認められぬ病

認められぬ病―現代医療への根源的問い(中公文庫)
柳澤 桂子

 

現代医学では原因が分からず、様々な診断や手術をされ、入院・退院を繰り返した著者の闘病記。

「病気の原因が精神的なものであるといわれたことではなく、精神的な原因で病気になるような人には手を貸す必要がないという態度で接せられたこと」

著者が今回の病気の体験でもっともつらかったと訴えていることです。

医学は万能ではないため、病気の診断がつかないこともままあると思います。その場合、当然精神的な疾患も検討されるべきです。しかし、精神的な疾患が原因の場合、それで患者さんの人間的な価値が下がるのかと著者は問いています。

医師からサイコソマティック(心身症)という分かりにくい英語を使われたり、お腹が痛いと訴えても放っておかれたり、病気を治したくて入院しているのに今後の説明もなく気が済めばいつでも退院してよいと言われたりと、明らかにおかしな患者さん扱いされる対応は、悲惨なものでした。

今でこそ、「不定愁訴」という現代医学的に原因が不明であっても患者さんが苦痛や不快感を訴えることも十分考えられるということがだいぶ知られてきましたが、この当時は本当につらかったと思います。

「老いの苦しみを生き抜くのは大切なことでそれこそが自己の尊厳を貫くことである。過度の医療による延命は必要ないが、自然の状態で与えられた命を生き尽くす勇気こそが尊い」

このような体験をした著者が、述べる死生観は説得力がありました。自分が動けなくなって病むことの苦しみは、人のために何かをしてあげることができなくなることで、人のために何かをすることで心を満たされるという考え方はもっともだと思います。

病気に苦しんでいる多くの方々に読んでいただきたい書です。

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