猫を処方いたします。
石田 祥 (著)
メンタルヘルスと猫を題材にした物語です。
本書では、京都を舞台に
・ブラック企業でパワハラを受ける若手社員
・突然外部から来た女性社員が上司になってイライラする中年男性
・小学四年生の娘との関係に悩む母娘
・しっかり仕事をしないと気がすまないデザイナーの女性
・祇園で芸妓をしている女性
という5つの視点で物語が描かれていますが、共通しているのが猫。
こころの病院を訪れた患者に「猫を処方します。しばらく様子を看ましょう」といって処方されるのは本物の猫なのです。
猫を処方されて戸惑う患者ですが、なんとか猫の世話をしているうちに、問題となっている症状や人間関係が変化していきます。
短編としても楽しめますが、物語の中盤からは「こころの病院」の謎が深まっていき、最後は猫が処方される理由が明らかになっていきます。
猫のちょっとした仕草で癒されたり、猫を愛する飼い主の想いにほっこりする話でした。
実際には薬を処方したり、カウンセリングをするのがメンタルクリニックですが、回復に時間がかかるため、治療の一環として猫を処方するというのは案外いい考えかもしれないと思いました。
猫を処方いたします。 (PHP文芸文庫)