生きるって人とつながることだ!(素朴社)
福島 智
健常→全盲→全盲ろうという三つの状態を経験し、東大の教授にまでなった著者の自伝エッセイ集。
著者はこの経験を、周囲の世界から徐々に隔絶されていった過程と考える一方、他社とのより確かな結びつき、より豊かなコミュニケーションを経験できたと語っており、それがタイトルの「生きるって人とつながることだ!」に表れているのだと思います。
「人は他者によって生かされている」ことを体験として実感した著者が語る手触り人生は、前向きで笑いや楽しさに包まれた人生だと思いました。
本書の中で「障害の有無は人生の豊かさとは独立した要因」と著者は言っていますが、まさにそれを実践しており、多くの苦労や困難がありながらも、障がい者および健常者を勇気付ける内容になっているのが素晴らしいです。
結婚式の媒酌人の山崎先生の話、盲ろう者の外出に挑戦したロシア人の話、小島純郎氏との出会いや奥様が語る著者との日々の暮らしの話、すし屋のカウンターでの話など、おもしろい話が満載でした。
特に印象に残った言葉は以下の通り。
・テレビはコンセントがつながっている状態が自然であるのと同じように、盲ろう者の場合も他者と同席しているなら、他者とコミュニケーション的に接続している状態こそが自然という認識を本人と周囲がもつべきである
・健常者と「同じに」生活できることが目的ではなく、盲ろう者がそのハンディとともに、自然に豊かな人生を送るためにこそ、適切な援助の意味がある。障害の有無は人生の豊かさとは独立した要因だ。
多くの方々に読んでほしい一冊です。
生きるって人とつながることだ!