薬剤性軽度認知障害について

産経新聞に掲載されていた記事からのご紹介です。

「 高齢者に処方の睡眠・抗不安薬による軽度認知障害に警鐘 」という記事です。(2024/8/22 朝刊)

認知症の一歩手前である軽度認知障害(MCI)の原因として、アルツハイマー病や前頭側頭葉変性症、レビー小体病、血管性疾患、脳損傷、パーキンソン病などがありますが、高齢者がよく使う睡眠薬や抗不安薬でもMCIになり得るそうです。

本記事ではそれを「薬剤性軽度認知障害」として紹介していました。

 

 

物忘れやふらつき、怒りっぽさ、幻覚などの症状を訴えて受診してきた高齢者で、抗不安薬や睡眠薬をやめると症状が消えて、認知機能が改善した事例が少なくないそうです。

当院に腰や膝の痛みでいらしている患者さんの中にも、ふらつきや物忘れが増えたという患者さんがいて、

『最近何か変わったことはなかったですか?』

と伺うと、

「寝つきが悪くてなかなか眠れないので、睡眠薬を処方してもらいました」

という話がありました。

そこで、

『もしかしたら処方された睡眠薬が合わないのかもしれないので、お医者さんに相談してみた方がいいかもしれません』

とお伝えしました。

後日、お医者さんに相談して薬の処方を変えてもらったら、ふらつきや物忘れが落ち着いたそうです。

 

 

直近で新たに薬が増えたような場合には、他の薬との兼ね合いや、患者さんにその薬が合わない可能性もあるので、医師や薬剤師に相談してみることも大切だと思ったケースでした。

本記事でも、「家族が物忘れを訴え軽度認知障害を疑った場合でも、アルツハイマー病かなと思う前に、まずは薬の影響を見逃さないことが重要だ」という医師の話が書かれていました。

注意すべき薬は多岐にわたるそうで、日本老年医学会が作成した「多すぎる薬と副作用」というパンフレットが紹介されていたので、以下にサイトのリンクを付けました。


参考サイト:日本老年医学会 「多すぎる薬と副作用」(一般向けパンフレット)
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/20161117_01.html


服用したお薬がきっかけで軽度認知障害が発生しているかもしれない、と考える必要性を実感した内容でした。

 

 

からだをなおせるのは自分だけ

からだをなおせるのは自分だけ こころとからだを整える 伊豆ふるさと村 秋山先生の言葉
山田 剛 (著), 草野 かおる (イラスト), 山西 茂 (監修)


「食べものが血液をつくり、血液がからだをつくる」

著者が秋山先生から教えてもらったことを、実体験を交えながら説明していて説得力がありました。

 

 

以下、本書の内容を抜粋しながら、私が思ったことを記載しました。

・食べることは、生きることであると同時に、死に近づくこと(命を縮めること)
食べることで、からだのほぼ全ての器官や血液、細胞の稼動が迫られる。食べることはエネルギーを生み出す声明の活動に必要不可欠であると同時に、大きなエネルギーを使っている。栄養分が行き渡るのと引き換えに、からだの臓器や器官、血液や細胞は疲労し、消耗している

→これは本当にその通りだと思います。皆食べることは意識しますが、その結果、内臓や細胞が疲労していることは考えません。飲酒や喫煙とともに、食べすぎも病気の大きな要因になると思います。

 

 

・よく噛んで食べることで、消化・吸収、分解、解毒、排出などのエネルギーを抑え、消化に関わる器官の負担は大きく減少する

→食養で病気を治そうとする場合には100回以上噛む、と記載されていましたが、さすがにそれは難しいので、10回、20回、30回と少しずつでも増やしていくことで、消化器官の負担を抑えられるようにしたいと思いました。

 

 

・現代は、過去のどの時代と比べても食べすぎ。交通機関の発達、仕事の機械化、家事の省力化などが進み、からだを動かすことが大きく減り、エネルギーの消費が著しく減少しているのに、相対的に過剰摂取になっている

→江戸時代は腹八分といわれており、現代は腹半分、腹二~三分で十分と書かれていますが、空腹だとかえって間食してしまいそうなので、まずは腹八分。できるところからやっていこうと思います。

 

 

・動物は「安静・保湿・断食」でからだを癒し治す
・健康、長命の鍵は「小食・保温・安静」

→食べすぎないことにより、体の機能を回復させるのは、野生の動物を見ているとよく分かります。

・日本人が昔から食べてきたものを食べる

→主食は玄米、梅干、漬物、味噌汁。
副食は以下のものから旬のものを選び、一汁一菜~一汁三菜。

緑野菜類(ほうれん草・小松菜など)、根菜類(ゴボウ、ニンジン、レンコン、里芋など)、海藻類(昆布、わかめ、ひじき、のりなど)、きのこと豆類(しいたけ、大豆、そら豆など)小魚介類(じゃこ、きびなご、いわし、あじなど)

 

 

本書では、主に食養のことに触れられていましたが、食べもの以外にも飲みものや睡眠のことも知りたかったです。

また、都会で仕事をしていると食事の時間も不規則になりやすく、伊豆のような生活をすることも難しいです。

誰もが田舎暮らしができるわけではないので、どこまでやってくのか匙加減も大事だと思います。

よく噛んで食べる、腹八分で食べ過ぎない、まずはこれをやっていきたいと思いました。

 


からだをなおせるのは自分だけ こころとからだを整える 伊豆ふるさと村 秋山先生の言葉 (TOKYO NEWS BOOKS)

脊椎圧迫骨折の患者さんの声掛け

先日、脊椎の圧迫骨折(※)の病歴がある90代の患者さんがお見えになりました。

※参考サイト:一般社団法人日本骨折治療学会:骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折
https://www.jsfr.jp/ippan/condition/ip02.html

 

 

イスからの立ち上がり、ががむとき、ベッドに寝るとき、ベッドから起きるときなど、急に動くと痛みが発生し、しばらく痛い状態が続くのですが、少し休むと痛みが落ち着いてきます。

せっかちな患者さんですと、急に動こうとしてしまうのでとても大変です。

そこで、こちらの患者さんに痛みが出にくくなる方法を提案してみました。

 

 

◆起き上がったり、立ち上がるときに、「よっこいしょ」と声をかけながら動いてみましょう

 

ご年配の方になると、何か動作をするたびに、「よっこいしょ」、「よっこらしょ」、「どっこいしょ」とつい言ってしまうことがあると思います。

無意識にやっていることかもしれませんが、こうして言葉に出すことで、「これから動くよ」という心構えができるとともに、お腹に力が入りやすくなるようです。

参考サイト:「どっこいしょ」という口癖にまつわる噂についての文献的考察
http://www.ronenbyo.or.jp/hospital/tiikiriha/rehacolumn/rehacolumn_42.pdf

 

当院にいらしている患者さんにも実際にやってもらったところ、完全に痛みがなくなるわけではありませんが、かなり効果がありました。

加齢によって脊椎が変形してしまっている状態そのものを元に戻すことは難しいですが、ちょっとした声かけで痛みが少しでも楽になるのなら有効活用していきたいです。

 

 

Youtubeのストレッチ動画

今回は、Youtubeのストレッチ動画の話です。

当院にいらっしゃる患者さんの中には、Youtubeのストレッチの動画を見ながら同じようにやってみて体を痛めてしまった方も何人かいらっしゃいます。

最近はストレッチや体操など、動画で好きな時に見られるようになったのでとても便利です。

 

 

ただ、気を付けなければいけないこともあります。

それは

「そのストレッチまたは体操が、あなたの今の状態に合っているか」

ということです。

例えば、肩甲骨を動かすストレッチを動画出演者の真似をしながら何度かやって、痛みが出た患者さんがいらっしゃいました。

本来は痛みが出るほどやらない方がよいのですが、頑張ってやれば肩甲骨がほぐれて楽になるといった間違った考え方をしてしまい、かえって肩甲骨の周囲の筋肉を痛めてしまいました。

 

 

同じようにやろうとしても、体の柔軟性や動かしやすさは人それぞれです。

少なくとも痛みが出ているのを無理やり動かそうとするのはよくありません。

また、最初は痛くなくても、見様見真似で何度も筋肉に負担がかかる動きを繰り返して痛めてしまうこともあります。

ストレッチは、回数が多くなくてもゆっくり丁寧にやれば十分に効果があるのですが、動画ではそこまでは説明されませんし、動画を見ている人の年齢や体力、柔軟性、基礎疾患(※)の違いなども考慮されていません。

※ 厚生労働省:「基礎疾患を有する方」について
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001089705.pdf

 

 

自分自身でストレッチをしてセルフケアをしようという試みは素晴らしいことです。

もし動画を見ながらストレッチをやる場合には

・痛みが出たらそれ以上動かさない

・動画では早く動かしていてもきついと思ったらゆっくりやる

・最初から何度もやらず、まずは少ない回数からやってみる

・基礎疾患がある場合には医療従事者に相談してからやる

といったことに注意して、自分のペースでやるのがよいと思います。

 

高齢者は蚊に刺されない?

先日、90代の女性患者さんのお宅へ訪問施術に伺った時の話です。

約束の時間に伺うと、お部屋の中に蚊がいました。

私はとても気になったので、

『お部屋の中に蚊がいますね』

と声をかけました。できれば退治したかったのです。

 

 

すると、患者さんは

「蚊がいても全然気にならないわ。私はここ数年、全く蚊に刺されなくなったのよ。私の血はそんなにまずいのかしら?」

とおっしゃいました。

『そうですね』とお答えするわけにもいかないので、

『熟成された血の味が分からないのでしょう』

と答えたら、「そうかしらね」と、にっこりされていました。

 

 

気になったのであとで調べてみたところ、高齢になると免疫の仕組みで蚊に刺されても皮膚反応が現れなくなり、痒みや腫れを感じなくなるようです。(個人差はあるようですが)

参考サイト:日経Gooday
「年寄りは蚊に刺されてもかゆくない」は本当だった
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/16/062300031/071900007/

そのため、この患者さんは蚊に刺されないのではなく、蚊に刺されても痒くならないのだと分かりました。

ただ、40代の私は痒くなって大変なので、できれば蚊がいない環境で施術をしたいと思いました。