「神田橋條治 医学部講義(創元社)」からのご紹介です。
体には病気を回復させようとする自然治癒力が備わっています。その自然治癒力をいかにサポートしていくかが治療の要点だと神田橋先生はおっしゃっています。
検査成績が悪かったらすぐに薬を出したり、患者が痛いといったら痛み止めを出したりするのでは、何が問題なのか分からなくなりかえって悪くなることがあります。
そのため、緊急かどうかを判断した上で、「様子を見てみましょう」と言える医者が名医だとおっしゃっています。
その例として、和歌山ヒ素カレー事件の話があげられています。
この事件では、担ぎ込まれた病院によって治療法が異なっていたそうです。
ヒ素を飲んだ人は、毒だから生体の自然治癒力により吐きます。
げえっと吐いていると苦しそうにみえるから、吐き止めを出したお医者さんの患者は死にました。
ところが、吐いているということは何か悪いものが身体の中に入ったのだろうと考え、胃洗浄をした病院があり、そこの患者は助かりました。
これが自然治癒力に沿う医療という話です。
神田橋條治 医学部講義