無人島のふたり: 120日以上生きなくちゃ日記
山本 文緒 著
58歳ですい臓がんになり、余命宣告された著者が、コロナ禍で隔離された環境で夫と二人、どう過ごしてきたのかを書き続けた闘病日記です。
作家として最後まで「書きたい」という気持ちが残っていて、「日記を書くことで頭の中が暇にならずに済んだ」という言葉は著者の本心だと思いました。
自分が借りていたマンションの片付けの話、アメトークや映画を見て夫と笑った話、闘病中でもお気に入りのカフェに行った話、遺言状や葬儀の話、発熱や倦怠感、痛み、腹水といった体の不調の話など、本当に日常的な話から病気のことまで、ご本人の言葉で真剣に描かれていて胸に響きました。
また、お見舞いに来てくださった方に対する著者の感謝の気持ちがものすごく伝わってきました。
「余命四ヶ月でできる治療がない人にかけることばって難しすぎる」とか、「私に会いに来るのはさぞ緊張しただろうと思う」とか、「勇気を出して会いに来てくださって本当に嬉しい」という言葉からも相手への配慮や労いの気持ちがよく分かります。
私にも妻がいるので、突然の寒気や痙攣で救急車を呼んだり、葬儀のことを質問されたり、いよいよ余命が近づいてきたとさりげなく医師から告げられた時など、旦那さんの気持ちを想像すると思わず涙ぐんでしまいました。
ご冥福をお祈りいたします。
無人島のふたり―120日以上生きなくちゃ日記―