ライオンのおやつ(ポプラ社)
小川糸
余命を告げられた一人の女性が瀬戸内海が見える島のホスピスで最後の時をゆったりと過ごす穏やかな物語です。
物語の中には確実に「死」というものが存在していて、それは必ず訪れるものだけれども、ライオンの家というホスピスでは、どこかそれを感じさせないような優しさ、穏やかさ、温かさが満ちていました。
「もっと長生きしたい」という気持ちも正直に認めながら死を受け入れる。
簡単にできることではありませんが、毎日の手の込んだ食事や週1回のおやつ、海や自然を感じながら安心して穏やかに残された時間を過ごすことで、少しずつ死を受け入れる準備をする様子が丁寧に描かれていました。
おやつは、体には必要のないものかもしれないけど、おやつがあることで、人生が豊かになるのは事実。
「おやつは、心の栄養、人生のご褒美だ」
というマドンナの言葉が印象に残りました。
心が温かくなる一冊です。
ライオンのおやつ (ポプラ文庫)