19番目のカルテ 徳重晃の問診(8)

19番目のカルテ 徳重晃の問診【8】(ゼノンコミックス)
富士屋カツヒト 、 川下剛史

なんでも治せるお医者さんを目指して奮闘する医師の物語の第八巻です。

第八巻では、

・母娘による老老介護
・セカンドオピニオン
・生後6か月の赤ちゃんを抱える片頭痛の女性
・ユーチューバーの皮膚科医

の話が掲載されていました。

個人的には「母娘による老老介護」と「セカンドオピニオン」の話が印象的でした。

 

「母娘による老老介護」は、82歳の母を60代の娘が介護する話です。

アルツハイマー型認知症や慢性心不全を患っていて一人では食事もできない母を娘のリカさんが介護しています。

 

 

ある日、お母様の訪問診療に伺った徳重先生が、リカさんの声が枯れていることに気が付きます。

最近風邪をひいたというヘビースモーカーのリカさんでしたが、2週間後に訪問してもリカさんの症状が改善されておらず、食事の時にも喉が詰まって苦しいと言うと、徳重先生が病院での検査をすすめます。

そこで食道がんが見つかるのですが、母の介護をどうするか、自分の過去を振り返りながら考えていきます。

 

 

母は子どもの頃から厳しく、何かあると「いい人と結婚して子供をたくさん産みなさい、男は外から女は内から家を支える」と呪文のように唱え続けられます。

「あなたのために」という言葉を免罪符に干渉してくる母が疎ましくなり、家を出て母と疎遠になります。

数十年ぶりにあった母が認知症を患って娘の自分のことも分からなくなった時、人として正しくあるためという責任感から介護をすることを決断したのです。

しかし、リカさん本人が食道がんになり手術も必要な状況で、今後どうしたらよいか徳重先生が話を聴いていきます。

「あなたが病気を抱えてまで無理をする必要はありません」

「家族だからと自分の命を犠牲にして続けていたら家族そのものが機能しなくなってしまいます」

「その歪みが誰かに負担を与えるぐらいなら、正しく機能するように形を整えることを考えた方がいいでしょう」

と、うまく折り合いをつける方法を提案していきます。

家族の介護をやめるという決断はなかなか難しいですが、何が大切か、どう折り合いをつけていくか真剣に相談に乗る徳重先生の姿が印象的でした。

 

 

「セカンドオピニオン」は、胃もたれで食欲がなく、胃がキリキリする感じに悩まされる中年女性の翔子さんの話です。

小学生の頃からお世話になっているかかりつけ医に処方された薬を服用していますが、なかなかよくなりません。

 

 

そんな翔子さんの様子を見た夫がセカンドオピニオンを提案、しかし、翔子は長年お世話になっているかかりつけ医に申し訳ないと悩みます。

セカンドオピニオンとして徳重先生と滝野先生がいる魚虎病院を受診するのですが、夫が「前医が古い病院で心配だ」、「しっかり診てほしい」とプレッシャーをかけてきます。

徳重先生と滝野先生の診断もかかりつけ医と同じ「機能性ディスペプシア」で方針も問題なし。

あとは、いかに翔子さんとその夫に伝えて納得していただくか、伝え方が重要な局面になります。

 

 

滝野先生は、翔子さんのかかりつけ医の先生が、どのように考えて、どんな検査をしてきたのか、色々な角度から翔子さんの病状をしっかり診ていたことを伝えます。

「病気が治らないのは診断が間違っているから。だから最新の医療機器で色々な検査をすれば違う診断がつくはず」

そう考える患者さんが多いと思います。

「セカンドオピニオンは前医と違う診断をつけることが目的ではなくて、患者さんとその家族が納得できるよう手助けするのが本来の目的であり、別の視点として存在していることが大事だ」と徳重先生は滝野先生に語りかけます。

実際、滝野先生が翔子さんと夫にした説明は素晴らしかったと思います。

 

 

前医のことを否定したり、患者さんが言うままに無駄な検査をするのではなく、翔子さんのかかりつけ医が丁寧にしっかりと翔子さんを診てくれたことが伝わり、翔子さんも安心できたと思います。

セカンドオピニオンや患者さんへの伝え方について、考えさせられる内容でした。

 


19番目のカルテ 徳重晃の問診 8巻【特典イラスト付き】 (ゼノンコミックス)

【この記事を書いた人】

photo 西ヶ原四丁目治療院 院長の佐藤弘樹(さとうこうき)と申します。
はり師・きゅう師・あんまマッサージ指圧師の国家資格を持ち、病気の治療、予防のお手伝いをしています。

たった一人でも、「治療に来てよかった」と満足していただき、 人生を豊かに過ごすお手伝いをすることを理念としております。
お気づきの点や質問等ございましたら,どうぞご遠慮なくお聞かせくださいませ。

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