「時代が締め出すこころ」という書籍からの紹介です。
時代が締め出すこころ(日本評論社)
青木省三
本書は、精神科の医師として、また一人の人間として、青木先生の温かい気持ちや、患者さんに立ち直ってほしいという願いが込められた一冊です。
新薬が許可される際には、患者さんの同意のもとに、二重盲検試験が行われます。
これは、実薬(本物)と、プラセボ(本物の薬にように見えて、中に何も入っていない同じ形をした偽薬)のそれぞれを使い、患者さんも医師も実薬か偽薬か知らずに効果を比較することです。
本書によると、抗うつ薬の二重盲検試験ではプラセボが40%くらいのうつ病に有効であることが多いそうです。
プラセボ効果とは、薬に象徴される治療への期待、薬を出す人との出会い、話し合いの持つ力、人に潜在している自然治癒力などからなる、人の持つ力であるとおっしゃっています。
青木先生の治療では、うつ病をはじめとして精神疾患は自然回復する力の強いものと考えています。
そのため、実薬を最小限に、プラセボを最大限にと心がけ、人の持つ自然回復力を最大限に発揮させるように行うのが、精神科治療の原則と考えているそうです。
患者さんとしては
「治療 = 薬を処方されること」
と思っていることも少なくありません。
とはいえ、薬には副作用もあるため、いかに薬を最小限にした上で治療効果を最大限に発揮させるか工夫していく姿勢は素晴らしいと思います。
以前に、別のブログでもプラセボ効果のことに触れました。
神田橋條治_プラセボエフェクト
https://nishigahara4-harikyu.com/blog/placeboeffect
神田橋先生は、プラセボは「治療者と患者の絆」によって発動されるとおっしゃっています。
患者さんが安心感、信頼感、期待感をもてるような関わり方をし、患者さんと共に治療していく姿勢を忘れずにいたいと思います。
時代が締め出すこころ (精神科外来シリーズ)