2024年6月5日に
「VR認知症体験会」
という講座を受講しましたので、今回はその話を紹介いたします。
講師は、株式会社シルバーウッドの大野彩子 氏です。
今回受講した「VR認知症体験会」というのは、VR(バーチャル・リアリティー)を活用して、認知症の方々が見ている世界を疑似的に体験するというものです。
「VR認知症」は認知症の当事者監修のもと、シルバーウッド社が開発した認知症の方の状態を疑似体験できるシステムです。認知症の正しい理解と共感が進むきっかけになることを目的として制作しているそうです。
参考:株式会社シルバーウッド VR Angle Shift
https://angleshift.jp/
認知症とは簡単に言うと
「認知機能の低下によって日常生活に支障が出ている状態」
のことで、原因となる疾患が70種以上あると言われています。
年齢別にみると、
60代後半では1.5%
70代前半では3.6%
70代後半では10.4%
80代前半では22.4%
80代後半では44.3%
90代では64.2%
となっており、年齢が高くなるほど認知症の方の割合が増えているというデータが紹介されていました。
長生きをするとどうしても認知症になりやすく、そのため「認知症になっても大丈夫」という社会にしていくことが大切だという話があり、共感できました。
講座ではVRとヘッドホンを装着し、認知症の人が体験しているであろう世界を3パターン、疑似体験しました。(VRで映像を見て酔ってしまった方もいたので、VRが合わない方もいるかもしれません)
①私をどうするのですか?
認知症の方が車から降りる際の様子を紹介したものでした。
「視空間失認」という、距離感が掴みにくくなる症状の方がどんな風に見えているのかを、立った状態で体験しました。
②レビー小体型認知症 幻視編
レビー小体型認知症の特徴の一つで、実際にないものが見える「幻視」という症状があります。
VRでは、仲間の家を訪ねた際に、幻視症状がある方がどんなふうに見えているのかを体験しました。
③ここはどこですか?
電車の中で寝てしまい、今どこにいるのか、そもそもどこに行こうとしていたのか分からなくなってしまったという設定でした。
「見当識障害」という、時間や場所、人物を認識・理解する能力が低下した状態の方の混乱した様子を体験しました。
講座には約50人が参加しており、4人ずつがロの字になって座り、VR体験後に意見交換をする時間が設けられました。
実際に体験してどう感じたか、自分が認知症当事者の立場だったらどうしてほしかったか、などを話し合いました。
また、VRを体験したあと、実際にVRを監修した認知症患者さんの映像が出てきて、どんな気持ちになったのか、どうしてほしかったかを率直に語っていたのも勉強になりました。
いくつか印象に残った内容を紹介します。
・介助者の立場では、ただ車から降りるだけなので、「大丈夫ですよ~」と声をかけていたが、視空間失認の方には高いビルから降りるように感じられ、足がすくんで動けない。介助者は時間がなかったり、他にも介助が必要な方がいたりと、早く行きたいと焦ってしまいがち。そんなときでも、まずは「どうしましたか?」と声をかけ、今どんな気持ちで、何を不安に思っているのかを聴くというのは、とても大切だと思う
・幻視が見える方に対して、「そんなのいないよ」、「気のせいだよ」と安易に否定するのではなく、「何が見えるの?」と聴いて一緒に楽しんだり、温かい気持ちでいてほしい。認知症患者さんに対する周囲の関わり方によって、不安やストレスで症状が悪化したり、安心感や楽しさで症状が軽減したりすることもある
私も仕事柄、認知機能が低下している患者さんと接する機会がありますので、患者さんに安心感を与えられる対応を心掛けたいと思いました。