子のない夫婦とネコ(幻冬舎)
群ようこ
イヌやネコとの楽しい暮らしや切ない別れを描いた短編小説です。
表題作の「子のない夫婦とネコ」だけでなく、イヌと暮らす中年男性や、イヌとネコの両方と暮らす夫婦の話も描かれています。
5つの短編集に共通しているのは、どれも子どもは登場しておらず、イヌやネコを子どものように可愛がる飼い主たちの日常を描いているということ。
本書に出てくる飼い主たちは、極端なイヌ好き、ネコ好きが多かったので、ちょっと大げさに感じましたが、イヌやネコの自由気ままな可愛らしさが存分に描かれていて楽しく読めます。
子どもがいなくても、イヌやネコたちと過ごすことで、愛情や優しさ、人を思いやる気持ちなどは十分に育まれ、幸せに暮らせると思いました。
ただ、イヌやネコを見送るくだりは読んでいて切なかったです。
表題作に出てくるネコおばばの言葉が印象的だったので、以下に抜粋。
・動物は人間よりも生死に関して深く考えて生きているわけではない。あまり人間が悲しみすぎると、亡くなった動物たちは困ってしまうので、暮らしていたときの楽しかったことを、たくさん思い出してあげてほしい
・新しい動物を飼うのは、亡くなった子に申し訳ないという気持ちはあるだろうけれど、毎日、嘆いて悲しんでいるよりも、新しい子を自分と同じようにかわいがってもらった方が、なくなった動物もうれしい
・一度、縁のあった動物は、一生お付き合いが続くみたいだから、ご縁ができた子がいたら、前の子が戻ってきたと思って、またかわいがってあげて
イヌやネコが好きな方におすすめの一冊でした。

子のない夫婦とネコ