先日、NHKで放送しているプロフェッショナルで紹介されていた歯医者さんの話に感銘を受けたので紹介します。
山形県の酒田市で歯科医をしている熊谷先生の診療所は、治療室が全て個室で27つあり、それ以外にも技巧室や滅菌室があるそうです。
歯医者は一般的には「歯が痛くなったら行く」ものだと考えている人が多いと思いますが、熊谷先生のコンセプトは「痛くならないために歯医者に行く」なのです。
「痛くなったら行く歯医者」 → 「痛くならないために行く歯医者」
虫歯があって来院した患者さんについて、応急処理以外に歯の治療はしません。
治療してしまうと治ったあと来院しなくなり、再び虫歯になってしまうからです。
目先の治療をするのではなく、きちんと予防を行って本当に長く自分の歯で食べさせて地域の人々の健康を守ることを考えているのです。
初診ではまず歯のレントゲン、口腔、唾液の検査を行います。
その結果を患者さんにしっかりと説明し、自分の歯を知って意識してもらう、考えてもらうきっかけを作っています。
この段階ではまだ治療は行いません。
その後、歯科衛生士による歯石の除去や歯の掃除を行います。汚れが酷い場合には数回になることもあります。
また、患者自身にフロスや歯磨きを徹底させます。
歯や歯ぐきが清潔になったところで、ようやく虫歯の治療を行います。
この段階で治療を行うと、歯ぐきが引き締まったことにより出血が少なくなったり、清潔な歯は滑りにくいので治療精度があがるというメリットがあります。
治療が終わるまでに患者の歯に対する意識を変えることが目的です。
治療が終わったあとは、数ヶ月ごとの定期的なメンテナンスによる予防を徹底させています。そのために、治療室が27つもあるのです。
酒田市の人口は約11万人だそうですが、なんと1割以上が熊谷先生の診療所に通っているそうです。
この話を聞いて、はり・きゅう・マッサージの治療のやり方についても大いに考えさせられました。
腰が痛い、肩が痛いという患者に対して、単に痛みをとるだけの治療をしていることが多いからです。
医療従事者として、患者の希望に沿って治療を行うことは大事なことだと思いますが、それが本当に患者のためになるのか。
すぐに治療をするのではなく、自分の体に意識を向けてもらうことから始める必要があるのではないか。
そのためには、納得感のある説明、患者への誠意、痛みのメカニズムの理解、治療への情熱など、様々な技術・知識が必要となります。
今後の大きな課題になりました。