「病は気から」を科学する(講談社)
ジョー・マーチャント (著)、服部 由美 (翻訳)
実体のない非物質的な治療が、実際に物質的な効果を出しているという事実に対して、その信憑性や検証データを分析しながら考察した良書です。
・正直に伝えるプラセボ
・医師の説明や薬を飲むという儀式
・期待と条件付けの同時利用
・社会からの孤立が健康に害を及ぼすこと
などが、いくつかの検証結果を元に説明されていて、非常に興味深かったです。
特に期待と条件付けの同時利用は、薬の量を少なくすることができれば副反応や医療費を減らしつつ、薬の効果も持続できるという素晴らしいものでした。
しかし、薬の量を減らせるという研究に、自分たちの儲けが少なくなる製薬会社は資金を援助しないという現実的な問題もあるため、研究が進まないのが歯がゆいです。
「おわりに」にも書かれていますが、心だけに頼って病気を治せと言っているわけではなく、しかし、医学における心の役割を認めないのも正解とは言えません。
つまり、マインド・ボディに対する先入観を打開し、物理的な介入や薬への依存を強めるよりも健康対策に心を取り入れた方が、実はより科学的で、根拠に基づく治療法だと気付いてもらうことが重要だと思います。
検査、薬、手術といった物理的な手法と、プラセボを上手に利用した代替療法を組み合わせた手法。
その両方を組み合わせた患者のための医療システムが実現したら素晴らしいと思いました。
「病は気から」を科学する