死を前にした人にあなたは何ができますか

死を前にした人にあなたは何ができますか?(医学書院)
小澤竹俊

 

誠実に看取りと向き合ってきた在宅医がたどりついた、穏やかに看取るための方法をまとめた一冊です。

私が相手を完全に理解することはできなくても、相手が「自分の理解者だ」と思う可能性はあり、そのために相手の苦しみを聴くことが大事という考え方は共感できました。

 

医者

 

私は医療従事者ですが、相手の話を聴くとき、いつから具合が悪いのか、痛みはないのかといった、自分が知りたいことだけに注意が向いてしまうことはよくあります。

本当に相手が伝えたい言葉に耳を傾けるとともに、言葉だけでなく、表情などの非言語的なメッセージにも配慮して聴くことの重要性が理解できました。

 

以下、特に勉強になったことを抜粋しました。

・現場で援助的コミュニケーションを実践して良い聴き手になっているか否かを知るヒントに、「そうなんです」という言葉があり、これが出てきたら良い聴き手になっている証拠。

・沈黙が長いとき、相手の思考の流れを止めずに話を伺う方法として、「今は、どんなことを考えていましたか?」と聴くのがよい。

・苦しみは希望と現実の開きであり、答えることができる苦しみとそうでない苦しみがある。答えることができない苦しみは、どれほど医学や科学が進歩しても残り続けるので、その中でも穏やかになれる可能性を模索していくことが重要。


死を前にした人に あなたは何ができますか?

医者の9割はうつを治せない

医者の9割はうつを治せない(祥伝社)
千村晃

うつに関して、ただ薬を処方して規則正しい生活をしましょう、といったような紋切り型の対応がいかに正しくないかが具体的な根拠をあげて説明されている良書です。

 

身体の病気の場合、病名を診断することが治療につながるため診断は重要ですが、心の病の場合は病名を知ることより、症状を引きおこした原因を知ることが大切で、それには緻密な診察が必要あるという著者の意見も納得できました。

 

診察と検査を行い投薬をすることだけが医師の役割ではなく、病でない初期の段階においても「健康を維持するために何を注意すればいいかのアドバイスする」という著者の考え方にも共感できます。

 

 

そのほか共感できたことを以下に抜粋しました。

・うつを減らせば自殺者も減る。そのための早期発見、早期治療をすることでかえって患者が拡大生産される過剰診断につながる。

・病気の基準をつくって杓子定規に当てはめ拡大生産することにより、個人の違いに目が届かなくなる。精神疾患は個々人で治療が異なるべきであるのに一元化されてしまうことで病人にされてしまってなかなか治らない。

・症状だけ似たような症例の人を探して自分の参考にしようとしてみたところで、あまり意味はなく、参考にならないものを勘違いして参考にしてしまう弊害のほうが大きい。

 

うつを根治するにはただ医師に任せるだけでなく、医師と患者が協力してきちんと症状を引き起こした問題点と向き合うことが必要であることがよく分かりました。

 


医者の9割はうつを治せない

森の診療所の終の医療

森の診療所の終の医療(講談社)
増田進

 

医療について、非常に多くのことを考えさせられる一冊です。

厚労省や日本医師会と異なる意見だとしても「自分たちの村にとって本当に大事なことは何か?」を常に考えながら医療を実践してきた著者の話だけに説得力がありました。

・血圧測定でも「規則を守る」のが目的ではなく、「村の人の健康を守る」ことが目的ということをしっかり理解しており、規則に関係なく看護士に血圧を測らせるようにしていた

・人間ドックの膨大なチェック票をただやるのではなく、検査項目は最低限とし医者だけでなく、看護士、保健婦、検査技師などが村の人と顔を合わせて関わる

といった話は、目的を理解して実践したよい例だと思います。

 

 

また、「今の医者は裁判官みたい」という言葉も言いえて妙だと思いました。

いろんなデータを集めてきて、判決を下すだけ。

判決を下した後はあまり責任をもたない。

今の医療は画像や血液のデータを調べて管理して処方するデータ管理医療ですが、そうではなく、患者さんを支えてあげる医療が必要だという考え方は大いに共感できました。

地域医療の定義についても、たんに「地域社会に医学を適用する」というのではなく、著者が提唱する「地域社会の人が健康で長生きするためのあらゆる活動」と考え、国に依存するのではなく、各市町村が独自の取り組みをしていくことが大事なのだと思いました。

 


森の診療所の終の医療

不要なクスリ 無用な手術

不要なクスリ 無用な手術(講談社現代新書)
富家孝

 

今後、病院に行けば行くほど、これまで以上にお金がかかるようになる現代社会において、いかに自らが支払う医療費や無駄な手術費を削減するかをテーマにした良書です。

医者に言われるがまま、クスリや手術を選択した結果、いかに無駄な費用がかかっているか、よく分かりました。

 

薬

 

医療に対して、コスト意識をもたないといけないというのはもっともだと思います。

以下、勉強になった内容を以下に抜粋しました。

・人間ドックを受診した人のうち、全項目で異常がなかった人の割合はたった7.2%で、残りの92.8%はなんらかの異常がある。それを不健康と呼ぶなら、日本人のほとんどが不健康になってしまう。

・どんなクスリにも副作用があり、ほとんどのクスリが疾患そのものを治すものではなく、病気の症状を緩和するだけのもの。さらに、クスリの開発・生産は製薬会社が厳然たるビジネスとして行っている。

・がんは、よほどの末期でなければ、死ぬ前に十分な時間があり、色々なことを整理できるため、がんで死にたいと考えている人がいる。75歳以上になってがんの手術をする場合、現状よりも悪化してしまうリスクも高いため、手術をしないという選択肢もある。


不要なクスリ 無用な手術 医療費の8割は無駄である (講談社現代新書)

がんばらない介護

がんばらない介護(ダイヤモンド社)
橋中今日子

 

著者の体験や相談者たちのエピソードを紹介しながら、「介護の現場で起こっていること」「介護者がつぶれないための、介護の心をラクにする方法」を紹介している良書です。

介護に携わることになり一人で悩んでいる人はもちろん、今後介護に携わる可能性がある人にも役にたつ一冊でした。

一人でがんばらず、いかに人を巻き込んでいくか、そのコツが実体験を元に記載されていたので、勉強なりました。

 

 


以下に、個人的に勉強になった内容を抜粋します。

 

・介護認定の際、証拠写真を残したり、感情に訴えるということは考えてもいませんでした。また、室内の掃除も自然にしようとしてしまうが、ありのままの状態を見てもらうことが大事というのはもっともだと思いました。

・介護する人が支援できるとしても、共倒れや今後の負担を考慮して、親世帯とは別会計にして生活保護を申請するという手も考えられるというのも知りませんでした。

・看取りとは、最期の瞬間に立ち会うことだけを意味するのではなく、介護されている人の不安な気持ちに寄り添い、背中をさすり、一緒に笑い、泣くことも立派な看取りであるという考え方は共感できました。

 

ほかにも、介護と仕事の両立の話や、家族間のトラブルの話など、参考になることが多かったです。

介護に悩む多くの方に読んでいただきたいです。

 


がんばらない介護