19番目のカルテ 徳重晃の問診【3】(ゼノンコミックス)
富士屋カツヒト 、 川下剛史
なんでも治せるお医者さんを目指して奮闘する医師の物語の第三巻です。
第三巻では、「独りでできることには限界がある」という話が印象的でした。
尿が泡立っていたり、顔や足のむくみから腎臓の病気を心配して受診した女性患者さん。
この患者さんは三か月前にフリーのデザイナーとして独立したばかりで、何でも独りで決めて行動しないといけない思いが強くありました。
その焦りから、腎臓の病気と決めつけて受診した患者さんに、滝野先生は丁寧に寄り添っていきます。
客観的に判断して正しく心配することは難しい。
不安になることもよく分かる。
独りで考えていて視野が狭くなって凝り固まってしまうなら、他人を頼ってしまえばいい。
独りでできることには限界があるから、身体のことだけでも私たちに気軽に相談しちゃいましょう。
また、数年前に妻を亡くし子供も別居していて、自分のことは独りでやってきた高齢の男性患者さん。
下腿の浮腫と高血圧で受診するも、認知症の疑いもあり画像検査をすることに。
その結果、アルツハイマー型認知症だと分かり、もうだめだと嘆き悲しむ患者さん。
そんな患者さんに徳重先生はこう言います。
できない自分を許してあげましょう。
人にはできること、できないことが必ずあります。
お庭の手入れはとても上手にされているって伺っていますよ。
できることは○○さんの役目です。できないことは誰かの助けを借りて、補い合いながら過ごしていけます。
施設に入らなくても介護サービスだって色々あって、ちゃんと活用すればしっかりとした生活もできます。
認知症で一番怖いのはあなた自身が「居場所がない」と感じてしまうことです。
さらに、滝野先生もフォローします。
認知症になってしまった自分を知られるのはいやですよね、その気持ちはよく分かります。
息子さんや娘さんに力を借りられないか私から話しても構いません。
誰かの助けを借りる第一歩として私たちを頼ってみませんか。
こんな風にお医者さんが寄り添ってくれたら、本当に心強く感じます。
医師と患者の対話が大事にされる医療が根付いたらいいなと思いました。
19番目のカルテ 徳重晃の問診 3巻 (ゼノンコミックス)