僕のこころを病名で呼ばないで(日本評論社)
青木省三
病気のこと、子どものこと、周囲のかかわり方について、分かりやすい言葉で、丁寧に語りかけてくるような優しさが感じられる良書でした。
病気と健康は二者択一ではなく、グレーゾーンがあって、どちらも併せて持つのが人間。
診断名や病名という枠組みを通してみるだけでなく、その陰に隠れて見えなくなっているその人自身の悩みや苦しみや喜びにきちんと向き合うことが大切だ、という姿勢には非常に共感できました。
誰かに助けてもらったことに感謝しつつも、クライエントが自分自身の力で乗り越えた実感をきちんと残していく「ほどよい支持」という考え方も好きでした。
本書で紹介されていた、イギリスの小児科医ウィニコット氏の「ほどよい母親」という概念が勉強になったので紹介します。
子どもは愛情を注がれることによって成長するが、まったく困らないほどに愛情に満たされたのでは子供の成長を妨げてしまう。
子どもはいくらかの不足や不自由があってこそ成長する。
もちろん愛情が甚だしく不足しては成長を妨げてしまう。
「過不足のない愛情」というのが大事である。
ドナルド・ウィニコット(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%83%E3%83%88#%E3%81%BB%E3%81%A9%E3%82%88%E3%81%84%E6%AF%8D%E8%A6%AA
この「ほどよさ」というのは治療や介護でも、重要な考え方だと思います。
本書では主に子どもや青年のことに対して描かれていますが、大人にも十分に励ましや示唆を得られる内容になっていると思います。
僕のこころを病名で呼ばないで (精神科外来シリーズ2)