夜しか開かない精神科診療所(河出書房新社)
片上徹也
多くの人を救いたいという想いから、昼も別の病院で働きながら、夜にもアウルクリニックという精神科をやっている著者の片上先生。
ご自身が28歳のときにクモ膜下出血で生死の境を彷徨い、多くの支えとリハビリを経て医師として復帰することができたという経験を持っていることが驚きでした。
そんな片上先生ならではの取り組みが紹介されていて勉強になりました。
初診は1時間、再診でも30分かけて診療を行う
できることに目を向ける
患者さんとは友達のような感覚で接する
カウンセリングルームでの日常のちょっとした悩み相談ができるようにする
など、独自の工夫が満載でした。
特に私が印象に残っているものは以下の言葉です。
そもそも治療とは、患者さん自身が自分でコントロールできることとできないことを分けていく作業。患者さんの話を聞きながら、コントロールできないことには悩まず、コントロールできることから感情を変化させていく。
こうやってしっかり分けて考えていくことが治療の第一歩なのだと思いました。
「精神科」という言葉を出すと、どうしても敷居が高くなってしまいます。
「お悩み相談所」みたいな感じにして、医学的に重症かどうかをまず切り分けるような仕組みにすれば、本書の「これからの挑戦」で書かれているように、気軽に利用できる人が増えるかもしれないと思いました。

夜しか開かない精神科診療所