十字架のカルテ(小学館)
知念実希人
著者の知念実希人さんは医師でありながら、小説家でもあります。
「心神喪失者の行為は罰しない、心神耗弱者の行為はその刑を減刑する」
誰もが聞いたことがある刑法三十九条ですが、実際にその鑑定を行っている精神鑑定医を主人公とした医療小説はとても興味深く楽しめました。
精神疾患の鑑定には、専門の施設に入院させて二ヶ月くらい時間をかけて行う「本鑑定」と、30分程度の面接で鑑定を行う「簡易鑑定」があり、殺人などの重大事件以外は簡易鑑定がメインであることも初めて知ったことです。
また、犯罪行為を行った精神疾患患者の触法精神障害者が無罪になったあと、精神科病院に措置入院となり、医療に丸投げとなって司法は関知しないことなども知らなかったので勉強になりました。
本書は、減刑や無罪を勝ち取るために演技をする犯罪者をいかに見破るかを中心としたミステリ短編集となっています。
病歴と状況の矛盾や、雰囲気、言動などから慎重に判断していく展開は読み応えがあり、どの事件も一筋縄ではいかず最後まで引き込まれました。
十字架のカルテ (文春文庫)