2024年7月17日に文京シビックホールで
「健康寿命と予防医療 ~人生100年時代をどう生きるか~」
という講座を受講しましたので、今回はその話を紹介いたします。
講師は、小石川整形外科院長の丸山剛先生です。
2021年7月に小石川整形外科を開院され、今年2024年で3周年を迎えたそうです。
話は以下の2つのテーマに分かれていました。
①骨粗鬆症
②変形性膝関節症
順番に紹介していきます。
①骨粗鬆症
まず、骨粗鬆症になるとなぜ良くないのか、という話がありました。
「歩くと腰が痛い」 → 「外出が減る」 → 「下肢の筋力が低下」
という悪循環が繰り返され、その結果、転倒や寝たきりが増加し、健康寿命を縮めるという話でした。
健康寿命とはWHO(世界保健機関)が2000年に発表した言葉で、日常的に介護を必要とせずに自立した生活ができる生存期間のことを指しています。
日本では現在、健康寿命が73.1歳、平均寿命が84.3歳です。
男性は健康寿命が72.6歳、平均寿命が81.5歳(健康寿命と平均寿命の差は8.9年)
女性は健康寿命が75.5歳、平均寿命が86.9歳(健康寿命と平均寿命の差は11.4年)
要支援、要介護になる原因として、
1.運動器疾患(転倒、骨折、関節痛など)
2.認知症
3.脳血管疾患
4.衰弱
という順番が紹介されており、50代の日本人女性の3人に1人は一生のうちで脊椎圧迫骨折になるというデータが紹介されていました。
また、脊椎が後彎すると、円背という背中が丸まった状態になり、その状態が長くなると消化器症状も出やすくなるという話もありました。
骨粗鬆症の判定方法としてはDXA(デクサ)法という方法が一番正確で、YAM値(若年成人比較)の70%以下で骨粗鬆症と判定されます。
では、治療はどうするか。
運動、食事、日光浴が基本で、それ以外に薬物療法、リハビリ、環境整備があげられていました。
運動はきつくない範囲で、
・有酸素運動は1回30分程度、1日5000歩くらい歩く
・筋トレは週2回体操を中心に行う
のがよいという話でした。
②変形性膝関節症
変形性膝関節症は膝の中でクッションの役割をしている軟骨が擦り減って関節炎が起こる疾患です。
日本人では約2500万人の患者がいて、そのうち女性が3分の2弱で、40代後半から徐々に発症するというデータが紹介されていました。
では軟骨が変形するとなぜ痛いのか。
以下の順番で痛みが悪化していくそうです。
・筋肉、靭帯の伸張痛:軟骨が擦り減った状態で使いすぎると関節周囲の組織の負担が増加し痛みが出る
・急性炎症:軟骨が剥がれて滑膜という関節液をつくる部分を刺激して痛みが出る(膝に水が溜まる状態)
・慢性炎症:急性炎症が慢性化
・軟骨下骨の磨耗:軟骨がなくなって、骨同士が接触して歩くこともままならない状態となる
軟骨には神経がないため、軟骨そのものでは痛みを感じないそうです。
では治療はどうするか。
保存療法として、薬、注射、装具、食事、運動、リハビリがあります。
手術は関節鏡手術、骨切り手術、人工関節置換手術があります。
まずは保存療法を行いながら様子を見て、症状が悪化したり痛みが強くなる場合には手術も検討します。
また、現在では新しい治療として、保存療法と手術の間で行う「再生療法(PRP療法)」という方法もあるそうです。
これはスポーツ整形学の分野で行われている、血液中に含まれる血小板を利用して損傷した組織の再生を行う方法で、ドジャースの大谷選手も利用したことで注目されたそうです。
参考サイト:再生医療相談室 再生医療トッピクス
https://www.rm-promot.com/topics/topics03.html
小石川整形外科では、「PFC-FD療法」という再生医療を行っており、約600の症例があるそうです。
7~8割の患者さんで症状が70%~80%程度改善、10%~20%が全回復しているものの、1割の患者さんで全く効果が出ていないという結果とのことでした。
再生医療は手術の必要がなく日常生活の制限がないこと、自身の血液を使うことから副作用が少ないというメリットがありますが、保険外治療となるため1回の注射で約30万円と高額であるというデメリットもあります。
最後に2つの話のまとめとして、
・健康寿命を上げるには健康意識を高めて予防に力を入れること
・特に運動(1日30分程度)、食事(野菜、肉をバランス良く)、日光浴(1日5分以上)が重要
であるという話でした。
今回の話の中で、再生医療の話はきちんと聞いたことがなかったので勉強になりました。
医療費が高額のため、まだ普及しにくいかもしれませんが、症例を積み重ねていくことで取り扱う医療機関が増えて価格が抑えられるといいなと思いました。