「いのちを呼びさますもの」(稲葉俊郎 著)からのご紹介です。
心臓の専門医である東大病院医師、稲葉俊郎氏が医療やいのちの本質について説明した本です。
本書の中で、病気を考えるか、健康を考えるかという話が印象に残りました。
西洋医学では、体を戦いの場として見ており、病気は敵であり、強制的に排除するという考え方です。
一方、伝統医療では、体や心を調和の場と見ており、本来あるべき調和が崩れたからこそ不調和としての症状や病気が起こると考えます。
西洋医学では「病気を治すこと」が目的で、「病気が治れば元気になる」と考え、部分としての病気に目を向けます。
伝統医療では「健康になること」が目的で、「元気になれば病気は治る」と考え、全体としての元気や調和に目を向けます。
これはどちらが正しいということではなく、向かうべき目標が違うので、場や状況に応じて使い分ける必要があります。
人間の体は調和と不調和の間を行ったり来たりしながら、常に変更しており、全体のバランスをとりながら生きています。
体の声を聴き、病気や痛みとは距離をとりながら、時には正面からぶつかっていき、病気や痛みと共存できる道を探しながら共に生きていく。
そんな考え方を意識しながら日々の治療に臨みたいと思います。
いのちを呼びさますもの —ひとのこころとからだ—