ラストプレゼント(幻冬舎)
小野宏志 著
病院という「治す医療」から、住み慣れた自宅での「支える医療へ」。
在宅医療を選んだ患者さんやその家族の生き様を著者の実話を元に描いた良書でした。
医療とは、病気を治すことよりも病気や怪我で困っている人を「助けたい」という想いから生まれ、困っている人を「支える」ことは医療の原点に戻れば同じ考え方であるという著者の意見は非常に共感できました。
人には寿命があるので、老衰や末期がんなどの治すことができない病気にどう向き合っていくか。これからはこの「支える医療」を真剣に考える時代がやってくると思います。
自宅で最後を迎えたいと思っていても、家族は死に向き合うことや、いざという時に助けられなかったらという思いにとらわれます。また、患者も家族の負担を考えて病院や施設に行こうとします。
皆、死という重圧とその負担に耐えられないため、つい病院で最後をと考えてしまいます。
でも、患者さんを支える家族もまるごと支えていこうと考える著者のような在宅診療医が増えれば、社会の考え方は変わるかもしれません。
本書の「最後の大宴会」の長山さんのように、お世話になった方々に見守られて、泣いて・笑って死を穏やかなものとしてとらえられるような最後が幸せだと思いました。

ラストプレゼント 家で看取るしあわせ