村上智彦 著「医療にたかるな(新潮社)」からのご紹介です。
本書の中で描かれている「ニーズとウォンツ」という話が印象的でした。
一般的に、「住民の要望=ニーズ」と勘違いされているが、住民の意向がすべてニーズではない。
住民のあれくれ、これくれはただのウォンツである。
ニーズとウォンツをきちんと区別していく必要がある。
本当のニーズは、公共の福祉に資する要望であり、(次世代を含む)他の人たちのことも考えた要望であって、決して個人的な要求をかなえたり不安を解消したりすることではない。だから、住民アンケートでニーズを得ようとするのはおかしい。
たとえば、水を必要としている住民に対して、ただ他所から運んできた水を与えてもその場しのぎに過ぎない。
井戸を掘る必要があるが、よそ者が掘っても井戸が枯れたら対処できない。
本当のニーズは、住民たちに自分たちで井戸を掘るやり方を教えることである。
医療の本当のニーズは、住民の命や健康を守ること。
肺を悪くしている人が「タバコを吸いたいから、呼吸器の専門医を用意しろ」と要求しても、「禁煙しなさい」を叱るのがニーズに応えることである。
ウォンツに応えるのがサービスであり、サービス競争に勝ち抜くことがお金儲けにつながるという市場原理主義みたいな考え方が蔓延ってしまった。
ここまでが著者が語っていることなのですが、大いに共感できました。
はり・きゅう・マッサージは医療でありながらも、サービス業の要素も含まれていると思います。
それは、病院と異なり、ほぼ国民皆保険が適用されておらず、多くの治療院で自由診療となっているからです。
(一部の疾患は医師の同意の上で、医療保険の適用対象となります)
「患者さんの満足度をあげる=患者さんのニーズに応える」と考えていましたが、単にウォンツに応えていただけかもしれません。
患者さんの本当のニーズは何か、時間をかけて考えていきたいと思います。