一万円選書: 北国の小さな本屋が起こした奇跡の物語 (ポプラ新書)
岩田 徹
「僕がなんのために本屋をやっているのかと言えば、ひとりでも多くのお客さんに、1冊でも多くのおもしろい本をすすめるため。おもしろい本を書いてくれた作家からもらったパスを読者につなげるのが本屋の役目。死に際まで、子どもの頃にしていた「おもしろい本の教えっこ」をしていたい」
この想いの結果、偶然たどり着いたのが「一万円選書」です。
14年前から始めた取り組みが突然ブレイクしたのは7年前。
出版不況が始まり、何をしても打開策が見つけられず、廃業まで考えた日々。
そんな中でも、「読者が今何を読みたいか」に耳を傾けて本をすすめる、ということをやめなかったからこそ起きたブレイクだと思います。
私も一万円選書に応募して、実際に岩田さんに本を選んで頂きました。
なぜ岩田さんに本を選んで頂きたいと考えたか。
小さな本屋で新しいことを色々試し、試行錯誤しながら、もうダメだと思いながらも、自分が本当におもしろいと思う本を書店に並べるというやり方を貫き通してきた岩田さんだったからです。
様々な苦労をしてきて、多くの本を読んできた岩田さんだからこそ、
「自分が新しい何かに気付くことができるかもしれない、そんな本に出会えるのではないか」
と思って一万円選書に応募しました。
#以前書いた「一万円選書に当選しました」というブログ
https://nishigahara4-harikyu.com/blog/bookselect-tenthousand/
本書は、そんな岩田さんの一万円選書に対する想い、出版業界に対する想い、本屋の仕事に対する想いが描かれた一冊でした。
私が特に印象に残っている内容を以下に抜粋。
・Needsを探すのではなく、Wantsを創造する
Needsは「これがほしい」といったお客さんの顕在化している欲求で、Wantsは提供されたときにお客さんが「そうそう、これがほしかったんだ」と思うような潜在的な欲求のこと。一万円選書でやっているのは、まさに潜在的なWantsを引き出すこと。
・本には、実際に自分で読んでみないと味わえない体験がある。その人が歩んできた人生によって、読むタイミングによっても響く言葉も印象もまったく異なるものになる。実際に読んではじめて動かされる感情があるはずだ。
・もっと長い時間お店を開けていたら、もっとたくさん選書をしたら、売上は立つし、収入も増えるかもしれない。でも、僕はそこを目指していない。無闇やたらに売上を増やそう、収益を上げようとは思わない。売上や規模、目に見える数字を指標にナンバーワンを目指すんじゃなくて、誰かにとってのオンリーワンでい続けるために、長い目で自分にできることを積み上げている。
・おもしろい本を読みたくて、おもしろい本を人にすすめたくて本屋をやっているのに、仕事が忙しくて本が読めないなんて、そんな皮肉なことはない。本を読むことから1日を始めて、本に囲まれながら全国の読者に本を届け、1日の終わりに家族とともにある時間がかけがえのないものであることに感謝する、という毎日をできるだけ長く続けて生きたい。
「一万円選書」という小さな本屋さんの取り組みに興味がある方はぜひ読んでみて下さい。
#ちなみに、一万円選書で選んで頂いた10冊の本のうち、現在8冊が読み終わりました。
残りの2冊も時間を見つけて読んで、全て読み終わったらどんな本が選ばれたのか紹介いたします。自分の手元に本があるといつでも読める思って、図書館で借りた本を優先してしまうせいか、案外読めないものです(笑)