前回は西洋医学的問診について述べましたが、今回は東洋医学的問診について述べます。
東洋医学では、張景岳が以下の十問歌を提唱しています。
一に寒熱を問い : 暑がり、寒がり、発熱、のぼせ、冷えなど
二に汗を問い : 寝汗、頭や脇の下の汗、手掌や足底の汗など
三に頭身を問い : 頭痛、めまい、からだの重だるさなど
四に便を問い : 大小便の状態、回数、匂い、痛みなど
五に飲食を問い : 食事の量、食欲、嗜好など
六に胸を問い : 胸、腹、脇の状態(上焦(肺、胸)、中焦(脾胃)、下焦(肝腎膀胱))
七に聾(ろう) : 聴力、耳鳴りなど
八に渇を弁ず : 喉の渇き、多飲など
九に脈色で陰陽を弁じ : 旧病(長患い)、既往歴
十に気味より神見を章(つまび)らかにする : 発病の原因
上記のほか、睡眠や月経についても確認します。
東洋医学では、病気を診るのではなく病人を診るという考えのもとで、患者の全身状態を把握して診断・治療を行うと考えます。
そのため、主訴と関係のないことでも、主訴の原因を追究したり、総合的な調整を行う目的で色々なことを質問し、患者さんの体質や状態を総合的に判断し、診断を行います。
西洋医学的問診、東洋医学的問診について、2回に分けておおざっぱに述べましたが、実際にこれらをすべて質問するとかなりの時間を要します。
また、女性の初診患者では、男性の治療師にいきなり月経や便のことを質問されるのも抵抗があるかもしれません。
現実的には、患者さんの症状や状態、雰囲気に併せて必要な情報を聞いていくことになると思います。
1回の治療の中ですべての質問をするのではなく、患者さんの状態の変化に合わせて、何度目かの治療の時に、あとから質問することもあると思います。
私自身は、まず西洋医学的問診を行い、さらに気になる場合には東洋医学的な質問もして診断・治療を行っています。