リワーク専門の心療内科の先生に「働きながら発達障害と上手に付き合う方法」を聞いてみました
亀廣 聡 , 夏川 立也 著
最近、大人の発達障害という言葉をよく耳にするようになりました。
本書では、IT企業勤務の発達障害の男性とその妻、薬品会社で障害者雇用をすすめる人事部長、酒造メーカー営業の発達障害の女性という4人の視点から発達障害との付き合い方が語られていきます。
発達障害をASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠陥、多動性障害)、LD(学習障害)の3つに分けて考えて、自分の個性の現れ方を分析するとともに、発達障害が原因で職場になじめず適応障害を発症したり夫婦関係がうまくいかなかったりする二次障害についての対処と予防方法もまとめられていました。
本書の最期に紹介されている「“出口泉水”(酒造メーカー営業の発達障害の女性)のトリセツ」はよくまとまっていて、当事者の方にはとてもよいと思います。
発達障害については多少の知識はありましたが、知らないこともたくさんあったので勉強になりました。
発達障害の症状としてメンタル不調があるのかと思っていましたが、発達障害の生きづらさが二次障害としてメンタル不調を引き起こしており、調子のコントロールは本人が工夫ししながら対応しつつ、二次障害は周囲の理解や環境調整が大事であることがよく分かりました。
また、認知処理様式として全体を理解してから細部を理解する同時処理と、細部から全体を把握する継次(けいじ)処理の二つがあり、発達障害の人はどちらかに極端に偏っているということは知らなかったです。
継次処理に偏っていると、おおまかなゴールだけを伝えても、何をしてよいか分からないというのも一つの特性だと理解できました。
薬だけに頼るのではなく、自分の特性を理解して自分のトリセツを作って周囲の人と協力しながら社会生活を営んでいくのが本来あるべき姿なのだと思います。
しかし、正直ここまで見てくれる精神科クリニックはなかなかないし、家族はともかく職場での協力を求めたり環境調整をするのも大変だと思うので、まずは本人が自分の特性を知って工夫したり、職場でも相談しやすい人にだけ話してみたり、できることから少しずつ始めて、少しでも発達障害の人の生きづらさが減っていくといいなと思いました。
#本書に興味がある方は、同じ著者が書いた以下の書籍もおすすめです。
『復職後再発率ゼロの心療内科の先生に「薬に頼らず、うつを治す方法」を聞いてみました』
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