限りある時間の使い方 人生は「4000週間」あなたはどう使うか?
オリバー・バークマン (著), 高橋 璃子 (翻訳)
「80歳くらいまで生きるとして、あなたの人生はたった4000週だ」
私は40代なので、すでに半分以下になっている中、いかに限られた時間を受け入れるのか、考えることが多くて非常に勉強になりました。
「時間を思い通りにコントロールしようとすればするほど、時間のコントロールが利かなくなる」というのはもっともで、便利な家電や移動手段ができても、常に『時間が足りない』という問題が存在し続けています。
様々な新技術が導入され時間に余裕が生まれるはずが、もっと速く、もっと効率的にを追求するあまり、節約できた時間をありがたく思うことができず、昔よりもずっと短気になっているというのは納得できました。
日が昇れば起きて日が沈めば眠る中世の農民の生活はゴールや競争がないもので、時間や効率化という概念自体がありませんでした。
産業革命が起こって農民が工場で働くことになり、労働時間を効率的に管理するようになってから、時間に値段がつけられ、時間を「使う」ようになっていきます。
その結果、効率的、生産性、マルチタスクといった言葉が生まれ、時間の管理をするようになったといいます。
多くのタスクをこなせばこなすほど、期待値が上がって仕事が速いと評判になり、さらに多くの仕事が降ってくるという「効率化の罠」にはまっていき、時間は決して余らない仕組みになっているという考えはとても共感できました。
資本主義の成功者たちは、時間を有効活用して利益を生むための道具として使うことに躍起になるあまり、現在の生活を将来の幸福に向かうための手段としか考えられず、現在を楽しむことができないという意見も興味深かったです。
将来の利益のために人生を道具化しない貧しい国の人たちは、現在の喜びを十分に味わうことができ、幸福度の指標が高いという話も非常に納得できるものでした。
また、「アテンション・エコノミー」という人々の注意・関心に値段がつけられ、SNSなどのコンテンツ提供者がそれを奪い合っている現代において、興味のないことに無理やり注意を引きつけられ、気づかないうちに時間を無駄にしてしまうことは本当によくあることです。
これが単に時間を無駄にして気を散らすだけのものではなく、「自分の欲しいものを欲しがる能力を壊してしまう」というのが何よりも深刻だと思います。
現代人は、常に不安と焦燥に駆られ、時間に追われています。
そんな中、どうすれば結果を未来に先送りすることなく、現在の行動そのものに満足を感じることができるのか。
本書では忍耐力をつける方法として、「問題がある状態を楽しむ」、「小さな行動を着実に繰り返す」、「人真似だと言われてもくじけずに続ける」ことをあげており、その場に留まって現在地をゆっくり楽しむことを提案しています。
ほかにも、「他人と時間をシェアする」、「抽象的で過剰な期待をきっぱり捨てる」、「ただ目の前のやるべきことをやる」「ありふれたことに新しさを見出す」、「退屈で機能の少ないデバイスを使う」、「何もしない練習をする」など、限られた人生の時間を受け入れる色々な方法をあげているので、時間に追われて困っている人はぜひ本書を読んでみてほしいです。
限りある時間の使い方