悪習慣の罠
山下 あきこ (著)
ストレス発散のためによかれと思ってとっている行動や習慣が、依存症を引き起こすきっかけになることが丁寧に解説されていて読みやすかったです。
依存症の種類として、ドラッグやお酒、タバコなどの「物質依存」、ギャンブルやゲームなどの「プロセス依存」、恋人や親子などで起こる「対人依存」の3種類があり、それぞれケースが示されていたのもよかったと思います。
ストレスの発散手段として、飲酒や喫煙などの行動をとることはよくありますが、この一瞬の快楽体験を繰り返していると普段の状態で飲酒や喫煙をしないことが苦しみを強く感じるようになるというのは驚きでした。
また、アルコールを飲みすぎると身体に悪いことは分かりますが、お菓子やジュースに入っている果糖もアルコールと同じような働きをしていて肝臓と脳にダメージを与えているというのも初めて知りました。
本文中の習慣の説明は非常に分かりやすかったので抜粋します。
習慣には「良い習慣」と「悪い習慣」がある。そして、「悪い習慣」の中でも「自分でコントロールできる状態」と「自分でコントロールできない状態」がある。このコントロールできない状態を「依存」とか嗜癖と呼んでいて、この依存が診断基準に当てはまったときに「依存症」という病気としてみなされる
ではその解決策はというと、これがなかなか難しいのです。
体を動かす、家族の協力を得る、日光にあたる、日記を書く、自然に触れるなどはよくある方法ですが、すぐに解決できるものではありません。
飲酒に関しては本書では自分の気持ちを感じたり、お酒の味を味わったり、マインドフルネスや呼吸瞑想、食べることに集中する瞑想、環境を整える、記録するという内容が紹介されていましが、地道にやっていくしかなさそうです。
また、プロセス依存に関しては「記憶の再固定化」の仕組みを利用した「消去学習」という、パズルをしながら依存行動の経験を語らせることで記憶を上書きする治療法は初めて知ったので、興味深かったです。
いかにストレスをためこまず小まめに発散できるか、相談して理解・共感してくれる人を見つけるかが大事だと思います。
最終章の幸福について考える話で、一時的な快楽と長期的な幸福を区別するという考え方は勉強になりました。
・幸福には「ヘドニア」という短期的な快楽を求めるものと、「ユーダイモニア」という親切、平和、健康、信頼など人生全体の幸せの2種類があること
・幸福を作る因子として以下の4つがある
(1)やってみよう因子(自分の力を信じて成長しようとする気持ち)
(2)ありがとう因子(誰かに感謝することで幸福度が上がる)
(3)なんとかなる因子(きっと乗り越えられると未来に希望を持つ)
(4)ありのままに因子(苦しい、休みたいというありのままを受け入れる)

悪習慣の罠 (扶桑社BOOKS新書)