ソバニイルヨ(幻冬舎)
喜多川泰
勉強嫌いで周りの友達に合わせることばかり考えている中学生の隼人が、AIロボットのユージーと関わりながら、生きるために大切なことを学んでいく物語です。
始めはユージーに戸惑いながらも徐々に受け入れて、最終的にはなくてはならない存在になっていくという定番ストーリーは想像がつくのですが、ユージーが何をどうやって隼人に伝えていくのか、単なる自己啓発ではなく、内容に深みがあって読み応えがありました。
中学生に対して伝えている内容ですが、大人に対しても十分役に立つ内容でした。
章の変わり目にある母の真由美のメールの内容が素晴らしくて、隼人のことを心配しながらも、あえて口出しせず黙って見守る姿が素敵でした。
また、表紙のユージーのイメージもユーモアがあってかわいらしく感じました。
以下に印象に残った内容を抜粋しました。
・自分が楽しいなら他人が傷ついても平気。嫌いな人間の失敗を喜び、ミスした人間を皆で追い詰める。自分の楽しいは誰かの犠牲の上になりたっている。人を傷つけて平気なのはアイが足りないから。
・時間の使い方は、消費、浪費、投資に分類できる。今の自分の欲求を優先させると、消費と浪費で全て費やしてしまう。
「投資 = 勉強」ではない。同じ勉強するでも「何をするか」ではなく「どうやるか」が大事。何をやるにしても必要最低限を超えようとした時間だけが投資になり、将来の財産になっていく。
・自分の好きを、他人の価値観に潰されるんじゃないぞ。人には好きなことを言わせておけ。そんなの、気にしたら負けだ。みんな好きなことが違う。これをやったら人からどう思われるかってことばかりを気にして自分の人生でやりたいこともやらずに生きていくのはもったいない。
ソバニイルヨ (幻冬舎単行本)