現代のアディクション

9月中旬に、東京都医学総合研究所が行っている都民講座

「現代のアディクション」

という講座を受講しましたので、今回はその話を紹介いたします。
(アディクションとは「依存症」を表す言葉です)

◆2023年度 都医学研 第4回 都民講座 現代のアディクション
https://www.igakuken.or.jp/public/tomin/2023/23tomin4.pdf

今回は場所が遠かったのでオンラインで受講しました。

 

 

講座の内容は以下の2点でした。

(1)身近で多様なアディクション
 依存性物質プロジェクト 副参事研究員 井手 聡一郎 先生

(2)ネット・ゲーム依存の基礎知識と対応について
 神戸大学大学院医学研究科デジタル精神医学部門 特命教授 曽良 一郎 先生

それぞれ学んだことを以下にまとめていきます。

 

(1)身近で多様なアディクション

依存症には物質依存と非物質依存の2種類があります。

物質依存:薬物、アルコール、タバコなど
非物質依存:ギャンブル、インターネットゲーム、窃盗など

近年、薬物(麻薬、覚醒剤、大麻)の使用は若年齢化してきているそうです。

その中でも大麻は検挙者が多く、約7割が30歳未満だということでした。

その理由として、「海外では合法で有害性がない」といった誤った情報がインターネット上に氾濫していることがあげられていました。

薬物の使用を続けると、脳の知的機能の低下や記憶を司る部位が縮んでしまう悪影響があります。

 

 

特定の行動を繰り返し行ってしまう行動嗜癖も含めた非物質依存も増加しています。

特にインターネットゲームは若年者の間で急速に増加しており、精神疾患(うつ、不安、ADHD(注意欠如・多動症))とも大きく関連していて、依存症と精神疾患の併発率は高いそうです。

依存症になると、以下の症状が出てきます。

①精神依存:多好感、陶酔感が起こる、自己抑制が効かない
②身体依存:離脱症状(痙攣、呼吸抑制)

現在、依存症の研究として、がんのスクリーニング検査にも使われている線虫を使った研究も行われているという話もありました。

アディクションは患者の自己責任とされ、専門研究や公的施設がないことが課題でした。

近年、アディクション研究の必要性が高まっており、2024年には国立精神・神経医療研究センター内にアディクション研究センターが設立されることになったそうです。

 

 


(2)ネット・ゲーム依存の基礎知識と対応について

インターネットを介したオンラインゲームなどの普及に伴い、ネット・ゲーム依存は世界的に社会問題となっているそうです。

親もスマホに費やしている時間が多く、子どもとの関わりが減少、家や学校が楽しくない、話をする相手がいないといった理由から、子どもがネットゲームにはまっていき、生活リズムが乱れたり、不登校になったり、精神的に不安定になっていきます。

 

 

・依存症は病気?
→コントロールできないと依存症という病気となる

・依存と中毒は同じ?
→中毒は体の中に薬物が入っている状態。依存は薬物が入っていなくてもほしくてしょうがない状態

・ゲーム脳、スマホ脳はある?
→まだ分かっていない。ICT教育やコロナで加速している

全ての楽しいこと、気持ちいいことは依存症という病気を作る可能性があります。

食べ物、買い物  <  お酒  <  覚せい剤

反復する快感によって、脳の報酬系を司る回路が変化していき、コントロールできなくなっていくそうです。

現在のオンラインゲームは、クリアして終わりというものではなく、SNSで仲間を募ったり、コンテンツが頻繁にアップデートされたり、魅力的なアイテムやストーリー、成長などがあり、利用者を飽きさせないよう工夫されています。

ストレスの逃避場所としてゲームがあり、顔の見えないオンラインでは社交的であるという一面も見られるようです。

 

 

週30時間以上(4時間~5時間/日)、ネットゲームをやっていたら依存症の可能性が高いそうで、やり過ぎと依存の境界も分かりにくく、遅刻ではなく不登校になるといった明らかな問題が生じている場合にはゲーム依存が疑われるそうです。

解決策としては、ゲーム以外の新たな楽しみや興味があることを見つけるとともに、リアルの生活を充実させていく必要があります。

現実世界の困難な状況が変わらないと、ゲーム依存は回復しにくいからです。

依存症は自己責任と見なされることが多く、もっとも理解されにくい精神疾患だそうです。

なお、依存症になってしまった場合、無理やり制限したり禁止しても効果はなく、暴力や盗みなどの問題行動に発展してしまいます。

全くゲームをさせないのではなく、ゲームの時間が少しでもコントロールできたら評価するとともに、ゲームに依存せざるを得なくなった状況を理解することが大事であるという話でした。

 

 

※ ゲーム依存に困っている方に向けた、マニュアルもあるそうです。興味のある方は、以下のサイトから見ることができます。

ゲーム依存相談対応マニュアル
https://www.ncasa-japan.jp/pdf/document45.pdf


【この記事を書いた人】

photo 西ヶ原四丁目治療院 院長の佐藤弘樹(さとうこうき)と申します。
はり師・きゅう師・あんまマッサージ指圧師の国家資格を持ち、病気の治療、予防のお手伝いをしています。

たった一人でも、「治療に来てよかった」と満足していただき、 人生を豊かに過ごすお手伝いをすることを理念としております。
お気づきの点や質問等ございましたら,どうぞご遠慮なくお聞かせくださいませ。

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