地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門(ダイヤモンド社)
木下斉
地方都市に実家がある瀬戸が、母親がやっている実家の商売を閉じる廃業手続きをきっかけに、地域の再生に取り組んでいく様子を小説形式で分かりやすく描いた良書でした。
なぜ新規の事業を補助金に頼るとダメになるのか、役所がやる政策はうまくいかないものが多いのか、その理由がいくつかのケースで何度も説明されていて分かりやすかったです。
・ただ予算を使い切るだけのプランではなく、いかに継続して儲けを生むかが大事
・マーケットの意味は補助金で人を集めるだけではない。出店料を払うことで、売上を出すことに本気になるし、商売が成立するかどうか見極める機会にもなる
・補助金は軽い気持ちで使えるからこそ、事業計画がいい加減になる。そのうち補助金がないと事業が成り立たなくなり、もっと大きい額の補助金を求めるようになる。依存性と耐性があるという意味で麻薬と同じ弊害がある
新たな取り組みを始めるときに最初から完璧を求めるといつまでたっても始められません。
まずは始めてみて問題はその都度修正していくという、「続けながら改善していく」ことを継続することの重要性が、本書を読んでよく分かりました。
特に印象だったのが、瀬戸の近所のおじいさんの言葉。
「人間ってのはな、失敗したときではなく、失敗したあとにどう行動するかで価値が決まるもんじゃ。そして、本当の挑戦ってのは、初めて何かをやるときではなく、失敗してその次に再び立ち上がってするときのことを言うのじゃよ。今の状況からどうやってもう一度立ち上がるか、まわりは見とる。成功した人は、他人より失敗しても諦めないから成功しとるんじゃ。失敗したことのない成功者は誰一人としておらん。」
1955年の時点では、半数の世帯が自営業かそれに関連する仕事をしていましたが、現在は9割の世帯が会社員か公務員になっているようです。
社会の変化と共に働き方が変わり、毎月定期的に給料が振り込まれるという働き方をすると、どうやって稼ぐのかといった生計を立てることのリアリティが低くなるという話は共感できました。
組織に未来を預け、保証してもらうことに慣れてしまうと、将来の生活を自分で保証することがリスクに感じられてなかなか一歩が踏み出せなくなります。
新たな一歩を踏み出してみたい、そんな方におすすめできる一冊でした。
地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門