在宅医療のリアル(幻冬舎)
上田 聡 著
在宅医療に真摯に向き合ってきた医師が在宅医療の現実を描いた良書。
無駄な医療は行わない
過剰な検査はしない
薬は最小限にし、無駄な薬は出さない。
人間に備わっている自然治癒力を大事にし、脅かして不安にさせるのではなく安心を届ける
著者の医療方針や考え方は共感できることが多かったです。
自宅で最期を安らかに迎えるためにはどうすべきか。
高齢者の患者が痩せてくると心配して食べさせたい、点滴をしたいと考えてしまうが、痩せてくるというのは食事が不要になってくるということで、無理に食事をさせれば誤嚥して余計苦しい思いをする。
そうするよりも細胞が自然と枯れていくというのが自然の摂理であることが繰り返し述べられていました。
・本来、死は在宅医療の目標とすべきものだが、延命を目標としてしまうと在宅による自然死ができない
・心電図のモニターに意識がとられ、本人のことを思い出しながら偲ぶという大事な時間が奪われる
・終末期の司令塔に在宅医を使うべき。専門の病院に複数通うことで、各科で出された薬で効能が似たものが重複していることも多い
これらは実際に現在の高齢者介護や医療の現場で起こっていることで、これらのことに問題意識をもつことの必要性が十分に理解できました。
高齢者は老衰で亡くなるのが自然と思っていますが、つい何かできることはないかと考えてしまいます。そんな家族の気持ちに寄り添いながらも、自宅で自然死に近い形で最期を迎えさせてあげた実例がいくつも紹介されていて大変参考になりました。

在宅医療のリアル 改訂版