店は客のためにあり 店員とともに栄え 店主とともに滅びる 倉本長治の商人学
笹井 清範 (著), 柳井 正 (解説)
本来、店は「見世」と書き、「世」の移り変わりを「見」て、お客様の心の変化を感じとるのが「店」を行うものの務め。
「おわりに」に書かれている通り、いかに楽をして儲けるか、客の足元を見て利益を得るかばかりを求める世の中になってしまった中、商人として原点である
「店は客のためにある」
という考え方が丁寧に解説されていました。
たんに商売のやり方や工夫を示すだけでなく、人間として、商人としての「在り方」を示す内容になっており改めて考えることが多かったです。
お客様に対して誠実であること、自らの商いを愛すること、小さくて地味なことを積み重ねていく大切さ、価値の創造といった普遍的なことが、言い回しや例を変えながら繰り返し語られていました。
商売に行き詰ったとき、未曾有の災害に見舞われたとき、何をしたいのか分からなくなったときなどに何度も読み返したい内容でした。
個人的に印象に残った言葉を以下に抜粋。
・お客様は厳しい存在です。お客様は一度あるものを手にしたり、体験したりしたら、それが基準となります。そして次からは、その基準以上のものを求められます。その繰り返しに応えていくのが商売です
・商いとは、心の中で「ありがとう」と言ってくれるお客様という名の友をつくる営みなのです。商いとは、毎日同じことの繰り返しです。毎日同じことを繰り返すからこそ、気づくことがたくさんあり、その気づきの中にこそ、あなたの商いを改善するヒントがあります
・お客様の抱く不満、不快、不便、不信、不安といった”不”の解消に努めましょう。不満を満足に、不快を快適に、不便を便利に、不信を信頼に、不安を安全安心に変えれば、そこに価値が生まれます。本当の利益とは、新たな価値を創造するところから得られます。そのとき私たちはお客様から「ありがとう」と言われ、そのごほうびとして利益が与えられるのです

店は客のためにあり 店員とともに栄え 店主とともに滅びる 倉本長治の商人学