後継者の仕事 進化の時代に必要な「経営のあり方と戦略」
次世代の事業継承研究会 赤岩 茂 (著), 藤井 正隆 (著), 坂本 光司 (監修)
まず、本書のまえがきに書かれている内容から、後継者不足の危機感が伝わってきます。
経済センサス(2016年)によると、わが国の企業数は、大企業・中小企業を含め385万社ある。ちなみに、10年前の2006年の統計を見ると、420万社であり、また15年前の2001年の統計では469万社であった。
この10年間では35万社、毎年3万~5万もの企業が減少していて、その要因の75パーセントが倒産ではなく、休廃業によるものであるということ。
さらに、近年の休廃業企業の業績は、その半数が黒字であるということ。
休廃業の多発により経済の活力が失われていくことが懸念される現代において、企業の経営者、後継者はどのようなことを考える必要があるのかが分かりやすくまとめられていました。
経営のあり方は時代とともに変わっていきますが、それを考えず昔からのやり方をただ踏襲するだけでは企業経営はうまくいかないということが本書を読むとよく分かります。
昭和の時代は高度経済成長期で、ものを作れば売れて給料もどんどん上がっていく。
年功序列、終身雇用で夜遅くまで長時間労働も苦にせず働いてきた時代。
平成の時代はバブル崩壊後の不況で、企業の売上・利益が頭打ちとなった。
成果主義が導入され、短時間で効率よく仕事をすることが求められた時代。
そして現在の令和。ワークライフバランス、働き方改革などが叫ばれ、ダイバーシティ(多様性)が認められるようになり、生活環境や価値観が違う人たちを受け入れるようになってきた時代。
こういった時代や働き方の変化に合わせて、後継者は経営やマネジメントをしていかなければならないという解説は共感できました。
経営の究極の目的は「永続させること」ではなく、社員をはじめとする関係者の幸せの追求であるべきです。
ただ、永続しなければ、社員とその家族が路頭に迷い、不幸せになってしまうから永続することが重要であり、いかに永続できる企業をつくっていくか、経営者と後継者の真価が問われると思います。
以下、印象に残った内容を抜粋しました。
・生成発展していない企業の経営者は、世の中のことをあまり考えていない。去年と同じ仕事、昨日と同じ仕事、場合によっては10年前と同じ仕事をただ繰り返しているだけ。経営者は外部環境をきっちり把握し、なおかつ内部環境、自社の強み弱みを知りながら、進むべき道を考えていかなければならない。
・人間にとっての幸福は、成長と貢献が両立した状態。成長は、昨日より今日、去年より今年、つまり生まれたときより現在の方が精神的に向上していること。そして向上し続けながら社会のお役に立つ。これが貢献で、人の役に立つという至福の瞬間を得た人は、どんなことがあってもこの仕事を辞めないと考える。
・中小企業のマーケティングの基本は「泥臭く」。具体的には、ブログを毎日書き続けられるか、SNSを毎日更新し続けられるか、定期的にお客様の声を集め続けられるか、商品開発でも新商品を出し続けられるかなど、これらのマーケティング活動を休まずに続けることがなによりも重要。
私は個人事業主ですが、どんなことを考えて経営していかなければならないのか、勉強になる一冊でした。
後継者の仕事 進化の時代に必要な「経営のあり方と戦略」