当院には、西ヶ原や滝野川、西巣鴨など、新たに当院の近所に住み始めた方も多く来院されます。
その際によく患者さんから聞かれるのが
「この辺でおすすめの飲食店はありますか?」
という質問です。
一見なんてことのないよくある質問なのですが、意外と奥が深い質問だと思うので、今回はこの質問について考えてみます。
まず何も考えずに答えるのなら、自分がおいしいと思うお店か、ちょっと有名なお店を伝えると思います。
「○○というお店のチーズハンバーグはすごくおいしかったです」
「△△というラーメン屋さんの味噌ラーメンがおすすめですよ」
「□□というドラマに出ていたすき焼きの××というお店が○○駅の近くにありますよ」
という感じです。
ただ、この回答では相手に満足して頂ける可能性は低いと思います。
なぜなら、まず相手の食べ物の好みが分からないからです。
・ジャンルは?
(和食、洋食、中華、ラーメンなど)
・好き嫌いは?
(お肉、魚、野菜、辛い物など)
・アレルギーは?
(そば、小麦、甲殻類など)
さらに、相手が望む状況も重要な要素です。
・ランチかディナーか?
(ランチ希望なのに夜しか営業していないこともある)
・お酒飲みかどうか?
(飲み重視か食べるの重視か)
・子連れOK?
(子供連れでは行きにくいお店もある)
・価格帯は?
(どの程度まで許容できるのか)
・店の雰囲気は?
(ガヤガヤ、静か、若い人が多いなど)
・バリアフリーになっているか?
(2階でエレベーターがないと車イスの方や足が不自由な高齢者は入れないかも)
・知名度?
(TVで紹介されたお店がよい、穴場のお店を知りたい)
ざっと思いついたものをあげましたが、他にも考える要素はあるかもしれません。
こういった相手の好みや状況を把握せず、ただ自分が好きなお店を伝えても、相手の希望には合わないと思うのです。
例えば私の場合は辛いものが苦手なので、激辛ラーメンのお店をすすめられても困りますし、お酒が飲めないのでお酒飲みがガヤガヤと騒いでいるお店は苦手です。
とはいえ、現実的に全てを確認するのも難しいですし、相手もそこまで厳密にお店を知りたいわけではないかもしれません。
ですから、実際には、「苦手な食べ物」や「食べたいジャンル」、「お酒を飲むか」くらいを確認して、そのうえで良さそうなお店をお伝えすることになります。
このあたりのさじ加減が難しいところで、初対面だと相手のことが分からないので無難な感じになってしまいますが、何度かいらしていてその方の趣味や嗜好が分かってくると、さらによい提案ができると思います。
・ラーメン好きの方であれば
「○○のあたりに新しくはまぐりラーメンが売りのラーメン屋さんができたのですが、知っていますか?」
・子連れで行く方であれば
「△△にある洋食屋さんは、子連れのお客様も多いので気兼ねなく食事ができますよ」
・大食いでがっつり食べたい方であれば
「□□の中華屋さんはランチタイムはご飯がおかわり無料なので、がっつり食べられますよ」
と、より相手に響く提案ができるようになります。
こういったことまで考えると、
「この辺でおすすめの飲食店はありますか?」
という質問は、相手のことをどこまで知っているか、知るためにどんな会話のやりとりをしていくか、が重要なので案外奥が深いなと思ったのです。
今回はよく聞かれる飲食店を例にあげましたが、映画や本、カフェなどでも同じです。
自分の好みではなく、相手の好みや状況をいかに考えて伝えるか、それが大事だと思います。