今回は、昨年の夏の出来事の話をいたします。
2020年8月の暑い日の朝、当院の前の歩道で、手押しカートに座って休んでおられるおばあさまがいらっしゃいました。
最初はちょっと休憩しているのかなと思って様子を見ていたのですが、10分くらい経ってもそのままの状態。
心配になって、
「大丈夫ですか?」
とお声かけしたところ、
「大丈夫です」
とのこと。
念のため、
「何かお手伝いできることはありますか?」
とも聞いてみましたが、
「大丈夫です」
というお返事だったので、干渉しすぎるのも余計なお世話かと思い、そのまま仕事に戻りました。
30分後、やはり同じ場所で座っておられました。
休憩したあとに立ち上がろうとして、立ち上がれない状態のように見えました。
この時期、熱中症の心配もあるので、勇気を出してもう一度
「立ち上がるのが大変だったらお手伝いしましょうか?」
とお声かけしたところ、
「お願いします」
とおっしゃったので、立ち上がりを介助しました。
その状態で、カートを体の前に置き歩き始めようとしたのですが、足が出ない状態。
膝がつらそうで、立位保持も難しそうだったので、もう一度カートに座って頂きました。
「よかったらご家族に連絡して迎えに来てもらいましょうか?」
と確認したら
「一人暮らしで家族はいません」
とのこと。
そのタイミングで、別の男性が来て、
『大丈夫ですか?何かお手伝いしましょうか?』
とおっしゃって下さったので、近くにある交番の警察官を呼んできて頂くようお願いしました。
その間、熱中症になっては大変と思い、お水をお渡しして、ゆっくり飲んでもらいました。
5分くらい経って、警察官がやってきて、名前や住所、年齢、連絡がとれる家族、救急車を呼ぶかどうかなどを確認していました。
警察官を呼びに行って下さった男性も心配そうに見守って下さいました。
その結果、救急車を呼ぶ必要はないとご本人がおっしゃり、警察官がパトカーで送っていくことになりました。
警察官がパトカーを準備している間もお声かけしながら付き添っていたのですが、おばあさまは「迷惑をかけて申し訳ない」とおっしゃっていました。
(お歳を伺ったところ、89歳とのことでした)
さて、おばあさまがパトカーに乗ったあとは、地元の高齢者あんしんセンターに本件を電話で報告しました。
今回のようなケースで報告が必要かどうかわからなかったので、担当の方に確認したところ、
・その方に必要な支援ができているか
・すでに支援ができているとしても、今回の件があったことを考慮して別の支援も検討する
といったことを考える必要があるため、連絡してくれてよかったとのことでした。
「誰かに頼るというのは、迷惑をかけること」
と思っている方にとっては、人の助けを借りることはいけないことと考えているのかもしれません。
でも、困っている時は誰かの力を借りることも大事なことです。
誰かが困っている時には声をかけ、必要な援助ができる社会であってほしいと思いました。