スタンド・バイ・ユー(エイチエス)
岡根芳樹 著
昔、日本で初めて便利屋という事業を起こした、 三人の若者のドラマよりもドラマチックなすべて実話に基づいた物語です。
まるでフィクションのようでしたが、これがノンフィクションなのだからすごいです。
便利屋に必要なものは、困難に立ち向かう勇気、ピンチを切り抜けるアドリブ力、暗闇を照らすユーモア、使命感溢れる志、そして愛情。
それらがたっぷりつまった便利屋タコ坊の仕事と、初期メンバーたちのかけ合いはおもしろかったです。
腕っぷしに自信があり有言実行の涌田、縁の下の力持ちで皆がいやがることも率先してやる忠助、機転が利いてセンスがよい岡野、手先が器用で何でもできる羽嶋。4人で便利屋をやっていたときが一番幸せそうにみえました。
残念だったのは、便利屋も大企業病のような状態になってしまったことです。経済的に豊かになって、有名になって仕事が増えていくことと引き換えに、居心地がよい場所の面積が削られていく。
大きくなくても、有名でなくても、毎日楽しく、少しずつ成長していく、そんな会社にしてほしかったです。
人生とは不思議なもので、大変だったことも、つらかったことも、苦しかったことも、後にあってみればみんな「可笑しかった話」になってしまう。
これもその通りだと思います。一度きりの人生をどう生きるか、大いに考えさせられた一冊でした。

スタンド・バイ・ユー