。

偏り運動という考え方を、患者さんの予防やセルフケアの一環として、当院の施術にも取り入れていけたらいいなと考えています。