お客さん物語:飲食店の舞台裏と料理人の本音
稲田 俊輔 (著)
南インド料理店の総料理長が、飲食店の舞台裏やお店が考えていることを率直に語っていて読みやすかったです。
お客様に喜んでもらえるよう精一杯尽くし、お客様の気持ちを想像し、どうしたらもっと満足していただけるか考える、これは飲食店でなくてもサービス業であれば共通した想いだと思います。
本書では、お客様とのやりとりを紹介したり、著者がお客さんとしてお店に行ったときの気持ちを書いたり、他のお客さんから聞こえた話を膨らませたり想像したりしながら、飲食にまつわるあれこれが書かれていて楽しく読めました。
個人的には、飲食店側の考えとお客さんの考えの違いや、お互いの思いが伝わらずミスマッチになる話がおもしろかったです。
いくつか印象に残った内容と感想を抜粋。
・「ざわつかせるお客さん」で書かれていたお店にとっては、こういうものを、こういう組み合わせで、こういう風に注文してほしいという理想のスタイルがあり、変則的な注文はお店のオペレーションを乱すというのは考えさせられました。
→私はお酒が飲めませんが、量を食べるので、パスタ・シーザーサラダ・コーヒーよりも、パスタ、ピザ(または肉料理)、と注文して飲み物は水でよいタイプ。ランチでセットなら仕方ないですが、わざわざ食べたくないサラダを食べるより、パスタとピザを頼みたいのに、大食いのためのセットはまずありません。
・「マイナージャンルのエスニック」で書かれていた「もっと普及するといいですね」という言葉の裏側にある本音
→普及しすぎると困るという本音が正直に書かれていたのは共感できました。お店にメリットがある範囲でのほどほどの普及ならよいですが、普及し過ぎると店の希少性が失われるのはもっともだと思いました。
・「1000円の定食は高いのか?」で紹介されていたミスマッチの典型例
→想定より高いお店は、なぜ高いのかという価値が伝わっていないケースも多いと思いますので、どう価値を伝えるのか考えさせられました。
お客さん物語―飲食店の舞台裏と料理人の本音―(新潮新書)