前回のブログに引き続き、「落語家のもの覚え」という書籍から感じたことを書きます。
落語家のもの覚え(ちくま文庫)
立川談四楼
本書は落語の入門から、前座、二つ目、真打、そして弟子を育てていくところまで、修業時代の思い出話や、苦労話などが語られています。
前回の「声に出せ、音で覚えろ」と似ているのですが、前座時代に言われた
「量をこなし体で覚えろ」
という言葉が印象に残っています。
落語も、とにかく量をこなし反復するのが大事なのだそうです。
これを読んで、私が鍼灸あん摩マッサージ指圧の仕事を始めたばかりの頃を思い出しました。
最初の勤務先で習ったのは「吉田流あん摩」というもので、弦楽器の弦を弾くように筋線維を弾く「線状揉み」という独特の揉み方が特長の手技です。
私は、学生の時から揉捏(じゅうねつ)という揉む手技が苦手だったので、とても苦労しました。
30歳を過ぎてから鍼灸マッサージの専門学校に通い始め、それ以前はシステムエンジニアの仕事を10年やっていたので、手の動きが固く、思ったように動かせなかったのです。
毎日のように、先輩スタッフに練習させて頂きましたし、自分のふくらはぎや腕に何度も練習していました。
当然上手くできないので、受け手も気持ちよくないですし、変なやり方をすると痛いので、受け手になることを拒否されることもありました(涙)
あまりに何度もお願いしていたので、途中からは呆れられて断られたりもしましたが、それでもめげずにお願いし続け、様々なアドバイスを受けました。
・手首が動いていない
・揉みのリズムが悪い
・強さが一定ではなくバラバラ
・背骨に当たっている
・体重がのっておらず手押しになっている
など、色々なことを言われながら練習していた日々を思い出します。
毎日のようにやっていたので、指や手も痛くなり、その都度、冷やしたり温めたりしていました。
でも、繰り返し、繰り返しやっていると、少しずつ分かってくることがあるのです。
・頭の中で1,2,3と数えながらやるとリズムがとりやすい
・まず、しっかり押さえて筋肉を捉えてから揺らす
・手や指だけでなく、体全体でうまく姿勢を保ちながらやった方がいい
体が動くようになってくると、もっとこうした方がいいかもということが出てきて、そこからまた新たな気付きが生まれてきました。
そして、いつも「誰でもいい」とおっしゃっていた患者さんから、
「あなたの施術がすごくよかったから名前教えて」
と言われたときは、逆に「え?」と驚いてしまいました。
徐々に手や指が痛くなることもなくなってきて、私のことを指名して下さる患者さんも増えていきました。
このときの練習で「量をこなし体で覚える」ことをしたからこそ、今につながっているのだと思います。
落語家のもの覚え (ちくま文庫)