鍼の響きが好きな患者さん

今回は、鍼の響きが好きな患者さんと話したことを書きます。

この患者さん(以下Aさん)とは開業当初からの付き合いなのですが、最初にいらした時から

「鍼の響きが好きなので、できれば鍼を響かせてほしいです」

と言われました。

 

 

鍼の響きとは、鍼を体表部に刺入したときに感じる、鈍く重い感じやズーンとした感じのことです。

参考ブログ:鍼の響きについて
https://nishigahara4-harikyu.com/blog/sound-acupuncture/

 

Aさんには私の鍼が合っていたようで、その後もお体のメンテナンスで来院して下さっています。

先日Aさんがいらした時に、

「やさしい鍼、痛くない鍼とアピールするところはたくさんありますが、響く鍼、ズシンくる鍼をやります、とアピールするところは見たことないですよね」

と話していました。

 

 

この話を聴いて、なるほどと思いました。

例えば飲食店では

「激辛ラーメンやってます!」

と激辛アピールをすると、辛い物好きの人が集まりますし、他と差別化できます。

または

「当店は特盛メニューがあって、残したら倍の料金をいただきます」

みたいなものも、大食いの人が集まる差別化です。

もしくは

「マグロ料理に特化しています」

というお店だとマグロ好きの方が集まります。

 

 


では、鍼灸ではどんな専門があるのか。

不妊治療専門、美容鍼灸専門、スポーツ疾患専門

など、症状や分野での専門はありますが、鍼の打ち方や響きを売りにしているところはないかもしれません。

「鍼」というと、「痛そう」、「こわい」といったイメージがあるため、そのイメージを和らげるために「やさしい鍼」、「痛くない鍼」といったアピールをするところが多いのだと思います。

当院にも「鍼の響きが好き!」という患者さんが何人かいらっしゃいますので、「響かせる鍼をします」というアピールも一定の需要があるかもしれません。

鍼灸院や整骨院が増えて飽和状態になっている中、他院との差別化という意味で、考えさせられた話でした。

 

マッサージだけの患者さんもいますか?

患者さんから

「はり・きゅうをやらずに、マッサージだけの患者さんもいますか?」

ということをよく聞かれます。

そこで今回は当院にいらしている患者さんがどんな施術を受けることが多いのかを書きます。

 

 

当院の施術を大きく分けると、「マッサージ」、「はり」、「きゅう」の3種類があります。
(マッサージは厳密には「あん摩マッサージ指圧」ですが、分かりやすくするため「マッサージ」とします)

この3種類を組み合わせて以下の4つのパターンに分類しました。

「マッサージのみ」、「はり・マッサージ」、「きゅう・マッサージ」、「はり・きゅう・マッサージ」

※ 「はり」「きゅう」いずれかのみというケースは約5年間で2例だけですので、分類からは除外しました。マッサージはくすぐったいから苦手、鍼だけでやってほしい、というケースでした。

2024年4月~2024年9月の半年間で、当院にいらした患者さんがどんな施術を受けたのかまとめました。

「マッサージのみ」        :10.49%
「はり・マッサージ」     :3.24%
「きゅう・マッサージ」    :6.94%
「はり・きゅう・マッサージ」 :79.32%

「マッサージのみ」の患者さんは約10%で、「はり・きゅう・マッサージ」を全て併用する患者さんが約80%でした。

多くの患者さんがはり・きゅう・マッサージを併用していました。

ただ、現在は「はり・きゅう・マッサージ」をやっている患者さんでも、最初は「マッサージのみ」というケースもありました。

 

 

何度か施術をする中で、

・患者さんから、はり・きゅうも試してみたいと言われた

・症状がなかなか改善しないため、私からはり・きゅうの施術を提案した

というケースもあります。

 

もちろん初めていらして、「はり・きゅう」をやってほしいというケースも多いです。

このケースは

・以前から「はり・きゅう」をやったことがある

・家族や友人、知人から「はり・きゅう」をすすめられた

・整形外科や整骨院に通っているが症状が改善しないため、「はり・きゅう」を試したい

といったパターンが多いです。

 

 

今回は、患者さんが当院でどんな施術を受けているのかをまとめました。

「はり・きゅう・マッサージ」を併用している患者さんが多いですが、「マッサージのみ」という患者さんも一割程度いらっしゃいます。

初めてだけど「はり・きゅう」は恐いから「マッサージのみ」でやってみたい、ということでももちろん大丈夫です。

お気軽にご相談下さると嬉しいです。

 

針灸臨床ノート 針灸治療に伴うムード

「針灸臨床ノート第3集(代田文誌 著)」に書かれていた「針灸治療に伴うムード」の内容が興味深かったので紹介します。
(「はり」という漢字について、今は「鍼」と書くことが多いですが、書籍は「針」となっていたので、書籍名は「針」という漢字のままにしています)

 

第3集の210ページ~211ページの記載を以下に抜粋します。

まずは、一人の医師が語ったという言葉です。

「われわれの治療の際には、それの終わったあとに、すぐに気分がよくなったといってよろこぶ人などは、ほとんど無いといってよい。ところが、針灸治療を行うところをそばで見ていると、治療がすんだあとに患者さんが、明るいなごやかな顔になって、たいへん気分がよくなったといって、帰ってゆくことが多い。針灸治療にはそうした即効的な効果があることは確かだが、そればかりでなく、針灸治療の際の治療室の空気に、そうした特有のムードがただよっているのですね」

 

 

それについて、代田先生が書かれたことです。

「診察し、処置し、処方を書き、投薬をするといった医師たちの治療とはちがって、針灸の治療には治者と被治者とのあいだに、心の交流があるのである。患者の訴えるいちいちの症状の対して、それに相応する治療をおこなう。うつ針の一本一本に心がこもる。すえる灸の一つ一つに心がこもる。すみやかに病苦が除かれるようにとの、祈りの心がこめられる。こうした治療行為を通して、心がふれあう。まごごろの触れあいによって、一種の融和した雰囲気が生じ、患者の心が安らぎ、明るい気分になる。針灸の治療行為には、一種のムードを伴い、人の心を明るくし、なごやかにするようなムードをかもしだす」

 

 

この話はとても共感できる内容でした。

鍼灸治療というのは、鍼灸そのものの効果だけでなく、鍼によって伝わる響きや、灸よって伝わる温かさ、心地よさのようなものに加えて、患者さんと施術者の触れ合いがあり、会話があり、リズムがあり、それら全部が心理的な気分に影響を与えて、治療室の雰囲気を作っているのだと思います。

もちろん鍼灸だけでなくマッサージにも同じ要素がありますが、直接肌に触れて行う針灸の方がより独特のムードというか雰囲気が出て、それが癒しや心理的安定などにもつながりやすいかもしれません。

 

 

患者さんに安心感や期待感、心地よさや安らぎを感じてもらえた方が、より症状が改善しやすいと考えています。

そうした鍼灸マッサージ治療ができるよう心掛けていきたいです。

 


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当院の患者さんの年齢層

何人かの患者さんから

「患者さんは高齢の方が多いのですか?」

と聞かれたことがありますので、今回は当院の患者さんの年齢層の話をいたします。

結論から申し上げますと、当院で一番多いのは30代の患者さんです。

2019年6月7日に開業してから2024年9月30日までの約5年間のデータを以下のグラフにまとめました。

 


20代、30代、40代で約60%、50代、60代は約25%を占めていますので、当院にいらっしゃる方の85%は20代~60代の患者さんです。

では、なぜ高齢の方が多いと思っているのか。

それは、おそらく他の業態と混ざって考えているのだと思います。

保険診療が中心の整形外科や整骨院は高齢者が多いです。

私は整形外科に3年半勤務していましたが、リハビリ室にいらっしゃるのは70代、80代の患者さんが多く、週に2、3回来ている方もいました。

保険診療でマッサージや電気治療、牽引などを行う場合には、1回の料金も200円~500円くらいと安い金額になります。
(もちろん負担割合によっても変わりますし、医師の診察や注射、薬の処方などがあればもっと高くなります)

実際に人が施術する時間は10分~15分程度で、電気や牽引など、機械を使っている時間が長いです。

 

 

一方、自費の施術が中心のはり・きゅう・マッサージは、働いている方や育児・介護などをしている方が多くいらっしゃいます。

来院頻度は、2週間に1回か、月に1回いらっしゃる方が多いです。

自費の場合には1回5000円~7000円くらいかかるところが多いと思います。

電気などの機械を使うところもあるかもしれませんが、30分~60分くらい時間をかけてじっくり施術をするところの方が多いと思います。

はり・きゅう・マッサージというと、高齢の患者さんが多いイメージがありますが、実際には働き盛りの世代の患者さんが多く来院しているのです。

私自身もシステムエンジニアをしていた20代の頃から頭痛や首、肩のコリがつらくて、はり・きゅう・マッサージを受けていました。

 

 

20代、30代の方でも、

・コリや痛みなど、つらいところがあるけれども、どこに行ったらよいか分からない

・整形外科や整骨院に行って、電気やマッサージを試したが、あまり改善しない

・ずっと薬を飲み続けているが、だんだん薬が効かなくなってきたり、副作用が出て困っている

といった方は、一度近所のはり・きゅう・マッサージ院を検討してみてはいかがでしょうか?

 

鍼の響きについて

今回は鍼をした時に患者さんが感じる響き(ひびき)について、私の考えを書いてみたいと思います。

鍼を体表部に刺入すると、鈍く重い感じやズーンとした感じが出ることがあります。

「針灸臨床ノート第3集(代田文誌 著)」でもこのことに触れていて、この現象を鍼のひびき、または「鍼響」とも言うそうです。

 

 

鍼を受ける患者さんの中には、この鍼のひびきが好きな方もいらっしゃれば、苦手だという方もいらっしゃいます。

「鍼をひびかせた方がよいか?」というのは同業者の中でも意見が分かれるところだと思います。

鍼がひびいた方が効くか、ひびかないと効かないか、となるとなんとも言えません。

針灸臨床ノート第3集では、以下の書かれていました。

「生理学的な立場から検討するならば、ひびかぬ鍼でも効くし、ひびく鍼でも効くわけだ。どちらも人体には刺激として作用するからである。人間の大脳で感覚できないような刺激であっても、間脳や視床下部の生命中枢では、ちゃんと生体への刺激として感受し、生体反応をおこすにちがいない」

 

 

私が今まで治療を行ってきた経験では、

・鍼のひびきが好きな人には、ひびかせた方がよく効く

・鍼のひびきが苦手な人には、ひびかせない方がよい

ということです。

鍼のひびきが好きな人は、ひびきを気持ちよく感じることで、例えば腰の刺激が足の指先までひびくような場合、「足先までジーンとひびいて効いてる気がします」などとおっしゃることもあります。

一方、鍼のひびきが苦手な人にひびかせると、それを「不快な痛み」として認識してしまい、かえって緊張します。

一度「不快な痛み」が起こると、次に鍼をしようとした時にも無意識に体に力が入って身構えてしまい、逆効果になってしまいます。

そのため、鍼のひびきが苦手な人には、できるだけひびかせない方がよいと考えています。

 

 

ちなみに、鍼のひびきが好きな人の方が鍼治療の効果が出やすいとも感じています。

当院では問診の際に「今まで鍼灸を受けたことがあるか?」を必ず聴いており、受けたことがある場合には「鍼灸を受けた結果、どう感じたか」を聴くようにしています。

鍼のひびきを「心地よく感じる」、「効いている気がする」とおっしゃる患者さんには患者さんの反応を診ながら少しずつひびかせるようにします。

逆に「ズーンとくるのが痛かった」、「びりびりして気持ち悪かった」とおっしゃる患者さんにはひびかせないように注意するか、初回は鍼灸をやらないことも考えます。

鍼灸を受けた経験を聴くことで、当院でどのように鍼灸をやっていくかの判断材料になるのです。

とはいえ、鍼灸の施術者の力量や患者さんとの相性、接し方の問題もあるので、以前に鍼を受けたときに痛かったとおっしゃっていた患者さんでも、当院で鍼をした場合には痛みはなくて施術後は楽になった、とおっしゃる方もいらっしゃいます。

もちろん高齢者や小児にやる場合には、鍼の刺激量に注意し、強いひびきが出ないよう気を付けながら、かつ患者さんの反応を診ながら施術するようにしています。

今回は鍼のひびきのことについて書きましたが、結局鍼をひびかせた方がよいかどうかは患者さんによると考えていますので、患者さんの過去の経験や、鍼治療をした時の反応をきちんと観察したうえで、ひびかせるかどうか、ひびきをどれだけ出すかどうかを考えながら施術していきます。