医者の僕が認知症の母と過ごす23年間のこと(自由国民社)
森田 豊 (著)
認知症のお母様と長年向き合ってきた現役医師が、ご自身の経験からの反省と伝えたいことをまとめた一冊です。
最近ちょっと変だけど、病気じゃないし元気がないわけでもないし、嫌がるものを無理に検査を受けさせる必要はないだろう。
医師である森田先生が考えたようなことは、おそらく誰もが考えることだと思いますが、この認識が認知症という病気を進行させてしまうということがよく分かりました。
認知症の検査を受けさせるための言葉として、
「僕のために検査を受けてください」
という言葉は、本当にお母さんのことを心配に思っていて、安心した生活を送ってもらいたいという気持ちが伝わってきました。
ただ、医師である森田先生がお母さんの認知症に気付けなかった後悔が繰り返し書かれているのが、少々くどかったです。
それよりも、介護のプロに聞いた話がとても有用でした。
・一人ひとりの生活歴、これまでどのような人生を送り、何を大事にしてきたか、その方の人生の芯となる部分を把握しておくことが重要で、それを知っていると接し方に大きな違いが出てくる
・あれはダメ、それは違うと否定するのではなく、話題をずらしたり、別の話をしてみたりと、怒らずに対処する
・認知機能が低下すると、これまでやってきたことが中途半端にしかできなくなって、家族が変わりにやることになり、その結果、患者さんの役割がなくなってしまいそれ自体がストレスになり、認知機能が低下するという悪循環になる。そのため、役割を持つことがとても重要
・対人接触による適度な刺激や緊張感は認知機能の活性化につながる
ちなみに、予防と対策の章は、他の書籍と同じように
・早期発見し軽度認知障害(MCI)の段階で対策や治療を行う
・セカンドオピニオンを求める
・人とのつながりや好きなことを見つける
など、一般的なことが書いてあり、目新しいことはなかったです。
認知症患者さんの家族の体験談や認知症にどう気付いていくか、どう接していくかなどを知りたい方にはよい一冊だと思いました。
医者の僕が認知症の母と過ごす23年間のこと