医療は「生活」に出会えるか(医歯薬出版)
竹内孝仁
高齢化が進み、病気を治せばもとの生活に戻れるという考えは成り立たなくなってきた現代社会。
本書は、老人医療に「生活」という視点を加えることによって、老人の行動を促して主体性を尊重していく取り組みの有用性が示された良書だと思います。
おむつ外しによる褥瘡の防止や、個室ではなく食堂で食事をしてもらったり、少しずつ寝たきりや閉じこもりを減らしていく取り組みが紹介されていて、勉強になりました。
寝たきりではなく少しでも自分で動けるようになることで、多くの選択肢ができ、自分でそれを選ぶことができるようになることで豊かな生活を取り戻す一助になると思います。
また、老人にもできることをやってもらおうということで、掃除用具を工夫して掃除してもらったり、誰かのお世話を手伝ってもらったりしながら、その場に対する「役割」を与えることによることで主体性を回復させていくやり方は有効だと思いました。
本書は1995年に出版されていますが、20年経った今でも多くの老人施設で役に立つのではないかと思います。
医療は「生活」に出会えるか