コメンテーター
奥田 英朗 著
精神科医・伊良部シリーズの第四弾です。
神経症を診る医者の伊良部と看護師のマユミのコンビが帰ってきました!
相変わらずの名医(迷医?)ぶりは健在でした。
表題作はワイドショーでコロナによる鬱病の対処法を解説する「コメンテーター」として登場します。自由奔放な意見を言う伊良部先生とマユミちゃんのキャラクターは楽しかったし、実際にこんな医者がワイドショーのコメンテーターだったら、おもしろいと思いました。
他にも
・他人のルール違反に怒りを覚えると過呼吸発作を起こす営業マンを描いた「ラジオ体操第2」
・株式市況を見ていないとパニックに陥るデイトレーダーを描いた「うっかり億万長者」
・閉ざされた空間で恐怖を覚える不安障害に苦しむピアニストを描いた「ピアノ・レッスン」
・社交不安障害の大学生の悩みを描いた「パレード」
と、神経症に苦しむ患者さんの話が描かれていますが、薬を処方せず独自の方法で解決していく伊良部先生のやり方は、突飛ですが患者さんの悩みの根本を突いていたと思います。
「ラジオ体操第2」に登場する、過去に伊良部先生に先端恐怖症を解決してもらったやくざの言葉が、まさに伊良部先生の本質を表していました。
「最初に診察を受けたとき思ったことだが、あの先生、人間に対する先入観が一切ないんだな。見た目で判断しねえんだ。だからヤクザのおれを怖がらなかったし、おれにはそれが新鮮だったわけよ」
そんな赤ん坊のように先入観のない伊良部先生は誰とでも打ち解けていき、気付くと先生のペースに巻き込まれて悩んでいた神経症が治ってしまう。
自分が患者だったら「なんて医者だ!」と思うかもしれませんが、本書を読むと医者にかかっていると思わせないのが本当の名医なのかなと思いました。