ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。 (ポプラ社)
幡野広志
本書は、著者が34歳の時に多発性骨髄腫と宣告されるまでと、宣告された後にどんなことを考えて、何をどうやって選んだのか、について丁寧に描かれていました。
がん患者の多くは「もっとこうすればよかった」と後悔すると言いますが、著者は後悔しても自責に苦しむだけで何も変わらないという考えをもっており、それが達観しているように見られると言います。
後悔してもしょうがないと分かっていても、なかなかこの心境にはなれないと思いました。
すごく同意したのは
「がんに限らず、重い病気や障害の全てにおいて、身内の病を『わたしの不幸』にいちゃいけない、つまり『娘(息子)がこんな病気になったわたし、かわいそう』はぜったい間違っている」
という言葉。
これはとてもデリケートな問題で、多くの身内が自分の不幸と捉えてしまうと思いますが、患者にとって一番の苦しみは
「家族の重荷になっていること」
という言葉を忘れないようにしたいと思いました。
また、緩和ケアの看護師さんが「こころの痛み」を取り除いてくれたという話が印象的でした。
一度として「がんばって」とは言わずに、患者さんの話に耳を傾けて寄り添う緩和ケアの看護師。
医学的なひとつの正解にこだわらず、「患者ごとの正解」を探そうとしてくれる、医師とはちがう専門性をもった患者のパートナーがいたことが心強く感じられたとおっしゃっていました。
病気に苦しむ人、家族との関係に苦しむ人、医療従事者など、多くの方に読んでいただきたい一冊でした。
ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。