ドッグファイト(角川文庫)
楡周平
大手運送会社がネット通販会社に立ち向かっていく企業小説で、ヤマト運輸とアマゾンがモチーフになっています。
大手運送会社のコンゴウ陸送は、世界的外資系ネット通販のスイフトから生鮮食品の当日配送をするプランを持ちかけられます。
現状でも配送量のわりに運賃は安くされて利益が出ていないのに、さらに配送量が増えることになり運送会社のメリットは全くありません。
完全合理主義で宅配の手間や負担など考えずに自らの提案を押し付けてくるスイフト相手に、コンゴウはどう立ち向かって行くのか、読み応えがありました。
高齢化が進む現在の日本において、今後は買い物難民が増えて、通販の需要は劇的に増加していきます。
一方、少子化が解決されない状況においては日本の市場規模は縮小していき、企業は海外に進出するしか道はありません。
これらの問題を、運送会社とネット通販の双方の視点から描きながら、ネット通販会社の言いなりにならずに一矢報いる方法を模索していく展開は手に汗握りました。
三河屋商法、いわゆる御用聞きの考え方を生かした企画案は、買い物は近所で済ませるという購買形態の原点に立ち戻ったアイディアで素晴らしかったです。
ネット通販に押されて業績の低下に苦しむ商店や量販店のビジネスに関係する方に、読んで頂きたい一冊でした。
ドッグファイト (角川文庫)